うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『刑事魂』萩生田勝

 著者によれば刑事と呼ばれるべきは刑事課の人間だけである。刑事課はその担当地域について犯罪者を検挙するという発生責任を負い、また人の死が犯罪によるものかそうでないかを判断する。
 変死体が自殺なのか他殺なのかを判断できるのは刑事課の人間だけである。
 著者は様々な変死体を担当した経験を淡々と語る。言葉では涙が出た、無念だった、等と書いてはいるが感情は鈍麻しているような印象を受けた。
 泥棒の捜査はもっとも難しく、刑事の世界では泥棒に始まり泥棒に終わるといわれている。凶悪犯罪者のほとんどは泥棒や万引きに手を染めているため、泥棒捜査が思わぬ事件の解決につながることもある。
 泥棒には、罪を逃れようとする、自分でもやめられず犯罪に手を出す、嘘をつく等の特徴を持つ。著者はこれを「泥棒根性」といい、警察は毅然として対応しなければならないとする。
 宿直制度とはその日の事件について警察署の6、7人の宿直が担当する制度である。警察官は週に1回宿直につき、その日の事件には必ず臨場し書類作成までを行わなければならない。家に帰れるのは宿直明けの日の深夜だという。
 著者は刑事に必要な要素として次のものをあげている。
1 人間性
2 行動力
3 得意分野
4 冷静さ
5 想像力と発想
6 素直な心
 著者は刑事たちのことを教養のない「低能力集団」と形容する。著者をふくめて刑事の大半は高卒でありまた警察官の社会的地位も低い。しかし、かれらは事件の解決と犯罪の追及のために知性を鍛えている。その有効な方法の1つが「人の話を聞く」ことであり、その具体例が読書である。
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 文章は朴訥で素朴だが言葉は現実的であり浮ついたところがない。

 

刑事魂 (ちくま新書)

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