うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

本メモ

『Ordinary Men』Christopher R Browning その1

ポーランドでユダヤ人殺害を実行した第101警察予備大隊について書かれた本。 当該大隊については、他の移動殺人部隊と異なり、所属隊員のリスト、証言、詳細な裁判記録が残されていた。 調査の過程で、「ホロコーストは多くの人間が多くの人間を殺害する…

『ルポ 貧困大国アメリカ』堤未果

米国の貧困状況や社会問題を紹介する本(2008年)。 見習うべきでない政策・事例が多数ある。 サブプライムローンは、低所得者層に高利率で住宅ローンを貸し付けるビジネスである。当時、このローンを十分な知識がないまま契約させられ、破綻する移民や…

『「仮想通貨」の衝撃』カストロノヴァ その2

4 貨幣とは物につけられるラベルである。貨幣の機能は、交換の媒介、価値の尺度、価値の貯蔵である。価値は人びとの主観的な判断によって生まれる。 著者は、従来の貨幣の3つの機能に加えて、オンラインゲームにおける仮想通貨の隆盛を踏まえ、「喜びを提…

『「仮想通貨」の衝撃』カストロノヴァ その1

原題は「Wildcat currency」で、19世紀のアメリカにおける、民間の貨幣発行銀行を意味する。銀行は、ヤマネコしか住んでいないような僻地に設置され、金を担保に貨幣を製造し、容易に換金されないようにし流通を図った。 *** 貨幣の問題とは、「取引をする…

『旧約聖書の謎』長谷川修一

旧約聖書の記載内容を考古学の方法によって追求する本。各エピソードを取り上げ、考証を行い、エピソードに含まれるメッセージを考える。 *** ノアの方舟……メソポタミア(アッシリア、バビロニア等)に普及していた洪水伝説の変形バージョンと考えられる。 …

『自壊する帝国』佐藤優

10年程前に『国家の罠』、『獄中記』等を読んで以来、久々にこの著者の本を読んだ。 著者は極端なロシア政府寄りというわけではないだろうが、暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤやリトビネンコに対しては冷めた見方をしている。 どちらの書いた本も読ん…

『アフガン侵攻1979-89』ブレースウェート その2

戦闘…… ムジャヒディンは地元と密着しており、各監視所や部隊は、地元民と協力しなければやっていけなかった。 マスードは大学を出て働いた後、イスラーム主義運動に参加し、ムジャヒディンの一角となった。共産主義政権と同じく、ムジャヒディンも一枚岩で…

『アフガン侵攻1979-89』ブレースウェート その1

著者はロシア経験の長いイギリスの外交官で、独ソ戦についても本を書いている。 1978年、アフガニスタンにおいて、クーデタにより共産主義政権が成立すると、タラキはスターリンと同じ手段で政権を安定させようと試みた。このため、翌年、ヘラートにて大…

『憲兵』大谷敬二郎

満州事変前夜から終戦までの間、憲兵として勤務した人物の本。 憲兵としての初度配置が関東軍であり、石原莞爾らが謀略によって事変を起こす場面に立ち会うことになった。 軍を含む国家全体が、感情的、短絡的な傾向を強めていく様子を冷静に記述していく。 …

『個人と国家』樋口陽一

人権主体としての個人と、主権の担い手としての国家とを考える本。 個人の自由に対する保障をより強化していこうという考えが貫かれている。 個別の事例にあれこれコメントする形式をとっており、漫談に近い。しかし、憲法とは何か、立憲主義とは何か、国家…

『ダーウィンの危険な思想』デネット その4

16 道徳と進化の関わりについて考える。 道徳の起源を論じた学者として、ホッブズ、ニーチェに言及する。 ニーチェはダーウィンの影響を受けているが、同時代の社会ダーウィニズムについては厳しく批判した。 ニーチェは、道徳が成立することによって、そ…

『ダーウィンの危険な思想』デネット その3

10 ダーウィン主義に対して大きな影響を及ぼした、批判者の1人であるグールドについて。 スティーヴン・グールドは、進化論を普及させる上では素晴らしい業績を残した。しかし、彼の説は進化論に「スカイフック」(何者かが進化を今あるように導いたとす…

『ダーウィンの危険な思想』デネット その2

6 現在の生命の形は、DNA配列により可能な無数の形の中のごく一部に過ぎない。それらは、盲目的で無作為な過程によってつくられた生物学的秩序である。 種は非行為者であり、自然淘汰が様々な問題を解決していく。デザインは知性を必要とするが、それは…

