うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

本メモ

『別荘』ホセ・ドノソ

『夜のみだらな鳥』を書いたチリの小説家による、空想を細かく書き込んでいく物語。 *** あらすじ 1 大人たちは、30人の子供たちをマルランダと呼ばれる別荘に残してハイキングにいく。敷地の外には人食い人種が住んでおり、また塔にはアドリアノという一…

『「民族浄化」を裁く』多谷千香子 その3

ミロシェヴィッチはガス会社の社長を務めた後、共産党の政治家として出世したが、80年代のコソヴォ民族主義(コソヴォに住むセルビア人は、アルバニア人の中で少数派だった)に同調して穏健派を追い出し、指導者となった。かれは恩師を失脚させ1990年…

『「民族浄化」を裁く』多谷千香子 その2

3 虐殺はなぜ起こったか セルビア人勢力…… ・ミロシェヴィッチ(セルビア首相) ・カラジッチ(スルプスカ共和国大統領)とムラジッチ(ボスニアの軍人) ・タリッチ(ボスニアのユーゴ人民軍中将)とブルダニン(ボスニアの政治家) ――タリッチは、自発的…

『「民族浄化」を裁く』多谷千香子 その1

ユーゴスラヴィア内戦における「民族浄化」の実像を突き止める本。また、当時の国際社会の対応についても反省する。 著者は旧ユーゴスラヴィア国際刑事裁判所(ICTY)の判事を務めた。 ――「民族浄化」の実像は、よく言われるように、血で血を洗うバルカ…

『永遠平和のために』カント

カントは、永遠平和の達成のためにどのような具体的な策が必要かを考えた。 1章 国家間の永遠平和のための予備条項 1「将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、決して平和条約とみなされてはならない」 2「独立しているいかなる国家も、…

『昭和天皇独白録』寺崎英成

本書は、敗戦直後に宮内庁職員が天皇からの聞き取りという形式で作成したもので、当時の東京裁判対策(天皇免責対策)と関連がある。 軍に翻弄される、無力な平和主義者の天皇という図像について検討するきっかけとなる本。 昭和天皇と宮内庁の基本的な主張……

『ドクトル・ジバゴ』パステルナーク

ロシア人文学者パステルナークは、海外詩の翻訳者、詩人としても有名とのことである。本作『ドクトル・ジバゴ』はソ連において発禁となり、パステルナークはその後ノーベル文学賞を受賞したがソ連当局の反対により辞退させられた。 物語は映画版とそこまで変…

『Moscow 1941』Rodric Braithwaite その3

工場が閉鎖し、また食料配給も止まったため、労働者たちの不満が蓄積した。市から逃亡しようとする工場長や幹部たちを労働者がとらえ、車両や荷物を破壊し、市内に連れ戻した。 市内の恐慌を知らされたスターリンは外出禁止令を発し、また工場や商店を通常通…

『Moscow 1941』Rodric Braithwaite その2

正規軍に加えて、大量の義勇兵が徴発された。多くの男女学生、農民、映画関係者、文学者たちが義勇兵として戦争に参加した。 しかし、モスクワにおいてはその大多数が志願であり、だれもが前線に行きたがった。 従軍作家シモノフは、前線の様子が、かつての…

『Moscow 1941』Rodric Braithwaite その1

ロシア・ソヴィエトの首都であるモスクワと、その住民、また政治家や軍人を中心に、かれらがいかにドイツ軍の侵略に耐えたかを説明する。 当時のモスクワの様子が細かく書かれており、知らなかった情報が多数含まれていた。 この本は、中国を旅行している最…

『短篇集 死神とのインタヴュー』ノサック

ハンブルク空襲の最中に、若い軍人に助けられた女の話。語り手は、女から軍人本人または軍人の親類ではないかと勘違いされる。 ――大きな激動の時代には、われわれはみんな互いに似通ってくるのだろうか。あるいは、こういう時代には、個々人のもつ考えが壊れ…

『エネルギー問題入門』リチャード・ムラー その2

3 代替エネルギー 太陽、水力、風力、原子力等、それぞれに強力な信奉者がついておりまともな議論は容易ではない。 太陽エネルギーは急速に発展しているが、かぎとなるのは導入コストや維持費、効率である。運用に人件費がかかることから、途上国で発達する…

『エネルギー問題入門』リチャード・ムラー その1

エネルギーに関する正確な知識を得ることにより、正しいエネルギー政策を導くことが重要である。 エネルギーは軍事経済の両面において国家の安全保障の中核に位置する。 また、エネルギーに関する定説や報道は、しばしば実態とかけはなれていることが多いた…

『帰ってきたヒトラー』ティムール・ヴェルメシュ

現代ドイツによみがえったヒトラーは芸人としてテレビに登場し、やがて人気者となる。 ネオナチに襲撃されて以降は、自由の闘士として各政党からもスカウトが殺到し、ヒトラーは自分の政党を新たに立ち上がる。スローガンは「悪いことばかりじゃなかった」。…

『今日われ生きてあり』神坂次郎

特攻隊員の遺書、整備員や周辺住民の手記等をまとめた本。 著者は航空基地の通信員として働いた経験のある作家ということである。 特攻隊員の陰に隠れて、批判から逃れようとする戦争指導者や指揮官の姿勢はよくない。 *** 特攻に志願した者の大半は学徒出陣…

