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『図解雑学 ミクロ経済学』

 1 ミクロ経済学とは何か

 資源の希少性の観点から経済学を定義すると、効率のよい資源配分と公平な所得分配という二つのテーマが導かれる。

 経済全体を巨視的に見るのがケインズからはじまるマクロ経済学、経済を構成する家計や企業、市場に注目するのが新古典派経済学の伝統につらなるミクロ経済学である。

 家計、企業、政府が関連し、生産物市場と生産要素市場が形成される。生産要素とは家計が提供する労働や資本、土地のことを指し、生産物は企業が家計に売る商品などをさす。

 ミクロ経済学における分析……最適化(最大値・最小値)と均衡(市場価格の決定、連立方程式)。

 2 需要と供給

 売り手と買い手が財・サービスを取引する場を市場という。個々の買い手・売り手が小規模である完全競争市場では、彼らはプライス・テイカー(価格受容者)となる。ほかにインフラなどの独占市場、自動車など寡占市場がある。独占的競争とはなにか?

 市場の価格調整メカニズム(invisible hand)がはたらくことで均衡価格、均衡取引量に落ち着き、市場均衡にいたる。必需品は価格弾力性が低く、奢侈品はその逆である。

 3 完全競争市場と効率性

 消費者余剰と生産者余剰をあわせた総余剰は、競争均衡のとき最大となる。政府の租税収入はこれをさまたげてしまう。これ以上はお互いの余剰を増やせないときをパレート最適という。

 この「競争均衡において、市場全体の経済余剰が最大になり、パレート最適な資源配分が実現する」という考えを「厚生経済学の基本定理」とよぶ。この定理の祖はアダム・スミスである。しかしあくまでも効率性からの観点から最適といえるので、公平な分配の問題はまた別にある。

 4 市場の失敗:外部性と公共財

 

 市場の力だけでは効率的資源配分ができないことを市場の失敗という。公害など、「市場の取引を経由せずに直接、他の人に影響を与える」ことを外部性、マイナスの場合を外部不経済という。逆は外部経済である。解決には不経済の内部化、統合や交渉、政府による外部不経済のコスト化などがある。

 公共財とは、非競合性を有しかつ非排除性を有するものである。たとえば国防、司法、警察、公園、道路、街頭など。環境資源は誰でも利用できるが競合的なので共有資源という。

 公共財フリーライダーへの誘因を働かせるため、受益者負担の原則(各人がその受ける利益に応じて、費用を負担すること)が成り立たなくなる。民間企業にとって公共財を供給するのが難しいのはこのためである(市場に任せられない)。ただ乗り誘因により各人の選好は過少表明される。

 共有地の悲劇ゲーム理論でいえば、各人が最大利益を求めることで全員が最小利益しか得られない例だろう。

 5 家計の消費行動

 家計には所得獲得と消費のふたつの機能がある。消費においては効用の最大化をめざすための消費選択をおこなう。予算線と無差別曲線の動きを把握すること……無差別曲線は右下がり、右上ほど効用が高く、下に凸型である。なぜ凸型かというと「家計は相対的に希少な財を高く価値付ける」からである。

 予算線と無差別曲線の接する点を消費の最適点という。限界代替率と価格比率が一致するとき効用は最大になる。要勉強。

 所得が増えるにつれて需要も増える財を正常財という。生活水準の向上につれて、必需品の占める割合が減る、このことをエンゲルの法則という。所得が増えると逆に需要の減るもの(ラジカセ、扇風機、銭湯など)を下級財という。

 財の価格が下がることによる全体の効果は、代替効果と所得効果の合計によってもとめられる。代替効果とは相対価格の変化による影響で、所得効果とは実質所得の変化による影響である。

 

 国内旅行のように、料金が下がると需要も下がるものは、所得効果がマイナスになる。代替効果、つまり相対価格はプラス(グラフ右方向)に行くが、所得効果、つまり実質所得の変化はマイナス(グラフ左に行く)。なぜなら下級財は所得が上がると需要が減るからである。これをギッフェン財という。ほかヴェブレン効果やデモンストレーション効果など、需要法則の妥当しないケースがある。商品同士の交差効果には粗代替財、粗補完財、独立財などがある。

