うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『In Cold Blood』Truman Capote

 カンザス州の田舎町でおこった強盗殺人事件について書かれた本。

 殺されたクラッター一家は、豊かな農家を営んでおり、父ハーバートは地元の名士だった。娘は美人で成績がよく、ボーイフレンドがいた。弟は父と同じくらい体つきがよい。ハーバートの妻だけは神経症だったが、それは大きな問題ではなかった。この幸福な一家は二人の強盗殺人犯に殺された。

 

 ディックは運動神経抜群だったが家が貧しく大学にいけなかった。職を転々とするうちに結婚し、子供を生むが、生活費や賭博が原因で借金まみれになる。彼は自分の持っていないものを持つすべての人間を憎んだ。なぜこのようなみじめな生活をしなければならないのか、と呪詛を吐いていた。

 ディックの相棒であるスミスはインディアンで、極貧の家庭で生まれた。教育を受けたかったが受けられなかった。兄弟姉妹がいたが、姉一人をのぞいて皆自殺した。彼は感受性が強く、風景を見てよく泣いていたと親族が証言している。スミスは少年のころから不良になり犯罪に手を染めるようになった。

 スミスはクラッター家の金庫を奪って、メキシコに行き沈没船から宝を発掘しようと提案した。ディックはこれを信じ、犯行にのぞんだ。ところがクラッター氏は常に小切手で仕事をしていたので金庫がなかった。二人は子供の財布や小銭をかきあつめて50ドルを手に入れ、四人を縛りつけて射殺した。目撃者をつくってはいけない、と彼らは考えていた。ディックは意外にも臆病で、一人たりともしとめることができなかった。実際に殺害したのはすべてスミスだった。彼は小男だが力があり、またロープの扱いに長けていた。

 カンザス州捜査局のデューイを中心に、捜査を開始する。手がかりはほとんどなく、ディックと刑務所で一緒だった男の通報により無事逮捕にこぎつける。

 非の打ち所のない幸福な一家より、負け犬の二人組のほうが人をひきつける力がある。彼らには行動力がある。また、最後までユーモアを持ち続けている。裁判員が死刑を選んだとき、スミスは「ここには臆病者はいないようだ」と言い放つ。

 本の終盤、死刑囚として同じ建物に収監された者を紹介している。

 アンドリュー・リーは生物学を専攻する大学生だが、ある日自分の家族を皆殺しにした。彼は自分を含めて世界を無価値と考えており、古典的な詩をよく読んだ。一度も恋愛をしたことがなく、童貞だった。ディックは彼のことを気に入り、「人間図書館」と呼んだ。

 別の二人組みは州を越えて次々と殺人を犯した。彼らは軍隊の営倉で出会い、世界が糞だということで意見が一致しこのような行動をおこした。

 本書が題材にしたような事件は常におこっていて、すぐに忘れられる。忘れないのは近隣の者だけである。

 

In Cold Blood: A True Account of a Multiple Murder and its Consequences (Penguin Modern Classics)

In Cold Blood: A True Account of a Multiple Murder and its Consequences (Penguin Modern Classics)