うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『地球の長い午後』オールディス

 自転が停止し、植物が支配者となった地球で生きる人間を主役にした小説。

 SFと分類されているが、機械類が出てくるわけではなく、物語をつくるのはグロテスクに進化した巨大植物、動物的な挙動をもつ不気味な植物、つる、茎、食肉植物、そして動物のなかで生き残ったアリ、ハチ、人間である。数少ない人間たちは植物の世界のなかで生活する。雰囲気は明るいが、出てくる光景はおぞましい。人間は宇宙を航行する巨大なクモ型植物に乗って月にいこうと試みる。

 重要な役割をはたすのはアミガサダケとよばれる茶色の、気色悪いキノコである。アミガサダケは人などの頭部に寄生し、自らのもつ思考能力とことばによって宿主を支配する。主役のグレンは途中このアミガサダケに寄生され、はじめはキノコの持つ知性に導かれて未知の領域を進み、困難や危機を解決していくが、徐々にキノコ自身の野心や欲望と衝突することが多くなり、ついにアミガサダケにからだの操縦も乗っ取られてしまう。

 仲間たちの尽力によってアミガサダケをもぎとったグレンは、物語の最後、アミガサダケとともに宇宙に進むことを拒否する。彼の旧友の人間たちはキノコの知性を信頼しているが、グレンはキノコがやがて自分の思考を離れからだを支配することを知っている。彼とその妻、子供は、安住の地をもとめてさまようことを拒否し、これまで通り森のなかで暮らすことを選ぶ。

 本書の歴史にあっては、アミガサダケは、類人猿の脳内に寄生して人類の発展に寄与した生物である。おそらくキノコは脳みそ、知性を意味していて、グレン一家がこれに無条件に従いついていくことを拒否したことは、なんらかの主張を含んでいるとおもわれる。

 

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)