うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『ニクソン訪中機密会談録』毛里和子ほか

 1972年、ニクソンと安全保障担当補佐官のキッシンジャー博士は、周恩来首相と会談する。

 アメリカが、社会主義国である中国と国交を回復させようと試みた理由は、会談から察すると以下のとおり。米国はソ連との軍拡競争をおこなっており、お互いに軍事費は膨張をつづけていた。このまま競争が続くことは、双方にとって不利益になる。

 また、アメリカはインドシナ紛争、なかでもベトナムに介入して以来、引き際を見極めていた。ソ連は、アメリカをベトナムに釘付けするために、北ベトナムを支援している。アメリカが何もせずインドシナを立ち退けば、それによって生まれた真空にソ連がやってくる。

 ソ連の動きを制限するために必要なのが、中国の力だった。中ソ関係はスターリン批判以来悪化しており、国境紛争や相互の非難が続いている。米中が協力することで、ソ連の膨張政策をけん制し、またソ連を背後につけたインドをけん制することができるとキッシンジャーらは考えた。

 ニクソンキッシンジャーは、中国が領土的野心のないこと、極東アジアの平和を求めていることを確認する。これまで、社会主義陣営は一枚岩と考えられていた。しかし、そうではないことがわかった。米中という2つの大国が、制度は違えど、互いに友好関係を結ぶことは、ソ連の一極支配を阻止するためにも有意義である。

 大国の力が及ばないところには、かならず別の大国がすき間を埋めにやってくる。これを阻止するために、米中は、インド亜大陸インドシナ、極東の勢力均衡について同意する必要がある。インド亜大陸については、ソ連の後押しするインドに対し、米がパキスタンを支援する。インドシナについては、ベトナムベトナム国民に任せ、カンボジアカンボジアに、ラオスラオスにゆだねる。極東アジアについては、米中が存在を示すことにより日本の軍国主義的傾向、膨張衝動を抑制する。

 以上のような米中関係を築くために、ニクソン周恩来は台湾問題について5つの原則を互いに約束した。台湾は中国の一部であり、米国は台湾独立運動を支援せず、台湾の、武力による大陸奪還作戦を支持しない。また、日本による台湾進出もまた認めない。

 米中国交樹立は、ソ連に対する対抗策としておこなわれた。両国のトップは、どちらも地域の平和を目指しており、また、周恩来についても、お互いに国の制度や世界観は違うが、協力することは可能であると考えている。

 日本については1972年の時点でも、まだ危険視されている。われわれ日本人には軍国主義的傾向と、領土拡大の衝動があるという。その担い手は第二次大戦を生き残った政治家と軍人である。ニクソンは、自分たちが日本から軍隊を引きあげると、日本が「独自の防衛体制を構築しようとする」かもしれない、と危惧している。自衛隊が不完全な軍隊だったことは、米国の意図も少なからず影響している。

 

 米国の立場からみれば、中国のほうが経済力、軍事力ともに上であり、日本よりもこちらを重要視するのは当然である。

 わたしの勝手な思い込みでは、今後、日本は比較的小さい国としていかに生き延びていくかを考える必要がある。安全保障を米国に依存しているかぎり、当面の間は安泰だが、いつまでもかくまってもらえるという保証がない。

 その他感想……キッシンジャーは、共同声明を出す際にはことばづかいが大切だといった。お互いに同意した点と、対外的に表明する点とは、微妙に変えなければならない。国交を結ぶには長い期間とこまめな交渉が必要である。

 リビアの成立や、ベトナム戦争以前のインドシナの経緯を調べたい。台湾については、いくつか本を買ったまま積んでいるので、いずれ読む。

 

ニクソン訪中機密会談録

ニクソン訪中機密会談録