 6 企業行動のしくみ

 投入と産出の関係を生産関数、生産量と最小費用の関係を費用関数であらわす。生産関数はQ=F(L,K)であらわせる。労働と生産量との関係はS字型の総生産物曲線であらわす。

 等産出量曲線は右下がり、原点にたいして凸型である。この曲線を技術的限界代替率とよぶが意味は「労働が増えたとき、生産量を一定に保つために、資本がどれだけ減らせるか」である。技術的限界代替率が逓減するとき曲線は凸型になる。労働投入を増やすにつれやがて労働余剰になり効率は減少する。

 等費用線は一定の費用のもとで投入できる労働と資本の関係をあらわす右下がり直線である。生産要素の最適投入のとき、等産出量曲線と等費用線が接し、比率が一定になる。

 固定費用(工場の維持費等)と可変費用(賃金など)をたしたのが総費用である。

 7 不完全競争

 不完全競争市場では企業はプライス・メイカーとなる。独占市場での最適価格は限界収入=限界費用の点である。ここでは生産者が有利になる。

 エネルギーなど自然独占は政府が「公益企業」と認めることが多い。この場合限界費用は平均費用を下回る。限界費用=限界収入となる利潤最大化を目指すと、過少生産になってしまうので、価格を限界費用と一致するように規制される(限界費用価格形成)。しかし、これでは平均費用が規制価格を上回るので、政府は補助金を出さねばならない。企業が独立採算を重視する場合は、平均費用と価格が等しくなるよう設定する(平均費用価格形成)。

 8 生産要素の価格と所得分配

 労働投入を1単位増やすことによる収入の増加を「労働の限界生産物価値」といい、これは労働の限界生産物(労働1単位投入あたりの生産量の増加)+生産物の価格でもとめられる。労働の限界生産物価値をあらわす曲線が、企業の労働需要曲線である。労働需要曲線と賃金率が一致するように、企業は労働を需要する。

 家計の労働供給曲線……高賃金になり、代替効果(働かなかったときの損)が所得効果をうわまわると供給量は増える。しかし所得効果が代替効果よりも高まると供給は減る。賃金が上がるにつれ、労働量は、はじめ右上がり、やがて右下がりになる。

 供給が常に一定なもの(土地、資本財、天然資源)がもつ地代の概念は、経済レントという考えに拡張される。これは収入から機会費用(もし他の用途に利用したならば得られたであろう最大の収入)を差し引いた値のことである。これは生産要素の余剰を意味する。

 労働、土地、資本などの生産要素が提供するサービスをフロー(一定期間内に発生する量のこと)という。一方、土地や株式・債券などをストック(ある時点に存在する量)という。ストックの資産価格を地価で説明すると、将来の地代や土地売却価格が高くなると予想されるほど高くなり、利子率が低いほど高くなる。

 9 国際貿易のしくみ

 ある財とある財の交換比率が国際間で違う場合、相互に交換することで利益を得られる。これが貿易の発生要因である。比較優位と比較劣位は、他国と比較して割安か割高かを意味する。比較優位の財を輸出し、比較劣位の財を輸入する。

 割安つまり比較優位の財をさらに生産し輸出しようという意志がはたらくので、産業調整がおこり、経済構造が変化する。生産特化、国際分業。

 輸出は生産者に利があり、輸入は消費者に利がある。しかし輸入により国内生産者の余剰は減るので、保護貿易が求められる。その場合関税よりも国内の補助金のほうが効率的である。

 10 ゲームとはなにか

 11 不完全情報

 利得をめぐりプレーヤー同士が対立する状況のこと。

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 理解不足事項……限界代替率、価格比率、所得効果と代替効果。

 

ミクロ経済学 (図解雑学)

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