短編ごとに種類はまったくちがう。ことばは平坦でわかりやすく、「ぼく」という人称が鼻につく以外は、とくに不快なところがない。古臭い、堅苦しい小説調子のことばでないところが重要だとおもった。
「夢の兵士」……脱走兵を追い詰めてみたら自分の息子だったという話。とくに感想はない。
「誘惑者」……追手と逃げている者とのやりとりがつづくと思いきや、あべこべの立場だった。評論家が気に入っているらしいがとくに感心はしなかった。
「家」……先祖ががいこつゾンビのような姿のまま歩きまわっている家の話。先祖がなにかの象徴にもおもえるが、非現実的なものが一般家庭のなかにいるという風景がおもしろかった。
「使者」……自称宇宙人と学者のやりとり。
「透視図法」
「賭」……奇妙な構造をした庁舎の話。不可思議なたてものの構造がおもしろく、また話のおわりもまとまっていた。
「なわ」……残酷な姉妹の話で、無邪気に犬をくびり殺す女の子の姿がきれいだとおもった。
「無関係な死」……突然自分の部屋に屍体がおかれている。主人公は屍体を処理しようとするが、試行錯誤した結果、あきらめる。
「人魚伝」……奇妙な性質をもつ人魚の話。人魚の生態が変わっていておもしろい。
「時の崖」