うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

本メモ

『昭和天皇独白録』寺崎英成

本書は、敗戦直後に宮内庁職員が天皇からの聞き取りという形式で作成したもので、当時の東京裁判対策(天皇免責対策)と関連がある。 軍に翻弄される、無力な平和主義者の天皇という図像について検討するきっかけとなる本。 昭和天皇と宮内庁の基本的な主張……

『ドクトル・ジバゴ』パステルナーク

ロシア人文学者パステルナークは、海外詩の翻訳者、詩人としても有名とのことである。本作『ドクトル・ジバゴ』はソ連において発禁となり、パステルナークはその後ノーベル文学賞を受賞したがソ連当局の反対により辞退させられた。 物語は映画版とそこまで変…

『Moscow 1941』Rodric Braithwaite その3

工場が閉鎖し、また食料配給も止まったため、労働者たちの不満が蓄積した。市から逃亡しようとする工場長や幹部たちを労働者がとらえ、車両や荷物を破壊し、市内に連れ戻した。 市内の恐慌を知らされたスターリンは外出禁止令を発し、また工場や商店を通常通…

『Moscow 1941』Rodric Braithwaite その2

正規軍に加えて、大量の義勇兵が徴発された。多くの男女学生、農民、映画関係者、文学者たちが義勇兵として戦争に参加した。 しかし、モスクワにおいてはその大多数が志願であり、だれもが前線に行きたがった。 従軍作家シモノフは、前線の様子が、かつての…

『Moscow 1941』Rodric Braithwaite その1

ロシア・ソヴィエトの首都であるモスクワと、その住民、また政治家や軍人を中心に、かれらがいかにドイツ軍の侵略に耐えたかを説明する。 当時のモスクワの様子が細かく書かれており、知らなかった情報が多数含まれていた。 この本は、中国を旅行している最…

『短篇集 死神とのインタヴュー』ノサック

ハンブルク空襲の最中に、若い軍人に助けられた女の話。語り手は、女から軍人本人または軍人の親類ではないかと勘違いされる。 ――大きな激動の時代には、われわれはみんな互いに似通ってくるのだろうか。あるいは、こういう時代には、個々人のもつ考えが壊れ…

『エネルギー問題入門』リチャード・ムラー その2

3 代替エネルギー 太陽、水力、風力、原子力等、それぞれに強力な信奉者がついておりまともな議論は容易ではない。 太陽エネルギーは急速に発展しているが、かぎとなるのは導入コストや維持費、効率である。運用に人件費がかかることから、途上国で発達する…

『エネルギー問題入門』リチャード・ムラー その1

エネルギーに関する正確な知識を得ることにより、正しいエネルギー政策を導くことが重要である。 エネルギーは軍事経済の両面において国家の安全保障の中核に位置する。 また、エネルギーに関する定説や報道は、しばしば実態とかけはなれていることが多いた…

『帰ってきたヒトラー』ティムール・ヴェルメシュ

現代ドイツによみがえったヒトラーは芸人としてテレビに登場し、やがて人気者となる。 ネオナチに襲撃されて以降は、自由の闘士として各政党からもスカウトが殺到し、ヒトラーは自分の政党を新たに立ち上がる。スローガンは「悪いことばかりじゃなかった」。…

『今日われ生きてあり』神坂次郎

特攻隊員の遺書、整備員や周辺住民の手記等をまとめた本。 著者は航空基地の通信員として働いた経験のある作家ということである。 特攻隊員の陰に隠れて、批判から逃れようとする戦争指導者や指揮官の姿勢はよくない。 *** 特攻に志願した者の大半は学徒出陣…

『ソドムの百二十日』サド

フランスの小説家サドによる幻想文学。 本書の構成は以下のとおり。 ・背景 ・登場人物 ・計画 ・訓示 ・日課次元 ・記録 計画によって集められた少年少女は、4人の変態権力者の変態行為の犠牲になる。あわせて、4人の中年女が自分の経験した変態行為を話…

『続・突破者』宮崎学

『突破者』を出版した後の著者の活動について自ら回想する本。 宮崎学は、現代日本をとりまく抽象的な正義を否定する。それは清潔な市民による正義であり、社会から不潔なものを全て抹消しようとする世界観である。 平沼騏一郎が司法官僚の時代、かれは被差…

