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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『ヤクザと原発』鈴木智彦

暴力団ライターが原発作業員として現場に潜入する手記。 ヤクザと原発事業との関係を体系的に説明するのではなく、潜入手記・メモの形をとっている。 原発事業は東電を頂点としてプラントメーカー(東芝、日立等)、その下に下請けピラミッドが構成されてい…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その3

7 ヒトラーは武力による威嚇と小規模紛争によって野望を達成できると考えていた。 かれは一般的な侵略者のイメージとは異なり、自分からは動かずに、機会を待つことに長けていた。 英仏は、ヴェルサイユ条約におけるドイツの不満を理解しており、その要求に…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その2

3 ヴェルサイユ条約における最大の不備が賠償金であることを説明する。 ・賠償金は戦後数年たっても確定しなかった。研究の結果、ドイツは賠償金の支払いを怠慢していたことが判明している。 ・ドイツのインフレと困窮は戦費が主因だが、ドイツ国民の大半は…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その1

第1次大戦や、列強の覇権争いについての著作がある、イギリスの歴史家テイラーによる本。 第2次大戦の原因を、歴史学者の視点から検討する。 テイラーの本は『ビスマルク』、『第1次世界大戦』、『The Struggle for Mastery in Europe』を読んだが、どれ…

『神道入門』井上順孝

神道は日本独自の宗教だが、他宗教と混交し、また日本文化そのものと一体化しているため、定義が難しい。 本書は、組織制度や神社等の「見える神道」と、民間の習俗や思想の「見えない神道」という区分けを利用して、神道について説明する。 特に、現代にお…

『Urban Warfare in Iraq 2003-2006』J.Stevens

イラク戦争における市街戦について簡単に解説する本。 白黒の写真とイラストがついており、市街戦の基礎的な事項が理解できる。1つ1つの項目における説明はあっさりしているが、全体の印象としてはおぞましいゲリラ戦、近接戦闘の風景が浮かび上がる。 ***…

『お寺の収支報告書』橋本英樹

――本書は、仏教界を堕落させているお金や制度の問題について、内側を知る立場から隠すことなく述べ、みなさんといっしょになって考えていただくために書かれました。 現役僧侶が住職の堕落を嘆く本であり、笑える箇所が多々ある。 時代に合わない制度や強欲…

『The roots of Blitzkrieg』James S. Corum その2

武器の開発について。 兵器局、各軍種の調査官が核心となって、火砲、小銃、機関銃、通信機器、戦車、毒ガス兵器の改良が行われた。ヴェルサイユ条約で兵器は厳しく制限されていたが、共和国軍は規制をかいくぐり、高水準の兵器の開発に努めた。 ・兵務局T…

『The roots of Blitzkrieg』James S. Corum その1

『電撃戦の起源:ハンス・フォン・ゼークトとドイツの軍事改革』 第2次大戦におけるドイツ軍戦術の起源をたどる本。 ドイツにおける戦略および戦術の発展は、戦間期、主にハンス・フォン・ゼークト将軍によって担われた。 本書はゼークトや無名の将校たちが…

『クルド人 もうひとつの中東問題』川上洋一

クルド人は主にトルコ、イラク、イランの3か国にまたがって居住しており、面積ではフランスに匹敵する。人口は2500万人前後であり、古来から独立闘争をくりかえしてきた。 宗派は7割強がスンニ派で、残りがシーア派、一部だがキリスト教徒やユダヤ教徒…

『Inside the Third Reich』Albert Speer その3

22 下り坂 ヒトラーは現実を受け入れられず、支離滅裂な命令を連発する。前線を観に行こうとせず、空襲被害を視察しようともしなかった。 かれは、いまに勝利するだろう、という妄想にとりつかれていた。 ゲーリングや軍高官、軍需関係の幹部たちは、この…

『Inside the Third Reich』Albert Speer その2

9 総統官邸での日々 ヒトラーの生活は、やはりスターリンを連想させる。かれの生活は芸術家に近く、毎日、側近とイエスマンを呼びつけて会食を行い、とりとめのない話をした。深夜はシュペーアやボルマンら一部の人間と映画鑑賞を行った。 ゲーリング、ゲッ…

『Inside the Third Reich』Albert Speer その1

ヒトラー政権のもとで軍需相を努め、戦後懲役刑を受けた建築家の自伝。かれは芸術家として異例の待遇を受け、その恩恵を受けつつ間近でヒトラーを観察する機会を得た。 子供時代からの半生が書かれているが、調子は落ち着いており、随所に建築や装飾への言及…

