うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『都会と犬ども』バルガス・リョサ

 士官学校に入った少年たちの話。文才があり、口先でうまく標的になるのをまぬがれているアルベルトが作者の姿を投影しているとおもわれる。同じ区隊のジャガーは圧倒的な戦闘力をもつチンピラで、上級生を叩きのめし学年のボスになる。生徒たちは教官の影に隠れてタバコを吸い、酒を飲み、ギャンブルに興じ、試験問題を盗む。

 厳しい規律の裏で生徒たちが暗躍する点がおもしろい。後半、区隊でのけものにされていた奴隷と呼ばれる少年が地上戦闘の授業で射殺される。真相はジャガーが殺したのだった。

 本の終わりに、チンピラ・ボスのジャガーと、アルベルトが同一人物であるとわかる。繊細なアルベルトは士官学校で生き残るために不敵なチンピラに変貌したのだった。もしくは、アルベルトの望んだ理想の姿が、何事にも動じず強い力をもつジャガーだったのかもしれない。

 軍隊と、その下で抑えつけられた子供たちが腐敗するのは自然である。

 リョサはこの現象を皮肉にしたり、笑いの種にするのではなく、あまりに真面目にとらえている。生徒たちのリンチや悪行、自分の出世にしか執着しない将校など、風刺の素材になりそうなものはたくさんあるが、彼はこれらを風刺しない。真面目なリョサには深刻な問題なのだろう。

 独白の主や、視点はころころと入れ替わり、最後のアルベルトとジャガーの合体についてはいろいろとつじつまが合わない。しかし、これは本なのだから細かい整合性は求められていない。

 

 繊細な人間と、傲慢で不敵な人間は表裏一体であることを改めて感じた。

 

都会と犬ども

都会と犬ども