うさぎの環のなかをくぐる、海岸の、細かい粒状の砂を足のうらからくるぶしまでとりつけた、幼い男の子の、タイヤじみたうごき
レントゲン技師が紙ぺらをよこし、わたしのすがたかたちは黒い図像となってうかびあがる。
幼い、ぜんぶの人のおもいでによって成型されたもの、子供の模型をわたしはおぼえている。くるぶし、ふくらはぎの部位が、とびこえるのにあわせて伸び縮みする、まだ皮フは白くて、焼けただれておらず、光を反射することができる。
骨組のからくりは、あるいは子供は、心が毒とばい菌でやられていないから、複数の能力をもつ。
この男の子は偵察の作業ができる、あるとき、わたしたちは山地を切りひらいた牧場のなかにやってきた、電車は寄せ集められたものなので、設計や、構造のちがう、色さまざまのものがまとめて連結されて、しかし、いまおもいだせるのは白黒の陰だけだ。
わたしと、おなじ名札をつけた生徒はふもとの駅にむかった。
城市から城市のはずれまでは、シートに座る必要がなかった、線路いっぱいに車両が
つづいており、車両の連結部から連結部へ歩けばよかった、わたしたちの行進をかこむように、左右の座席には乗客が腰かけている、車両を移動すれば
するほど、乗客の質、客層が悪くなっていく、輪郭がぼやけて、ノイズの線が入り、色使いが雑で、きたない印刷じみた外見にかわっていった、客のなかにひとまとまりの家族が
ふくまれているようだ、姉と弟、まだいたらないが……
いすとりゲームの要領について、ひととおりの説明をうけた
牧場の跡地にやってくると、わたしたちは幼い子供に指令を出した。
この子だけが、みたまま、きいたまますべてを報告することができる、よいとかわるいとか、そういう薄汚いものはない、なにも考えることがない、ただいわれたことをやるだけ、男の子はどんな
先生の話も、自分の気持ちも信じない、だから偵察結果に影響しない、
ただの巨大望遠鏡にあこがれていて、子供は胸骨のなかにレンズを格納している。
ところが、この子は見る間に迷子になって、さがしてもみつからない。