『福島第一原発 真相と展望』アーニー・ガンダーセン

元原発技術者が福島第一原発の状況について説明する本。 著者は大学で原子力工学を学び原子炉設計に携わっていたが、炉の欠陥を訴える内部告発をきっかけに追放され、以後、原発廃止論者となった。 インタビューを並べたもので構成は漫然としているが、原子…

『It Doesn't Take a Hero』Schwarzkopf その2

ノーマン・シュワルツコフは、その後、ウェストポイントでの教官、ペンタゴンでのデスクワーク(とても時間のかかる業務)についた後、大佐となり、アラスカの旅団指揮官となる。 評判の悪かった指揮官は、毎週金曜朝に、全員にマラソンをさせ、砂場で格闘技…

『It Doesn't Take a Hero』Schwarzkopf その1

CENTCOM司令官として湾岸戦争を指揮した人物が、子供時代から陸軍に入り退役するまでを書く自伝。 *** 著者の父は警察署長、軍人で、母は看護師である。 両親の教え……男は女を守らなければならない、嘘をつかない、白人のプロテスタントとして生まれ…

『廃墟のなかのロシア』ソルジェニーツィン

ソ連崩壊後、混乱から立ち直らないロシアについて、『収容所群島』の作者が、どうすればいいかを考える本。 ロシア側が考えるロシア救済策・ナショナリズムは、あまり耳に入ってこないので新鮮に感じた。 明らかに、欧州や合衆国とは異質の思考であり、冷戦…

『南京事件』笠原十九司

本書の目的……東京裁判や南京軍事法廷の判決とは異なる「歴史」として、南京事件の全体像を解明しようと試みる。 1 1937年7月に盧溝橋事件、8月に第2次上海事変が発生し、日中戦争がはじまった。この月、木更津から発進した海軍機により南京渡洋爆撃…

『Rationalism in Politics and Other Essays』Michael Oakeshott その6

◆保守的であること 保守的であることとは、今あるものに満足し、未来のより良き善を求めず、失われた過去を偶像化しない傾向を指す。保守主義は身近なものを信じる。また、変化と革新を好まず、現状維持をよしとする。例え改善が行われる場合でも、それは漸…

『Rationalism in Politics and Other Essays』Michael Oakeshott その5

4 現代政治についての考察 ◆代議制民主主義における大衆 大衆の起源について考える。個人という概念が生まれたのは、14、15世紀のヨーロッパである。人間が共同体の一部にすぎず、個人という意識を持たなかった時代が変わり、自律し、自らの行動と選択…

『Rationalism in Politics and Other Essays』Michael Oakeshott その4

3 ホッブズについて ◆リヴァイアサンについて ホッブズは政治哲学の古典を生み出した。ヨーロッパの思想における3つの伝統とは、理性と自然、意志と人為、合理的意志である。それぞれ、プラトン『国家』、ホッブズ『リヴァイアサン』、ヘーゲル『歴史哲学…

『Rationalism in Politics and Other Essays』Michael Oakeshott その3

2 合理主義の解剖 ◆合理的行為 混乱を呼ぶ「合理的」という語を、特に行為との関連から検討し、その起源や経緯について考える。本章では、合理的行為を望ましいもの、知的な行為として解釈する。 合理主義とは:人間の脳には理性が備わっており、この理性の…

『Rationalism in Politics and Other Essays』Michael Oakeshott その2

◆政治教育 政治は、イデオロギーや原理を原動力とする、組織への参加である。理想や原理原則がなければ、わたしたちの政治的行為は気まぐれな反応に過ぎなくなる。原理原則を持たない人間は政治を担う資格がない。 政治的行為の基礎をなすイデオロギーは、ゼ…

『Rationalism in Politics and Other Essays』Michael Oakeshott その1

イギリスの政治学者オークショットの代表的なエッセイを集めたもの。 近代以降の政治思想を、合理主義という観点から見直す。 伝統や慣習の価値を再検討し、フランス革命やロシア革命のような政治を否定する。オークショットの保守主義は、地道な改善、修正…

『はじめての部落問題』角岡伸彦

自らも部落民出身であるライターが部落問題についてわかりやすく説明する。 *** 部落の起源はかつては江戸時代の政治制度とされていたが現在では否定され、中世から賤民階級の形成が始まっていたという。穢多、非人以外にも無数の被差別身分があり、由来や職…