『ソドムの百二十日』サド

フランスの小説家サドによる幻想文学。 本書の構成は以下のとおり。 ・背景 ・登場人物 ・計画 ・訓示 ・日課次元 ・記録 計画によって集められた少年少女は、4人の変態権力者の変態行為の犠牲になる。あわせて、4人の中年女が自分の経験した変態行為を話…

『続・突破者』宮崎学

『突破者』を出版した後の著者の活動について自ら回想する本。 宮崎学は、現代日本をとりまく抽象的な正義を否定する。それは清潔な市民による正義であり、社会から不潔なものを全て抹消しようとする世界観である。 平沼騏一郎が司法官僚の時代、かれは被差…

『外人部隊』フリードリヒ・グラウザー

モロッコ駐留の外人部隊に所属する兵隊たちの話。それぞれ違う国からやってきた隊員たちは、真偽の怪しい自分の経歴について話す。逃げ出した者、高貴な生まれだが没落したもの、社会から外れたものが多数存在する。 部隊では尼僧院での売春が蔓延しており、…

『堕落論・日本文化私観』坂口安吾

評論・エッセイ類を集めた本。 だいぶ昔に一通り読んだが、改めていくつかを読み直した。 ◆小説・文学について 現実の代用としての言葉を否定し、絶対的な言葉こそが芸術となる。言葉は現実の模写や代用品ではない。 ――言葉には言葉の、音には音の、色にはま…

『謀略戦 陸軍登戸研究所』斎藤充功

元職員らの証言を聞き出し全貌を明らかにするという形式をとる。 *** ・登戸研究所は各特務機関や中野学校と密接なつながりがあった。職員の中には、終戦後すぐに行方不明となり、中国人になりすまして生活をしていた者もいたという。 ・特に、米本土に影響…

『誘拐』本田靖春

小原保(こはら たもつ)による村越吉展誘拐殺人について書かれた本。 事件の状況、警察による捜索と取り調べ、被害者と犯人の生い立ちなどを検討していく。文章は落ち着いているが、事件を通して浮かび上がる世の中の特性が細かく書かれている。 犯人の生い…

『パウル・ツェラン詩文集』

代表的な詩とすべての詩論を収録した本。 詩の翻訳はいくつか読んだことがあり、大変印象に残っている。 *** 有名な「死のフーガ」をまた読んだところ、以前よりホロコーストの風景が露骨に表現されているように感じた。 ――彼は口笛を吹いて自分のユダヤ人ど…

『近現代日本を史料で読む』御厨貴

各時代ごとの政治家、官僚、軍人等の日記を紹介する。 1つ1つの章は短く、各歴史的人物とその日記のガイドのようなものである。 日記は歴史的事件から間をおかずに書かれるため、改変の度合いが少なく、当時の状況を細部まで知ることができる。 一方で、記…

『千日の旅』石上玄一郎

石上玄一郎(いしがみ げんいちろう)(1910-2009)は札幌出身、東北で育った小説家である。 この人物を知ったのは、田中清玄が自伝のなかで、かれが尊敬すべき中学の同級生である、と言及していたからである。 作品のほとんどは、仏教的な世界観の影響を受…

『陸軍登戸研究所の真実』伴繁雄 その2

植物、作物に対する病原菌兵器の開発が行われ、大陸で実験された。しかし結果は不明確である。 風船爆弾に牛の病原菌兵器を搭載し米本土を攻撃する計画もあったが、中止になった。 電波兵器(1科) 怪力光線、殺人光線ともいわれる「く」号は、怪力電波によ…

『陸軍登戸研究所の真実』伴繁雄 その1

陸軍登戸研究所は川崎市生田に1939年設立された陸軍所管の研究機関であり、陸軍中野学校、関東軍情報部、特務機関等と連携して、生物化学兵器、電波兵器、風船爆弾、中国紙幣の偽札など様々な謀略戦兵器を開発した。 本書は創設から研究所及び中野学校等…

『貧しき女』レオン・ブロワ

レオン・ブロワ(Leon Bloy)(1846-1917)はフランスの小説家・エッセイストで、同時代のユーゴー、モーパッサン、ゾラなどを敵とみなして攻撃していたことで有名である。 敬虔なカトリック作家といわれるが、慈悲深い説教のようなイメージを期待…

『ペリリュー・沖縄戦記』ユージン・スレッジ その2

もっとも精神を痛めつける武器は砲弾で、特に無防備な状態で砲撃にさらされることは、ベテラン兵士であっても耐えがたいものだったという。 海兵隊は仲間の絆を重視し、実際、信頼関係があったからこそ力を発揮できたと著者は回想する。 ――珊瑚礁岩の染みを…

『ペリリュー・沖縄戦記』ユージン・スレッジ その1

海兵隊に志願し、パラオ諸島ペリリュー島の戦い、沖縄戦に参加した兵隊の回想録。太平洋戦争の様子が細かく書かれており、兵隊たちの悲惨な状況を知ることができる。 構成は次のとおり。 ・志願とブートキャンプ ・ペリリュー島の戦い ・沖縄戦 著者は戦争に…

『幕末の天皇』藤田覚 その2

4 鎖国攘夷主義の天皇 孝明天皇即位の時代には、外国船が次々に訪れ開国と通商を要求していた(1844年以降)。 幕府はアヘン戦争の二の舞を避けるために、朝廷や諸国大名に助言を求めた。 1853年のペリー来航後、幕府は日米和親条約、日英和親条約…