うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

僧侶型設備(2012)

 となりの、硫黄でできたとびらの奥は、ふだんは
 入ることができない、わたしの弟の屋敷になっている
 弟は大きな眼球をつかって、何重にもたばねられた、紫と金の
 絹のなめらかさを操作する、するとひのきの、パチパチと音をたてて燃える
 音のかたまり、かけらが、盆の上にのせられ、高熱の青銅を編んだ
 固いひも飾りが、座敷のある一面にくくりつけられ
 わたしの弟は首を衣裳だんすに収納するために
 かえってくる、ぜんぶ、木片を組み合わせた、人の顔そっくりの、未処理のままの部位
 という印象をいだいた
 じゃばら、柿がおしつぶされたもの、かれは
 こけの内部に、透明度の高い水滴、人がふれると筋肉が砂にかわるもの
 これを伝統的な水がめに加える
 わたしは、数え切れないくらい
 弟の院のとびらからとびらへ、発火した障子をなぎ倒して、作務衣すがたの
 いのししとかえるを目撃した
 その人たちは、視界のはしに入ってくるので、夜おそく
 または夢の中まで消えずにとどまることが
 あった、両手をおなかの前あたりに出して、ひもと、祭りごとのための
 鈴、油をぬりこめた木製の社を
 大切そうに保持している、弟の右と左には、いくつかの大臣と
 古い世代の兵器、または、長槍や、半自動の投石器を所有する僧兵たちが、笑いながら
 待機についている
 わたしは弟の名が読み上げられるのをきく
 すると、巨大な気流の渦みたいな、羽織の回転、あたりをすっぽりとおおう風景を連想する