うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『民間防衛』スイス政府編

 冷戦初期に連邦警察によって各家庭に配布された本。軍と民間が一体化し国の自由と独立を守るために必要な事項を示したものである。
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 平和
 平和、自由と独立維持のための根本方針について。また、民主主義の意義と改革の必要性について。
 ――スイスは、世界中で人類が行うあらゆる建設的行為には全力を尽くして協力する。しかし、みずからが行うべきことを他人からさしずされたくはない。……われわれは、あらゆる事態の発生に対して準備せざるを得ないというのが、最も単純な現実なのである。
 ――自由と独立は、絶えず守らねばならない権利であり、ことばや抗議だけでは決して守り得ないものである。手に武器を持って要求して、初めて得られるものである。
 情勢変化に適応するため、米、小麦粉、砂糖、食用脂肪、油、洗剤、燃料等の備蓄が必要である。
 有事や災害時、地域防衛隊は広範な活動を行う。
 自警団の編成と役割分担。避難所の建設。各種警報の伝達。
 核爆弾や放射能被害時の行動要領。生物兵器対策として消毒、予防があげられる。
 物理的な攻撃に加えて、敵は宣伝戦を開始する。それにだまされてはいけない。
 ――素朴な人道主義に身をまかせることは、あまりに容易なことである。偽物の寛容に身をあやまると、悲劇的な結末を招くであろう。敵の真の意図を見抜かねばならない。
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 戦争の危険
 心理戦に対する抵抗について。
 ――心理的国土防衛に専心するあまりに、政治的過激主義に陥ることのないよう用心しなければならない。…したがって、スイスでいう心理的国土防衛とは、教条的訓練ではなく、各人の判断力と完全な責任感を養うことである。したがって、スイス精神をはぐくむということは、第一義的には、連邦議会のする仕事ではなく、全国民、政党、教会、精神的・文化的団体のする仕事、各人のする仕事なのである。
 戦争が近づくとともにスパイ行為は増大する。スイスの刑法には死刑がないが、スパイたちは軍事刑法が適用されるから、国民の生命を危うくするものは死刑に処せられる。
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 戦争
 戦争のもう1つの様相
 同調者を求める敵の活動について。
 ――数多くの組織が、巧みに偽装して、社会的進歩とか、正義、すべての人びとの福祉の追求、平和というような口実のもとに、いわゆる「新秩序」の思想を少しずつ宣伝していく。
 ――敗北主義――それは猫なで声で最も崇高な感情に訴える。……そしてその結論は、時代おくれの軍事防衛は放棄しよう、ということになる。
 全体主義大国はその衛星国に対して、強制労働、徴発を行い、衛星国の若者を容赦なく犠牲にする。
 他国による侵略や脅威の迫る中で、労働者に対しストライキを呼びかけるものは、国家の分裂を企図する者である。
 他国や侵略者の甘言に負けて、無血開城を許したときにスイスは敗北し、自由と独立の歴史は終わる。

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 レジスタンス(抵抗活動)
 原則として、抵抗運動としての戦闘は軍の指揮官と兵士によって行われることが望ましい。
 平時の備えが重要である。楽観主義は侵略者に対する脆弱性となる。
 どんな戦争にも終わりがくる。
 知識のしおり
 (略)
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 近代戦争は全面戦争であり、軍だけでなく国民すべての団結が要求される。その根幹となるのは、国の価値と、国が保護する精神である。スイスは自由と独立、民主主義を保持しており、このかたちを守る価値がある、と国民に訴えかける。
 守る価値のない国のために団結し犠牲を払うものはいない。
 国の価値は物質的なもの、経済的なもの、快適さだけでは不足である。なぜならそれは全体主義国や権威主義国家でもある程度まで達成可能だからである。

 

民間防衛―あらゆる危険から身をまもる

民間防衛―あらゆる危険から身をまもる