『ダーウィンの危険な思想』デネット その1

ダーウィンの持つ重要性をわかりやすく説明するための本。 具体的には、ダーウィン革命が既存の世界観をどのように変えてしまうのか、ダーウィン思想が、その反論に対し、いかに耐えてきたか、ダーウィン思想がヒトにも適用されうることを説明する。 *** 1…

『憲兵物語』森本賢吉 その2

*** 「注意すべき中国人の慣習」……面子を重んじ、言動に注意し、敵意を持たれないようにすること。大家族主義を認識すること。中国人は収入に応じた生活をする。 *** 北支軍の憲兵の悪評について、小磯国昭陸軍大将に尋ねられた著者は回答する。 ――……憲兵令…

『憲兵物語』森本賢吉 その1

徴集兵出身の憲兵による話。 著者は成績優秀によって憲兵となり朝鮮、中国を中心に活動した。 憲兵の仕事だけでなく、当時の中国戦線の様子も詳しく書かれている。特に、占領地域や、後方地域でのスパイやゲリラとの関わりについて参考になる。 *** かれは広…

『靖国参拝の何が問題か』内田雅敏

なぜ靖国神社参拝に対して諸外国が内政干渉を行うのかを、神社の起源等から明らかにする本。 自民党、特に安倍晋三への非難の調子が強烈であるため、同じ意見の読者が安心することはできても、違う考えの読者を説得させることはできないのではないか。 わた…

『スターリンの対日情報工作』三宅正樹

クリヴィツキー、ゾルゲ、日本人スパイ「エコノミスト」等の事例を参考に、昭和前半期における日本政府の内部情報のほぼすべてが、スターリンに伝達されていた事実を明らかにする本。 1 クリヴィツキー クリヴィツキーはスターリンの工作員だったが亡命し、…

『日本軍と日本兵』一ノ瀬俊也

合衆国陸軍省情報部の出版していた部内刊行物「Intelligence Bulletin」(IB)を参考に、日本軍と日本兵の実像を考える。 精神主義、白兵戦一辺倒だったという定説は正確でないことを本書は示す。 狭いレベルにおいては、日本軍は合理性を追求していた。し…

『思考する言語』スティーブン・ピンカー その2

4 わたしたちの認識の基礎をなす空間、時間、因果性について。 わたしたちは、空間、時間、因果性によって世界を認識する。それは世界そのものとは一致しないが、わたしたちはこの心を通じて世界を認識する。 著者は、物質、空間、時間、因果というカントの…

『思考する言語』スティーブン・ピンカー その1

本書は、言語における意味について考える。 人間が自分の思考や感覚をどのように言葉にするかを検討し、人間の性質について探ろうというものである。 特に、具体的な言語の使用例や、日常生活に即して言語における意味について考えようとする方法に特徴があ…

『立憲主義について』佐藤幸治

立憲主義の成立過程と現状を明らかにする本。 特に重要となる現代立憲主義は次のようなものをいう。 ――主権者である人民が憲法制定権力者として、人権の保障と権力分立ないし抑制・均衡の統治構造を定める憲法典を制定して政府を創設し、立法権を含む政治権…

『ロシア宇宙開発史』冨田信之 その2

2 ロケット開発 ソ連はペーネミュンデとミッテルヴェルク、その他のロケット関連施設を捜索し、A4ロケットと技術資料、設計図等を持ち帰った。また、スターリンの政令によりロケット開発体制が作られ、ドイツの技術者もソ連に移送された。 コロリョフを開…

『ロシア宇宙開発史』冨田信之 その1

気球の発明から有人宇宙船ヴォストーク(及びヴォスホート)までの、ロシアにおける宇宙開発の歴史を書く。 1 気球からロケットへ 気球は18世紀後半にフランスで発明された。これを受けて、ロシア科学アカデミーも有人気球の研究を推進し、限界高度や、上…

『昭和天皇の終戦史』吉田裕 その2

5 『独白録』の趣旨について…… ・天皇は立憲君主であり、決定権を行使しない。よって、対米開戦の責任はない。 ・対米開戦の責任は軍部、松岡洋右、近衛文麿、大島浩らにある。 ・東条英機は軍をよく統制できるから、天皇はかれを支持した。東条はがんばっ…

