うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

骨と官邸が(2012)

 昼、眼がひらかなくなった、わたしたちは
 眼に供給する血液を交換した
 小さな、手のひらにおさまるくらいの霧吹きの
 なかに自分の血を入れると、電子音が鳴り
 つづいて、明るい声で、登録されたことを伝えられた
 わたし、わたしの右と左に、横1列に並んだたくさんの同じような
 人びとは、両手首に導体、つかいやすさを考えて
 手首ベルトのつくりにしたものを装着している
 金属の雲がおりてくると、太陽がかくれた、その前から
 幹線道路は影になり、でこぼこの
 地形にたてられた建造物が、輪郭だけをのこして黒く
 変色するという
 印象を受けた
 坂道がじゃばら状につながっているところでは、自動車、人が
 傾斜に耐えられず、よく転げ落ちた
 わたしのいる列は、茶色い土のほかに何もない、たまに
 変電所の跡地と、以前はでんしんばしらだった、はしら、
 そういうゴミがある
 前進すると、ふと、くつの裏が、土中に埋まった時間を発見して
 とても長い時間待たなければいけない
 サボテンと、色のある植物があらわれる
 手のひらを魚群のようにゆらゆらさせて、官邸をたてるための
 粘土を固めていくように指令を受けた
 きょうの作業がそれだ