うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『図解雑学 マクロ経済学』

 1 マクロ経済学とは何だろうか

 マクロにはケインズ学派と新古典学派の二派がある。ケインズ経済学は需要面から分析し、政府の介入を推奨する。新古典派は供給面から分析し、自由市場を肯定する。ケインズ学派は短期の分析に、新古典学派は長期的な経済成長の分析に用いられる。

 GDPは経済の成長スピード(フロー)を測る指標であり、一年に増加された付加価値の量を意味する。名目GDPと実質GDP、物価指数。蓄積された資本や資産を、フローに対してストックという。GDPの式を覚えること。

 インフレにはさまざまな要因がある。需要の増大にともなうものや、コスト(賃料や原材料費)の高騰にともなうものなど。

 一般的物価水準にたいし、株、土地、絵画などの資産価格は大きく上下する(キャピタル・ゲイン、キャピタル・ロス)。期待のみによって資産価格がふくらむのがバブルである。

 2 マクロ経済活動の主役は誰か

 家計の消費行動と消費関数について……消費は所得に依存する。消費増加を所得増加分で割った比率を限界消費性向といい、1からこれをひくと限界貯蓄性向という。消費と所得の比率を平均消費性向、貯蓄と所得の比率を平均貯蓄性向とよぶ。

 マクロ消費関数はC=C0+C1Yであらわせる。Cは消費、C1は限界消費性向(=直線の傾き)、Yは所得、C0は所得がゼロのときもおこなわれる消費をしめす。

 企業の投資行動には二つの説明がある。投資の限界生産と限界費用が一致する最適水準にあわせて投資すべきというのが新古典派の理論である。また、費用は金利(利子率)に左右される。借入金の金利が高ければ、費用がかさむため投資は減少する。
一方ケインズ学派は将来への期待と動物精神を重視する。投資には調整費用がかかるため、金利が低くてもそれほどコストが下がるわけではない。よって市場における期待度にあわせて企業は投資することになる。

 マクロ経済学では、労働者は適切な労働時間を選べるものとする。

 公共部門財政投融資とは、「国の制度・信用を通じて集められる公的資金郵便貯金・簡易保険など)を財源にして、国の政策実現のために行われる公的な融資・出資活動です」。

 物々交換ではなかなか取引が成立しないため、交換手段として貨幣がある。資金余裕者から資金不足者へ金を融通するのが金融である。貨幣はまた富の蓄積手段の機能もある。貨幣はその他資産と異なり利子がないが流動性が高い。

 中央銀行発券銀行、銀行の銀行、政府の銀行の機能がある。中央銀行は通貨量を調整することで金融市場を調和させる(金融政策)。公定歩合政策とは市中金融機関に融資するときの金利を定めること。ほか公開市場操作、法定準備率操作など。法定準備率とは市中金融機関が預金を無利息で中銀に預けなければならない割合である。

 3 GDPはどのように決まるか

 GDPの三面等価……生産=分配=支出

 GDPの求め方……まず財市場だけを考えるのが「45度分析」、そこに金融市場(貨幣市場)も考慮したのが「IS―LM分析」である。

 総需要は消費と投資と政府支出の合計、総供給は資本ストックと労働をあわせた企業の生産総額である。

 ケインズは価格調整メカニズムに異を唱え、数量こそが需要供給を調整すると考えた。市場は一般に超過供給の状態にある。よって需要と供給のバランスは生産量の逓減によって調整される。GDPも総需要に注目すべきというのがケインズ経済学の理論である。

 総需要のAA線と、国民所得=総生産の45度線の交点が均衡GDPである。総需要より生産が多ければ均衡点まで生産を縮小し、生産より総需要が大きければ均衡点まで生産を拡大すればよい。……以上が45度分析。

 金融市場の場合は貨幣の需給バランスが問題となる。貨幣供給は中央銀行によって行われ、値は一定である。貨幣需要は、取引需要(経済活動が活発だと=GDPが増えると、増える)と資産需要(利子率が高いときは株や債権で保有したほうがよい、貨幣には利子がないので)がある。

 貨幣需要は利子率の減少関数(反比例)である。この線と貨幣供給との交点が均衡利子率である。このときはGDPと貨幣供給をを一定としていたが、GDPの上昇を考慮に入れる。均衡利子率はGDPの増加にともなって上昇する。これがLM曲線である。

 投資は利子率の減少関数である。利子率の減増は投資の増減に、よって総需要の増減に、よって均衡GDPの増減につながる。均衡GDPは投資の増加関数である。

 IS曲線は「財の需要と供給が均衡したとき、GDP(均衡GDP)と利子率がどのような値になるか」を示す。

 以上、財市場における利子率とGDPの関係をあらわすIS曲線と、貨幣市場における利子率とGDPの関係をあらわすLM曲線を統合させたのがIS―LM曲線である。これはケインズ経済学の標準的な理論的枠組みである。