『昭和天皇の終戦史』吉田裕 その1

1990年に公開された『昭和天皇独白録』を史料として、「力を持たない天皇」像に対して疑問を投げかける。 古川隆久『昭和天皇』とはまったく違った像が描かれている。 1990年に発見された『昭和天皇独白録』は、終戦直後の46年における天皇の回顧…

『獄中記』佐藤優

逮捕された元外務省職員の本。大量の本を出しており粗製乱造の感もあるが、本書は獄中での読書やメモをまとめた割と初期のものである。 もし独房に入れられたり軟禁されたりしたら、とりあえず外国語勉強に専念しようという感想を持った。 著者によれば、政…

『The Image』Daniel J. Boorstin その2

3 旅行者から観光者へ 観光業の発展によって、かつては人生の一大イベントであり、限られた人びとしか経験できなかった海外旅行が、誰でも手に入る商品となった。 旅行は陳腐化し、冒険や計画、リスク等の要素は薄れていった。 美術館、国内旅行、ホテル、…

『The Image』Daniel J. Boorstin その1

1960年代に書かれたアメリカのメディアと国民の性質に関する本。メディア論の古典で、現代にも通じる指摘事項が含まれている。 著者いわく、アメリカ人は「過度の期待」に支配されている。 かれらは世界や人生、自己にあまりに多くを期待しすぎて、自分…

『三島瑞穂の自衛隊へのアドバイス』

元米陸軍の日系アメリカ人が書いた本。この人物の著作は、ほかに自身の体験を元にした『地上最強のアメリカ陸軍特殊部隊』を読んだことがある。 グリーンベレーとしてベトナム戦争に従軍しており、価値観や経験は、当然、日本人とは異質である。 海外に派遣…

『飛行船の歴史と技術』牧野光雄

日本語では数少ない飛行船関連書籍だという。 1 序論 現在航空機のほとんどは翼の揚力を利用する。一方、空気より軽い気体を使う気球や飛行船は軽航空機Lighter Than Air aircraft略してLTAと分類される。 飛行船は軍事利用できず衰退したが、その欠点は…

『ヤクザと原発』鈴木智彦

暴力団ライターが原発作業員として現場に潜入する手記。 ヤクザと原発事業との関係を体系的に説明するのではなく、潜入手記・メモの形をとっている。 原発事業は東電を頂点としてプラントメーカー(東芝、日立等)、その下に下請けピラミッドが構成されてい…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その3

7 ヒトラーは武力による威嚇と小規模紛争によって野望を達成できると考えていた。 かれは一般的な侵略者のイメージとは異なり、自分からは動かずに、機会を待つことに長けていた。 英仏は、ヴェルサイユ条約におけるドイツの不満を理解しており、その要求に…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その2

3 ヴェルサイユ条約における最大の不備が賠償金であることを説明する。 ・賠償金は戦後数年たっても確定しなかった。研究の結果、ドイツは賠償金の支払いを怠慢していたことが判明している。 ・ドイツのインフレと困窮は戦費が主因だが、ドイツ国民の大半は…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その1

第1次大戦や、列強の覇権争いについての著作がある、イギリスの歴史家テイラーによる本。 第2次大戦の原因を、歴史学者の視点から検討する。 テイラーの本は『ビスマルク』、『第1次世界大戦』、『The Struggle for Mastery in Europe』を読んだが、どれ…

『神道入門』井上順孝

神道は日本独自の宗教だが、他宗教と混交し、また日本文化そのものと一体化しているため、定義が難しい。 本書は、組織制度や神社等の「見える神道」と、民間の習俗や思想の「見えない神道」という区分けを利用して、神道について説明する。 特に、現代にお…

『Urban Warfare in Iraq 2003-2006』J.Stevens

イラク戦争における市街戦について簡単に解説する本。 白黒の写真とイラストがついており、市街戦の基礎的な事項が理解できる。1つ1つの項目における説明はあっさりしているが、全体の印象としてはおぞましいゲリラ戦、近接戦闘の風景が浮かび上がる。 ***…

『お寺の収支報告書』橋本英樹

――本書は、仏教界を堕落させているお金や制度の問題について、内側を知る立場から隠すことなく述べ、みなさんといっしょになって考えていただくために書かれました。 現役僧侶が住職の堕落を嘆く本であり、笑える箇所が多々ある。 時代に合わない制度や強欲…

