すばらしい動力機関が発明されるが、これは副産物として「絶対」を生み出してしまう。「絶対」にあてられた人間は、人間を超えた存在を知覚し、信仰をいだいてしまう。世界中にちらばった絶対が、あらゆる人間を狂信者に変質させ、世界終末戦争をおこす。
人びとをかりたてるのは宗教や、人種主義や、愛国心、政治思想、ありとあらゆるものだ。
わかりやすい寓話だが、個々のできごとが笑えた。また、1922年にこの本がかかれたというのがおもしろい。個人のうごきと、歴史上のうごきとがバランスよくかかれていて、自然に視点がきりかわる。
――……たとえば、白いフード付き外衣をまとったベドウィン族が槍の穂先に敵の頭を突き刺したままジュネーヴに到着した様子を描くことのほうに、わたしはもっと惹かれる……サハラでのロシアのコザック騎兵の行進、フィンランドの湖岸でのマケドニア解放運動闘士とセネガルの狙撃手との騎士道的な小競り合い。
「たとえばなし」だけが目的ではなく、非現実の風景をつくることをたのしんでいるのが感じられた。