『Embracing Defeat』John Dower その2

5 犯罪 東京裁判と、各地で行われたB・C級戦犯裁判について。 アジアにおける軍事裁判は特にオランダ、イギリス、フランスが多く実施し、日本兵や朝鮮・台湾出身の兵を処刑した。 東京裁判の特徴…… ・GHQとキーナン判事は天皇免責工作を行った。 ・A…

『Embracing Defeat』John Dower その1

邦訳は『敗北を抱きしめて』。 当時の出版物や新聞記事、証言、またはデータを基に、日本人がどのように終戦と占領を受け入れたかを検討する。 日本人の占領に対する意識は驚くほど多様だった。また、米軍による政治指導者たちの処罰や施政方針は、戦争責任…

『労働法入門』水町勇一郎

各国の労働法は、その国の労働観、宗教観に深く影響されている。 日本の労働法は欧州の考え方と、日本の伝統的な思考とが混ざったものであり、本書はその本質と特徴を明らかにするものである。 労働法の成り立ちから、労働法の枠組み、日本における運用と問…

『事件の核心』グレアム・グリーン

ネタバレ注意 素直で信心深いカトリックの中年男が、不倫にやましさを感じて自殺する話。 警察副署長スコービーの配偶者ルイーズは、植民地の社交クラブで爪はじきにされている。この女は、植民地にやってきた素性の怪しい男ウィルソンと不倫をする。 一方、…

『日中戦争 殲滅戦から消耗戦へ』小林英夫

日中戦争を日本の殲滅戦略(ハードパワー)と中国の消耗戦略(ソフトパワー)との衝突としてとらえ、検討する。その際、2003年公開された憲兵隊の検閲記録を参考とする。 前半は、著者の提唱する枠組みから日中戦争を検討する。 後半は、検閲された通信…

『物語の作り方』ガルシア=マルケス

リョサの「若き小説家に宛てた手紙」とは異なる方法で、物語の創作について考える。 お話をどう語るか 「わたしにとって何より大切なことは、創作のプロセスなんだ」、人に語って聞かせたいという情熱は大きな力をもつが、よくよく考えると何の役にも立たな…

『ホイットマン詩集―対訳』 その2

「ホイットマンは人間の自然な本性(Nature)を尊重する立場から肉体的・物質的なものも霊的なものもすべて等しく重要であると考えていた」 ――And nothing, not God, is greater to one than one's self is, 「また、商売であれ、雇われ仕事であれ、それにた…

『ホイットマン詩集―対訳』 その1

ヘンリー・ミラーの尊敬する作家であるホイットマンの対訳詩集。 岩波文庫版は翻訳と原文とが並んでいるため、理解の助けになる。わたしは10年以上前に読んだので、意味の把握に難があり、文字通り雑然としたメモしか残っていない。しかし、読んでいる最中…

『Eichmann in Jerusalem』Hannah Arendt その2

8 良民の義務 アイヒマンはカントの定言命法を引用し、自らの規律にのっとって行動した、と弁明した。しかし、最終的解決の決定以降はカントに限界を感じ、命令者ヒトラーの原則を自分の原則と考え行動した。 ハンガリーはドイツの干渉を嫌うため、ユダヤ人…

『Eichmann in Jerusalem』Hannah Arendt その1

副題「悪の凡庸性について」 アイヒマン裁判についての記録。 1963年に出版されたこの本は、欧米やイスラエルのユダヤ人から非難を浴びた。 アイヒマンを悪の権化ではなく、凡庸な、思考停止した愚か者と解釈したこと、そのような凡庸な人物が悪をなすこ…

『憲法』芦部信喜 その2

10 経済的自由権 職業選択の自由、居住・移転の自由、財産権を総称していう。精神的自由に比べてより多くの、広範にわたる規制を受ける。 規制が合憲であるかどうかは、「合理性」を基準に審査される。 財産権はフランス人権宣言においては神聖かつ不可侵…

『憲法』芦部信喜 その1

◆感想 憲法には理想・理念が詰め込まれている。しかし、実際にどう運用されているかが問題である。 理念はそれだけでは国家権力を服従させることができない。人力によって目的を達成することが必要である。 平和主義、特に9条については、自衛隊創設時から…

