うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

鉄塔の上でそんなふうに……(2011)

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鉄塔の上でそんなふうに大声をあげても なにも
聴こえない 赤と白の縞をなんども塗りつづける男と
それを下の荒地から 見上げる男
檻と格子でできた家に住んでいる その子はかわいいので
頭がおかしくなった ぼそぼそと
だれも聞いていない話を 何度も繰り返すが
耳を近づけると ひとつも同じものはないので、わたしは
1文字も漏らさずに
電子がいきおいよく飛ぶと 塔の上で旗がひるがえった
わたしの横隔膜をかたどった 抽象的な地図
弟の、細いからだ 海が風車を動かす
草のまばらな 黒い地上の遠くまで鳴りひびく
ラッパの音 無数の丘のように積みかさなり
油まみれの筐体になった子供の友だち
わたしたちは大声をあげてはいけない、それは
屍体を起こすことだ どんなに洗ってもとれない
死んだ犬の匂い 弟のすりよせる緑色の鼻骨と外骨格
ことばが煙草の煙を吸い込むように、
古い草花の味を 染み渡らせて わたしは飲みこんだ