 均衡GDPと均衡利子率はIS―LM曲線の交点Eで決まる。ここに労働の要素を入れると、均衡GDPを完全雇用GDPに近づけることが政府の課題である。

 4 財政政策とは何だろうか

 公共事業などにより政府支出が増えると、均衡GDPは支出以上に増える。消費の拡大が所得を増加させ、さらに消費を拡大するからである。政府支出1の増加にともなうGDP増加は1/(1-c)であらわせる。cは限界消費性向。一方減税もGDPを増加させるがこの式はc/(1-c)である。均衡予算のもとでは支出の分だけ増税が必要になるが、「政府支出増と同額だけはGDPを増加させる効果がある」、これを均衡予算乗数の定理とよぶ。

 公債とは政府が民間から資金を借りることだが、ケインズ経済学は財政赤字と公債発行を積極活用せよと主張する。これが景気の刺激になるからである。しかし短期の経済安定のための景気対応政策には問題もある。財政赤字は拡大しやすく、縮小しにくい。また総需要の刺激を量の面からしか考えないため、無駄で大規模な公共事業が蔓延することになる。政府支出の増加によって企業投資が減る、これをクラウディング・アウトという。また公債返済は通常将来の世代に転嫁されるので「世代間の公正を阻害」する。

 返済ばかりで政府の運用がいっぱいになる(硬直化)、さらに公債を公債で償還する借換え債もうまれる。財政は放漫化し最終的には財政破綻に陥る。

 石油危機によってスタグフレーションがおこったが、これにより「供給(生産)は需要に見合うだけ行われる、つまり需要に応じていくらでも供給可能であると考えてきた」ケインズ理論は現実性を失った。そこで新古典派の流れを汲む、供給面に注目したサプライ・サイド経済学が注目された。これはクルーグマンが常に批判していたものだ。

 5 金融政策とは何だろうか

 基礎的な暗記事項が多く出てくる。

 金融機関には銀行や保険会社などの「間接金融」と証券業者の「直接金融」との二種類がある。銀行などは家計に預金証書や保険証書などの間接証券をわたすため、銀行が貸した金が戻らなくとも家計には金利が支払われる。しかし証券業者は貸し手と借り手を仲介するだけである。

 株式にくらべ社債はローリスク・ローリターンであり、日本では好まれてきた。株主が企業の所有者であるのに対し、債権者は企業にお金を貸した人である。日本企業には主要債権者たる銀行(メインバンク)がつき、企業は銀行の支援・監視のもとに成長してきた。

 金融資産の分類……機能(決済勘定資産=現金、普通預金/投資勘定資産=その他すべて)、収益予見性(安全資産と危険資産)、発生形態(間接証券と本源的証券)、取引形態(相対取引型資産と市場取引型資産)。

 金融政策には公定歩合政策などの価格政策と、法定準備率操作、公開市場操作(売りオペ買いオペ)などの数量政策がある。しかし不況期には、金融政策は効果がない。

 日本の金融システム……低金利政策、護送船団方式、業務の分離、こうした保護経済から、金融ビッグバンへ(金融の民主化)。

 不良債権と金融不安、預金保険機構によるペイオフ、各種金融システム維持のための法整備、不良債権と景気の関係。

 デフレは物価下落により債務、賃金が実質重くなり、また物価の低下をみこんで家計の消費も鈍ってしまう。そこで着目されたのがインフレターゲット論である。

 6 日本経済はどこへ行くのか

 これまでの記録では、所得格差が小さく、教育水準の高い国ほど経済成長率が高かった(日本含むアジア新興諸国)。他経済の話題。

 7 国際経済はどうなっているか

 国際収支表は経常収支と資本収支のカテゴリーに分けられる。また政府や中央銀行の保有する外貨準備も計上される。経常収支には貿易収支やサービス収支(旅行、通信、情報)がある。資本収支には投資収支とその他資本収支がある。日本は貿易収支の黒字を対外資産に投資している。

 為替レートとは「二つの異なる通貨のあいだの交換比率」である。これには固定相場と変動相場がある。八〇年代前半まで円安ドル高がつづいた(円の価値が低いこと)が、現在長期的には円高傾向がつづいている……「これは日本経済が国際的に大きな地位を占め、日本が国際社会において経済大国になっていくプロセスに対応しています」。

 為替レートはどのように決まるか……為替市場も需給に基づいてレートが決まる。要因のひとつは金利である。アメリカの金利がより高ければドルで資産運用したほうが有利になる。為替レートの変動は予想外の情報によってのみ動く。購買力平価

 円高では輸入が有利になり、輸出で不利になる。また外国に生産拠点を移すため空洞化現象がおこり、国内雇用が減少する。しかし長期的には経済成長につながる。
変動レート制開放経済では財政政策の効果はゼロになる。

 8 マクロ経済の課題は何か

 経済の効率性と公平性はトレード・オフ(どちらかしかとれない)の関係にある。世界段格差の解消は、ケインズ学派と新古典学派で主張が異なる。

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 経済学で「限界」という用語は「追加部分に関しての」という意味を示す。ミクロ同様グラフをしっかりと読みとること。

 

図解雑学 マクロ経済学 (図解雑学シリーズ)

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