『外人部隊』フリードリヒ・グラウザー

モロッコ駐留の外人部隊に所属する兵隊たちの話。それぞれ違う国からやってきた隊員たちは、真偽の怪しい自分の経歴について話す。逃げ出した者、高貴な生まれだが没落したもの、社会から外れたものが多数存在する。 部隊では尼僧院での売春が蔓延しており、…

『堕落論・日本文化私観』坂口安吾

評論・エッセイ類を集めた本。 だいぶ昔に一通り読んだが、改めていくつかを読み直した。 ◆小説・文学について 現実の代用としての言葉を否定し、絶対的な言葉こそが芸術となる。言葉は現実の模写や代用品ではない。 ――言葉には言葉の、音には音の、色にはま…

『謀略戦 陸軍登戸研究所』斎藤充功

元職員らの証言を聞き出し全貌を明らかにするという形式をとる。 *** ・登戸研究所は各特務機関や中野学校と密接なつながりがあった。職員の中には、終戦後すぐに行方不明となり、中国人になりすまして生活をしていた者もいたという。 ・特に、米本土に影響…

『誘拐』本田靖春

小原保(こはら たもつ)による村越吉展誘拐殺人について書かれた本。 事件の状況、警察による捜索と取り調べ、被害者と犯人の生い立ちなどを検討していく。文章は落ち着いているが、事件を通して浮かび上がる世の中の特性が細かく書かれている。 犯人の生い…

『パウル・ツェラン詩文集』

代表的な詩とすべての詩論を収録した本。 詩の翻訳はいくつか読んだことがあり、大変印象に残っている。 *** 有名な「死のフーガ」をまた読んだところ、以前よりホロコーストの風景が露骨に表現されているように感じた。 ――彼は口笛を吹いて自分のユダヤ人ど…

『近現代日本を史料で読む』御厨貴

各時代ごとの政治家、官僚、軍人等の日記を紹介する。 1つ1つの章は短く、各歴史的人物とその日記のガイドのようなものである。 日記は歴史的事件から間をおかずに書かれるため、改変の度合いが少なく、当時の状況を細部まで知ることができる。 一方で、記…

『千日の旅』石上玄一郎

石上玄一郎(いしがみ げんいちろう)(1910-2009)は札幌出身、東北で育った小説家である。 この人物を知ったのは、田中清玄が自伝のなかで、かれが尊敬すべき中学の同級生である、と言及していたからである。 作品のほとんどは、仏教的な世界観の影響を受…

『陸軍登戸研究所の真実』伴繁雄 その2

植物、作物に対する病原菌兵器の開発が行われ、大陸で実験された。しかし結果は不明確である。 風船爆弾に牛の病原菌兵器を搭載し米本土を攻撃する計画もあったが、中止になった。 電波兵器(1科) 怪力光線、殺人光線ともいわれる「く」号は、怪力電波によ…

『陸軍登戸研究所の真実』伴繁雄 その1

陸軍登戸研究所は川崎市生田に1939年設立された陸軍所管の研究機関であり、陸軍中野学校、関東軍情報部、特務機関等と連携して、生物化学兵器、電波兵器、風船爆弾、中国紙幣の偽札など様々な謀略戦兵器を開発した。 本書は創設から研究所及び中野学校等…

『貧しき女』レオン・ブロワ

レオン・ブロワ(Leon Bloy)(1846-1917)はフランスの小説家・エッセイストで、同時代のユーゴー、モーパッサン、ゾラなどを敵とみなして攻撃していたことで有名である。 敬虔なカトリック作家といわれるが、慈悲深い説教のようなイメージを期待…

『ペリリュー・沖縄戦記』ユージン・スレッジ その2

もっとも精神を痛めつける武器は砲弾で、特に無防備な状態で砲撃にさらされることは、ベテラン兵士であっても耐えがたいものだったという。 海兵隊は仲間の絆を重視し、実際、信頼関係があったからこそ力を発揮できたと著者は回想する。 ――珊瑚礁岩の染みを…

『ペリリュー・沖縄戦記』ユージン・スレッジ その1

海兵隊に志願し、パラオ諸島ペリリュー島の戦い、沖縄戦に参加した兵隊の回想録。太平洋戦争の様子が細かく書かれており、兵隊たちの悲惨な状況を知ることができる。 構成は次のとおり。 ・志願とブートキャンプ ・ペリリュー島の戦い ・沖縄戦 著者は戦争に…

