全体的に文が読みづらくて、翻訳だけでなくたぶん、元のスペイン語も読みにくいんだろうとおもった。小説はいろいろと読んだつもりだが、それでも、話自体を追いかけるのが困難なくらい、状況を把握しにくい。
「猫の視線」……猫にたいする愛を語るような調子で、結局絵の中の存在だった。
「愛しのグレンダ」……女優を崇拝するファンクラブの人間たちは女優の出演する映画を改ざんし、彼女が復帰すると聞いて伝説を汚さないよう殺害する。殺害は直接明示されない。
「トリクイグモのいる話」……うとうとしながら読むとまったく理解できない話だった。
「ノートへの書付」……地下鉄に住む不思議な住人達と、かれらの正体をあばこうとする人間の話。地下の住人の正体は最後まで判明せず、語り手は発狂しかけておわる。
「ふたつの切り抜き」……暴力の風景がいきいきとしていて、それだけでおもしろみのある話。拷問と殺害は、軍事政権の下でも、平和な町のなかでも同じように発生する。
「帰還のタンゴ」……ほぼ飛ばし読み。
「クローン」……ほぼ飛ばし読み。
「グラフィティ」……2人称視点を使った、軍事政権下で壁に落書きをする人間たちの話。直接会うことはないが、落書きをお互いに書くことで通じ合うという、あたたかみのある話で、珍しいと感じた。
「自分に話す物語」……自分の見た夢をつらつらと語っていき、この夢は不思議なことに現実の知人とつながっている。
「メビウスの輪」……女は外人にレイプされ殺される。女の死ぬ直前の意識の流れと、逮捕された外人が死刑になるまでの報告を交互に並べたもの。
コルタサルは日常の中に幻想を見出すのが好きとのことだが、彼の書く日常がわたしにはどうもうけつけず、都会のこじゃれた男女の会話、気取った恋愛関係等が前面に出てくると読む気が失せる。
- 作者: フリオコルタサル,Julio Cor´azar,野谷文昭
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/01/28
- メディア: 単行本
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