うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『宇宙のダークエネルギー』土居守 松原隆彦

 ダークエネルギーの概要と、ダークエネルギー観測方法について説明する本。宇宙論では、理論と同じくらい、観測も重要であり、この両者が揃ってはじめて実証科学として成立する。

 ダークエネルギーは「宇宙を加速膨張させる原因となるもの」であり、宇宙のエネルギー成分の73パーセントを占める正体不明の存在である。20世紀末に発見されたダークエネルギーは、「もはや既存の物理学で理解できる範囲を逸脱している存在」である。

 ダークマターはビッグバン理論成立にともなって発見された物質であり、いまだに正体は解明されていない。通常の元素のように光を出したり吸収したりせず、重力のはたらきによってまわりにある物質を引き寄せる。銀河が観測される場所にかたよって存在する。

 アインシュタイン一般相対性理論において「宇宙項」を付け加えたが、のちに訂正した。ダークエネルギーはこの宇宙項に該当する存在であり、「空間に薄く広がったエネルギー」である。

 未知のエネルギーを説明する仮説は複数出されているが、どれも完全ではない。

 真空エネルギー説……真空エネルギーだとすると、予言されるエネルギーの絶対値が大きすぎる。このエネルギーを打ち消し、実体に近づけるために「超対称性」のメカニズムが用いられる。

 超対称性の仮説とは、「フェルミ粒子とボース粒子の種類は必ず対になっている」というものです。しかしこの対称性粒子は発見されておらず、やぶれている。

 ――素粒子の理論では、「対称性の破れ」という考え方が有用であることが知られています。実際、現代の標準素粒子モデルにおいては、ある種の対称性が自発的に破れる「自発的対称性の破れ」というメカニズムが本質的な役割を果たしています。

 超対称性が、自発的対称性の破れなどのメカニズムで観測できない可能性がある。それを含めても、観測される量よりも理論値がはるかに高く、不自然さが残る。

 スカラー場説……「場」とは空間の性質が変化している状態をあらわす言葉である。磁場や重力場はその例である。場は空間を変化させるためエネルギーを持つ。

 ――スカラー場とは、空間の場所ごとに大きさだけを持つような場です……場所ごとに決まる場の大きさを、その場所のスカラー場の値、といいます。

 スカラー場をダークエネルギーの正体だとする説も、理論値と実測値のずれに直面した。

 重力理論修正説……一般相対性理論の修正を考える説もある。アイデアは出されているが、「一般相対性理論は非常に自然な理論なので、修正を施すとやはり人為的なものになってしまう」。

 修正案のなかに高次元理論というものがある。高次元理論では、宇宙の本来の次元は5次元以上である。「カルツァ・クライン理論」では、わたしたちに感知できる4次元時空を除いた余剰次元が、小さな円状に丸まっていると仮定する。髪の毛の表面は2次元だが、全体としては1次元の線にみえるのと同じである。こうした現象を「次元のコンパクト化」という。

 ――このようにコンパクト化を伴わない高次元モデルをうまく構成すると、余剰次元の影響がわたしたちの住んでいる4次元宇宙の重力に影響し、実効的にダークエネルギーと同じような働きをして宇宙の膨張を加速させられる可能性があります。

 高次元理論はまだモデルにすぎず、実証性はない。

 非一様宇宙説……標準的な宇宙モデルでは、宇宙は大きなスケールで見るとどこまでも一様である。非一様宇宙モデルでは、「わたしたちの住んでいる銀河系が、宇宙の中でも特に物質の密度の薄い場所に存在していると仮定する」。このため、わたしたちのまわりでだけ加速が膨張しているようにみえる。この説も説得力を持っていない。

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 天体望遠鏡は、大きな口径の鏡やレンズを使ってより多くの光を集めて、像を拡大する。

 現在つかわれている検出器には、CCD(Charge Coupled Device)とよばれる素子を使った電子の目が採用されている。ビデオカメラや携帯電話カメラにも同じく利用されている。

 「……大型の望遠鏡と冷却式のCCDカメラ、これが、現在の天文学者ダークエネルギー研究を行う際に使う強力な測定装置です」。

 銀河分布……宇宙には銀河が密集しているところと、ほとんどないところがある。こうした分布の様子は「宇宙の大規模構造 Large Scale Structure of the Universe」とよばれる。宇宙初期のゆらぎが重力的に成長することによってこの構造は誕生した。

 ダークエネルギーの観測法はいくつかあり、超新星の利用もそのひとつである。

 宇宙膨張の測定には赤方偏移が用いられる。天体までの距離の測り方は、距離に応じて数段階の方法があり、「距離の梯子 distance ladder」とよばれる。

 三角測量が基本であり、ほかにセファイド型変光星を用いた測量がある。周期的に変光する星を用いて、当該天体までの距離を求めることができる。

 現在、最も遠方まで適用され、かつ精度も高いと思われている方法がIa型超新星を使った方法である。

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 ダークエネルギー観測的証拠をまとめると次のとおり。

超新星……遠方のIa型超新星は、ダークエネルギーのない場合と比べ暗く見える。

宇宙背景放射ゆらぎ……バリオン振動のピークの見かけの大きさが、平坦な宇宙モデルとよく合う(光がまっすぐ進んで見える)ように道のエネルギーが空間を埋めて見える。

・銀河分布……バリオン音響振動のピークが、ダークエネルギーのない場合に比べ広がって見える。

銀河団の数……遠方の銀河・銀河団の数が、ダークエネルギーのない場合と比べ多い。

重力レンズ……ゆがむ確率や複数に分かれて見える割合が、ダークエネルギーのない場合と比べ多い。

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 ――この世界を理解するため、人間はこれまでにさまざまな方法で自然を調べてきました。

 物理学を研究する動機は、この世界を理解することらしい。

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 よくでてくる用語をメモする。

 宇宙マイクロ波背景放射……宇宙の晴れ上がりによってまっすぐ進むようになった光は、今も進み続けて、わたしたちのところへ届く。長い距離を進むあいだに波長が伸びて、マイクロ波の周波数になったために、「宇宙マイクロ波背景放射」とよぶ。放射は宇宙のあらゆる方向からやってくる。温度にはゆらぎ、濃淡があり、「宇宙の晴れ上がりの時点での宇宙の温度の高低が、そのまま引き継がれ」たために生じたと考えられている。

 バリオン……原子などの物質のこと。バリオン・光子流体が流体として振る舞い、宇宙全体にひろがっている。ダークマターはこの流体よりも5、6倍多い。バリオン・光子流体は音波振動を生み出すため、観測のための材料となっている。

 

宇宙のダークエネルギー 「未知なる力」の謎を解く (光文社新書)

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