うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『ドストエフスキー伝』トロワイヤ

 1 経歴
 退役軍人の父に育てられ、暗い子供時代を過ごす。父親は厳しく、また自分の貧乏と不遇を恨み酒をよく飲んだ。フョードルは工兵学校に進むが、規則ばかりの生活に嫌気がさす。
 退学した後、当時はまだ社会で大きな位置を占めていた文学で立身出世しようと創作活動に取りかかる。その後、自由思想、社会主義思想にかぶれて、会合にちょっと顔を出したために投獄される。
 監獄で生活するうちにかれはキリスト教に関心を持つようになった。出所してからは、『罪と罰』、『死の家の記録』といった長編を書きはじめる。
 当時、さらに盛んになりつつあった、若者たちの社会主義運動の暴力性、粗暴性に嫌気がさし、『悪霊』でかれらを批判する。作家は徐々に保守的、国粋主義的になっていき、政府からの評価も持ち直し始める。
 『カラマーゾフの兄弟』を書き、かれの評価が確立する。作家はキリスト教とロシアに希望を見出し、当時の左翼思想を非難した。
 2 生活
 ドストエフスキーの本と同じように、作家の生活態度や経歴は騒々しい。頻繁に泣いたりわめいたりし、てんかんの発作を起こし、賭博で資産をどぶに捨てる。また、政治的な主張をめぐって同業者たちと論争する。
 作家には性犯罪者的傾向があり、少女を犯したのではないか、という推測が本文でなされているが確証は出てこない。そんなことをしたら捕まるのではと思うがはっきりしたことはわからないようだ。
 3 その他
 トロワイヤ自体の文にはほとんど主張を感じなかった。
 『カラマーゾフ』について……人間には自由はいらない、また天上的な目標もいらない、必要なのは権威とわかりやすい指示である。
 リアリズム小説という範疇で説明されることがあるが、この作者の本は夢や妄想がよく出てくる。また人間も病人が多く、よくしゃべる。観念を異様に重視している。

 

ドストエフスキー伝 (中公文庫)

ドストエフスキー伝 (中公文庫)