『幕末の天皇』藤田覚 その2

4 鎖国攘夷主義の天皇 孝明天皇即位の時代には、外国船が次々に訪れ開国と通商を要求していた(1844年以降)。 幕府はアヘン戦争の二の舞を避けるために、朝廷や諸国大名に助言を求めた。 1853年のペリー来航後、幕府は日米和親条約、日英和親条約…

『幕末の天皇』藤田覚 その1

本書の趣旨:光格天皇は天皇の権威復興に力を注いだ。続く孝明天皇は幕府の方針に反対し、鎖国攘夷を強硬に主張した。その後主張を翻すが、過激派を制御できず、結果的に民族主義を高揚させ、討幕運動を巻き起こした。 明治天皇は新たに王政復古の下で政治を…

『生物兵器』ケン・アリベック

ソ連による生物兵器開発の概要と、崩壊後、一連の技術が北朝鮮、イラン、過激派等に流出していった疑惑についての本。 著者は元ソ連生物兵器製造組織最高責任者であり、アメリカに亡命後この本を出版した。 生物兵器の危険は間近にせまっている。病原体は安…

『阿片常用者の告白』ド・クインシー

どのようにして阿片中毒者になったか、また阿片の服用についてを説明する本。 著者のトマス・ド・クインシーは19世紀前半に活動したマンチェスター出身の評論家で、麻薬を扱う本書はボードレールやベルリオーズにも影響を与えた。 本書に登場する阿片チン…

『たった一人の30年戦争』小野田寛郎

新聞で連載されていた文章を集めたもの。 作者は徴兵後、予備士官学校を卒業、中国語等の語学力を買われ中野学校二俣分校に入校しゲリコマ戦術を学ぶ。終戦間近にフィリピンのルバング島においてゲリラ戦の指導を命じられた。このときの命令が、絶対に玉砕せ…

『茶道の美学』田中仙翁

茶道における美とは何かという原理を考える本。 冒頭から床の間や内装の細かい美的感覚についての薀蓄が始まる。大まかな歴史に沿って説明されてはいるが、茶道知識のまったくない人間には大変読みにくい。 *** 1 床の間、土壁、茶器を手に取ったときの感触…

『ヒンドゥー教』森本達雄 その2

*** インドの浄・不浄観には、日本をはじめとする他の文化と共通する点もある。 ヒンドゥー教は死、血、屍を特に忌み嫌う。女性に対する蔑視は、生理、月経、出産等の血を伴う現象にも由来するという。 インドにおいて清浄とされるのは水、火、クシャ草、牛…

『ヒンドゥー教』森本達雄 その1

ヒンドゥー教について説明する本であり、素人にもわかりやすかった。 ヒンドゥー教は一神教や仏教から見ても異質な面がある。しかし、ヒンドゥーの神々、儀礼、思想等は、日本にも受け継がれている。 七福神の半数はヒンドゥーの神々由来であり、輪廻(サン…

『茶道の歴史』桑田忠親

茶道が時代とともに変化してきた歴史を解説する。 著者は、村田珠光や武野紹鴎、千利休が打ち立てた茶の精神に価値を置く。すなわち、万人を救済する仏の精神に基づき、身分の分け隔てなく茶の道を説くこと、客をもてなす精神をもっとも重要であると考えるこ…

『健康帝国ナチス』ロバート・N・プロクター その2

5 ヒトラーはたばことアルコールを拒否し、菜食主義に努めた。ヒムラー、ルドルフ・ヘスも菜食主義者だった。ヒトラー個人の嗜好と党の方針によって、肉食の規制、自然食の推進、人工着色物の規制といった政策がとられた。 また、ドイツ国民がビールにあま…

『健康帝国ナチス』ロバート・N・プロクター その1

原題は「ナチの、ガンとの戦争」The Nazi War on Cancer ナチ党政権時代の医療、健康、福祉政策を検討し、さらに政治と科学の関わりについて考える本。 本書が題材にするのは、断種や人体実験、安楽死等のおぞましい医学ではなく、現代の価値観とも類似して…

『1984』George Orwell

「ビッグ・ブラザー」率いる政府によってコントロールされた全体主義社会を描くディストピア文学。ザミャーチン『われら』等とともに、この種の物語のプロトタイプとなった本である。 (1)窓のない、塔のような建物の中に浮かび上がる「真理省」その他の省…

