うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『新自由主義』デヴィッド・ハーヴェイ

 現代はBrief history of neoliberalism。
 新自由主義とは、「強力な私的所有権、自由市場、自由貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とが無制約に発揮されることによって人類の富と福利が最も増大する、と主張する政治経済的実践の理論である」。

 それまでには少数派であったこの理論は、七十年代末から八十年代初頭にかけての、鄧小平、サッチャーレーガンらの政策によって台頭し、いまや支配的となった。

 新自由主義は、一般に「グローバリゼーション」とよばれる現象をひきおこした。すなわち、金融の民主化、情報の民主化、経済エリートの復活に伴う格差の拡大などである。経営者は多国籍にわたる経営拡大を成功させ、さまざまな国家において経済権力を行使できるようになった。これを著者は「階級編成」と呼んでいる。

 ポランニーは、自由を拡大する新自由主義の基盤は、最終的に武力と権力になるだろうと言ったが、現在のアメリカの状況を見るにこれは的を射ている、と著者は評する。

 新自由主義を左派(青木書店と縁のある学者で、やはりマルクス主義用語が多い)の視点から眺めると、企業・ビジネスエリート対労働者、という視点になるようだ。

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 新自由主義国家は、肯定的自由と同時に悪い自由(犯罪や道徳の欠如)をも解放する。よって、この自由に方向性をつけるために、一般にナショナリズムなどが用いられる。ヨーロッパに広まる移民排斥ファシズムや、ネオコンなどはまさにその現象である。

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 英米やIMFの要請により新自由主義国家化した南米諸国やアジア諸国は、のきなみ破産に追い込まれた。メキシコやアルゼンチンの破産、アジア通貨危機などは、新自由主義化が原因だといえる。

 とはいえ、「ウォールストリート・IMF財務省」が全能を振るって諸国を新自由主義化したというわけではない。大抵は国の経営者や、上層階級の要請によって市場の開放が実施されてきた。

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 中国の新自由主義化は鄧小平によっておこなわれた。鄧小平はまず政治経済の権限を、中央の監視を伴ってではあるが、徐々に地方に委譲し始めた。そうすれば経済的実験を一地方の事として収めることができるからだ。香港の華僑コネクションを用いることのできる広東省はじめとした南部から、市場の開放がはじめられ、やがて外資導入による輸出主導の経済が中国を発展に導くことがわかった。

 

 一方で、都市と農村の格差は世界最大にもなっており、中国最大の問題として解決が待たれる。

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 新自由主義化の特徴を述べる結部は、いわゆるグローバリゼーションの説明とほぼ同じ内容である。新自由主義化とは、あらゆるものの私有化、金融化、商品化、そして環境の悪化のことをいう。

 不完全な新自由主義、閉鎖性と福祉政策をある程度保った日本やスウェーデンといった国が、経済成長を維持したこと、アジア通貨危機などの際に難を逃れたことから、新自由主義見直しの糸口を見出すべきだと著者は考えているようだ。

 

新自由主義―その歴史的展開と現在

新自由主義―その歴史的展開と現在