『The roots of Blitzkrieg』James S. Corum その2

武器の開発について。 兵器局、各軍種の調査官が核心となって、火砲、小銃、機関銃、通信機器、戦車、毒ガス兵器の改良が行われた。ヴェルサイユ条約で兵器は厳しく制限されていたが、共和国軍は規制をかいくぐり、高水準の兵器の開発に努めた。 ・兵務局T…

『The roots of Blitzkrieg』James S. Corum その1

『電撃戦の起源:ハンス・フォン・ゼークトとドイツの軍事改革』 第2次大戦におけるドイツ軍戦術の起源をたどる本。 ドイツにおける戦略および戦術の発展は、戦間期、主にハンス・フォン・ゼークト将軍によって担われた。 本書はゼークトや無名の将校たちが…

『クルド人 もうひとつの中東問題』川上洋一

クルド人は主にトルコ、イラク、イランの3か国にまたがって居住しており、面積ではフランスに匹敵する。人口は2500万人前後であり、古来から独立闘争をくりかえしてきた。 宗派は7割強がスンニ派で、残りがシーア派、一部だがキリスト教徒やユダヤ教徒…

『Inside the Third Reich』Albert Speer その3

22 下り坂 ヒトラーは現実を受け入れられず、支離滅裂な命令を連発する。前線を観に行こうとせず、空襲被害を視察しようともしなかった。 かれは、いまに勝利するだろう、という妄想にとりつかれていた。 ゲーリングや軍高官、軍需関係の幹部たちは、この…

『Inside the Third Reich』Albert Speer その2

9 総統官邸での日々 ヒトラーの生活は、やはりスターリンを連想させる。かれの生活は芸術家に近く、毎日、側近とイエスマンを呼びつけて会食を行い、とりとめのない話をした。深夜はシュペーアやボルマンら一部の人間と映画鑑賞を行った。 ゲーリング、ゲッ…

『Inside the Third Reich』Albert Speer その1

ヒトラー政権のもとで軍需相を努め、戦後懲役刑を受けた建築家の自伝。かれは芸術家として異例の待遇を受け、その恩恵を受けつつ間近でヒトラーを観察する機会を得た。 子供時代からの半生が書かれているが、調子は落ち着いており、随所に建築や装飾への言及…

『福島第一原発 真相と展望』アーニー・ガンダーセン

元原発技術者が福島第一原発の状況について説明する本。 著者は大学で原子力工学を学び原子炉設計に携わっていたが、炉の欠陥を訴える内部告発をきっかけに追放され、以後、原発廃止論者となった。 インタビューを並べたもので構成は漫然としているが、原子…

『It Doesn't Take a Hero』Schwarzkopf その2

ノーマン・シュワルツコフは、その後、ウェストポイントでの教官、ペンタゴンでのデスクワーク(とても時間のかかる業務)についた後、大佐となり、アラスカの旅団指揮官となる。 評判の悪かった指揮官は、毎週金曜朝に、全員にマラソンをさせ、砂場で格闘技…

『It Doesn't Take a Hero』Schwarzkopf その1

CENTCOM司令官として湾岸戦争を指揮した人物が、子供時代から陸軍に入り退役するまでを書く自伝。 *** 著者の父は警察署長、軍人で、母は看護師である。 両親の教え……男は女を守らなければならない、嘘をつかない、白人のプロテスタントとして生まれ…

『廃墟のなかのロシア』ソルジェニーツィン

ソ連崩壊後、混乱から立ち直らないロシアについて、『収容所群島』の作者が、どうすればいいかを考える本。 ロシア側が考えるロシア救済策・ナショナリズムは、あまり耳に入ってこないので新鮮に感じた。 明らかに、欧州や合衆国とは異質の思考であり、冷戦…

『南京事件』笠原十九司

本書の目的……東京裁判や南京軍事法廷の判決とは異なる「歴史」として、南京事件の全体像を解明しようと試みる。 1 1937年7月に盧溝橋事件、8月に第2次上海事変が発生し、日中戦争がはじまった。この月、木更津から発進した海軍機により南京渡洋爆撃…

『Rationalism in Politics and Other Essays』Michael Oakeshott その6

◆保守的であること 保守的であることとは、今あるものに満足し、未来のより良き善を求めず、失われた過去を偶像化しない傾向を指す。保守主義は身近なものを信じる。また、変化と革新を好まず、現状維持をよしとする。例え改善が行われる場合でも、それは漸…