『昭和天皇』古川隆久

目的……昭和天皇について実証的な研究を行い、実像の把握につとめる。 *** 1 思想形成 裕仁は大正天皇の子供として生まれた。学習院で初等教育を終えてからは、東宮御学問所で様々な教科を学んだ。このときにダーウィンの進化論や実証史学に触れており、天皇…

『しろばんば』井上靖

親類の老婆の家に預けられた子供についての話。伊豆半島の田舎が舞台である。 作者の小説には、いじめっ子に対して卑屈にならず勇敢に立ち向かう人物がよく登場する。無口であっても石をもって暴れ出す姿を見て、主人公は自分の卑屈さ、弱さを反省する。 育…

『私にとってオウムとは何だったのか』早川紀代秀

オウム信徒の死刑囚が自分の半生について書いた本。 「正しいことをせよ」という意識の強い一般人が、どのようにしてオウムに入会し、犯罪行為に加担したかが書かれている。 著者は若い時、宗教的なものには違和感を覚えたが、ハルマゲドンやノストラダムス…

『司法官僚』新藤宗幸

日本の司法の問題は消極的である点である。 本来、司法は市民にとって「簡便」な政治や社会を変えていく制度である。しかし現状では、裁判所が守ろうとしているのが政治行政のしくみなのか、裁判所の権威なのか、裁判官のキャリアなのかは不明である。 裁判…

『ワヤンを楽しむ』松本亮

ワヤンはインドネシアの伝統芸能であり村や町で人を集めて開催される。マハーバーラタやラーマーヤナを基にした劇が半日かけて、または夜を徹して行われるため、観客は好きな時に昼寝したり歓談したりする。ガムラン演奏者もうとうとしていることがよくある…

『裁判員の教科書』橋爪大三郎

目的……裁判員を務めるための教科書である。 著者は裁判員制度の問題点を認めつつも、国民による法システムの自己統治を可能とする制度として肯定する立場である。 1 ルール 裁判員裁判は刑事裁判を対象とする。犯罪を裁く法律は刑法の他に「破壊活動防止法…

『検察の正義』郷原信郎

検察官として勤務した経験をもとに、検察の構造、問題点等を説明する。 1 著者は東大理学部を出て三井金属鉱山に入社したのち、官僚的な雰囲気に幻滅し退社、2年かけて司法試験に合格し検事となった。 検察の特殊部として公安部と特捜部があり、著者は数年…

『『コーラン』を読む』井筒俊彦

イスラームの神髄はコーランにあるため、この原典をまず正しく読む姿勢が重要であるという。講演を収録したものらしく、文は平明で読みやすい。 1 コーランはムハンマドの口を借りた神の言葉として成立した。 コーランの語源は「口に出して読む」という言葉…

『バラバ』ラーゲルクヴィスト

スウェーデンの作家によって書かれた本。 新約聖書のバラバを題材とする。バラバはキリストの代わりに恩赦によって釈放された悪党だという。 キリストに代わって磔刑を免れたひげ面の盗賊バラバは、神の子キリストが磔にされたとき不思議な現象を目撃する。…

『神は妄想である』ドーキンス その2

6 道徳の起源は宗教であるといわれるがドーキンスはこれを否定し、道徳は宗教に先行すると主張する。 『利己的な遺伝子』の誤解から、ダーウィン主義は道徳と相容れないと考えられている。利己的なのは遺伝子であって、個体や種ではない。 個人がお互いに利…

『神は妄想である』ドーキンス その1

『利己的な遺伝子』の著者による、書名だけで論争を招きそうな本。 宗教の害を論じ、無神論者であることを正々堂々と主張することを目的とする。宗教が無くとも道徳は成り立つというのがドーキンスの考えである。 特に、宗教的な色彩の強いアメリカ合衆国を…

『言語を生みだす本能』スティーヴン・ピンカー その2

7 ――……人間の音声知覚はピラミッドの下から上へ働くだけでなく、上から下へも働いているといえそうである。……音韻ルール、統語ルール、この世では誰が誰になにをする傾向があるかというステレオタイプな認識、相手がそのときなにをいいそうかという勘にいあ…

『言語を生みだす本能』スティーブン・ピンカー その1

言語を習得する本能について説明する本。著者は特に言語学等の一般向け書籍を多く書いており、本書も文章、構成ともに明快で読みやすい。 1 ヒトの最大の特徴は言語能力である。従来の説や先入見と異なり、著者は、言語は人間の本能に基づく能力であり、文…