防災心理学にフール・プルーフとフェイル・プルーフというものがある。バカでも大丈夫な設計、失敗しても大丈夫な設計のことをいう。人間は異常事態に直面すると虚脱状態、失神、無感動になる。そうでなくとも幼児に退行し、あたまの回転もにぶくなる。
地震や火災などの発生時には、冷静になるためのきっかけが重宝する。しかし、それを期待するのも難しいので、前記のバカ向け対策が必要になる。パニックになるとバカになる、ということを認めて、その上で対策を講じることがもとめられるのだ。
地震については、外にいて窓ガラスやコンクリの嵐を浴びるよりトイレや風呂にいたほうがよい。火元は消してから外に避難すること。
群集がパニックに陥ると、一人のときでは想像できぬ混乱が発生する。まず人が多いということはそれだけ空間が狭まるということである。火事のとき、多くの人間が出口にむかって猪突猛進する。この状態では冷静にその場にとどまるのはむずかしい。
ひとは非常時には自分の知っているところに戻りたがる。普段から階段や非常通路を使うことで、群集に巻き込まれることなく脱出経路を確保できる。
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パニックから自由になるには……災害についての正確な予備知識をもち、対応を考えておく。当面の不安だけでなく一般的根源的不安も取り除いておく。
「分割して統治せよ」とあるように、群集を避けて行動する。群衆行動のきっかけを阻止する。理由なく後方に退散した兵士は射殺し、発狂寸前の兵士は気絶させる。
群集のなかの競争動因を軽減し、我先にと猪突するのを防ぐ。群集のなかに連帯感をつくる。自らの役割を意識し、指導者を得る。身体的疲労を避ける。被災者間の公平に配慮する。
正確でわかりやすい情報を提供する。
「不意の災害に不断の備え」の心がけが大切である。
パニックの心理―群集の恐怖と狂気 (講談社現代新書 364)
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