うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

上から下の運動(2011)

 もうひとつの人体が、軽い、
 トランプめくりの
 音をたてて縄からほどかれる
 なめらかに加工されず、とげと泡を残したまま
 黒くぬりたくられた係留柱を
 するりとくぐり抜けて、わたしは
 人体の予備をとりもどした

 

 においにとてもよく反応する、酸化した血のかたまり
 と、皮フと、まだ薄い層をなす、肉のかけらを
 つけた切断器械、
 小屋のとびらをあけた瞬間に、ヤモリの
 なめらかな移動、
 日の差すときをおもいだす。
 脳みそは、知らなかったことをまだおぼえていて、
 蜂の図像をおもしろおかしく
 矩形のなかにおしこめたカードを
 裏返すと、もうひとつの
 わたしの人体がやはり出現した、わたしには
 というか、わたしと弟には、
 選ぶことができる
 大事なことは、いつも2つか3つにしぼれる
 ものだと感じた

 

 コンクリートの継ぎ目にしみだした
 水をうけとめる、まだ登録されていない
 喉と歯ぐき
 やさしい関節のうごきと、おもわず
 警戒をといてしまうような
 幸せな笑顔をした、姉に似た
 黒い戦闘服の人間たちが
 金属音と、電流の
 宙を舞う気配を運んでくる
 拷問のときと、脳みそがうごかなくなって
 小動物のしかばねの横にそえられる
 ときだけが、わたしたちの
 兄弟にとって知りたい
 もし、なにもないなら、まだ
 手札は残されている
 という感じがした