うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

あとずさりの旅(2011)

緑色の髪と、指のふちをなぞると 太陽の裏側から
水兵の声が聴こえるので 発光する
森のように密集した 無人のとりでについて わたしの
妹は 手をかざしながら話をしてくれた とりでのむこうに
静かな回廊が浮いて、空中線がいくつも伸びていた
兄と妹は 怒り狂って書類にひたいと鼻骨を
おしつけて、手続きをすませようとしたら
塑像の腹のなかに吸いこまれる
白い皮ふと、同じような色の内側の筋肉と、やわらかい
血管が あったかいのでなでてるうちに笑顔になった
小さい、白い子供の手をつないで、墓から墓へ
三段跳びのおもいでは 今 長くなったので
空中線と 周波数の中央で、はりがねの
かたまりみたいに育った、おい、眼球よ、ひらけ
かぎをあけるとその中にある もう脳みその構成のひとつひとつ
におさまった 子供のともだちの 正面と
横のはだかのすがた
夜明け前、雲が かさぶたのようにぼろぼろと
はがれ落ちて わたしは火を消すと、青い畑と、まぶしい
緑の山をまっすぐ
つらぬく羨道に出た 妹がちょうどひとつの
緯度をとびこえた先を跳んでいる 大人びた
信号音に似た衣裳を まとっているようだ