『潜入工作員』アーロン・コーエン

イスラエル対テロ特殊部隊工作員の自叙伝。 IDF(Israel Defense force)とその特殊部隊だけでなく、イスラエル社会やユダヤ人、テロリズム等についても書かれており、対テロ政策や軍事政策について考えるきっかけになる。 *** 著者は純粋なイスラエル人…

『アウステルリッツ』ゼーバルト

ジャック・アウステルリッツという建築研究者との交流について。 アウステルリッツは、ヨーロッパ各地の建築や風景についてコメントしつつ、やがて収容所に連れていかれた母親の思い出を語る。 本全体が人物の回想となっており、茫漠とした印象を受ける。 ベ…

『全貌ウィキリークス』 その2

6 アメリカ外交公電が公開され、一般には秘匿されていた各国の政治的方針、取引、また米外務省職員による各国首脳の悪口等が曝露された。 また、ヒラリー・クリントンが国連や経済会議の場で盗聴、身辺調査をするよう指令を出していたことも明らかになった…

『全貌ウィキリークス』 その1

内部告発サイトであるウィキリークスと、その創設者ジュリアン・アサンジについての本。 ウィキリークスはサイバー空間におけるセキュリティに対しても影響を与えた。 *** ジュリアン・アサンジの方針 本書から読み取れるのは、アサンジが技術者であるととも…

『現代アラブの社会思想』池内恵

アラブ世界に共通するアラブ思想の袋小路について。 1967年、第3次中東戦争の敗北により、パレスチナがイスラエルに占領された。 以後、マルクス主義過激派とイスラーム主義が勃興し、双方ともテロと暴力の温床となった。 現代のイスラーム主義は、終末…

『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア

タイムスリップ、宇宙人、架空の作家といった道具を使い、第二次大戦における経験を伝える物語。 主人公は自分の半生を次々に移動しながら、ヨーロッパで捕虜となり、ドレスデン空襲を目撃した思い出を語る。 戦時中、人びとはみじめに死んだり、こっけいに…

『暴露:スノーデンが私に託したファイル』グレン・グリーンウォルド その2

――しかし、社会の自由を計るほんとうの尺度は、その社会が反対派やマイノリティをどう扱っているかということにあるのであって、「善良な」信奉者をどう扱っているのかということにあるのではない。……人はただ国家の監視に怯えたくないからといって、権力者…

『暴露:スノーデンが私に託したファイル』グレン・グリーンウォルド その1

元NSA(合衆国国家安全保障局)職員のスノーデンが、NSAによる違法な国民監視活動を告発する。 現行憲法は国民のプライバシーを保障しているが、NSAはこれに違反した行為を秘密裏に実施していた。 建前上は、外国諜報活動監視裁判所の許可を得た対…

『エル・アレフ』ボルヘス

歴史、神話、アラビアの哲学や神学を題材にしたボルヘスの短編集。 古代ローマ、中世と舞台は様々である。「円環」と紹介されている通り、無限、時間の繰り返し、ループを適用された話が多い。 「不死の人」は、古代の旅人が不死の人びとを発見し、自らも不…

『ルポ 貧困大国アメリカ2』堤未果

オバマが大統領となった時期に出た本。 読んだ印象では前作以上に感情的な本で、アメリカの悲惨な実態が列挙される。 全く知らなかった問題もあるので参考にはなる。 1 公教育 アメリカにおける大学の学費は70年代から上昇していき、現在は大半の学生がロ…

『捜査心理学』渡辺昭一

警察庁の付属機関である科学警察研究所犯罪行動科学部の成果をまとめた本。捜査心理学、行動科学の基礎的な入門書だという。 *** 序章 犯罪捜査は、情報収集、捜査推論、捜査活動実施からなる。犯罪捜査を支援するために、近年、捜査心理学の重要性は高まっ…

『ブロディーの報告書』ボルヘス

ボルヘスの晩年の短編集。 『伝奇集』のなかの「南部」を連想させる、ガウチョや無法者たちの物語が多い。 なぜ日本語がとても読みにくいのかがわからなかった。 「じゃま者」 仲の良い無法者兄弟の話。 「卑劣な男」 無法者と、かれに気に入られた少年との…

『Ordinary Men』Christopher R Browning その3

14 ポーランド・ルブリン地区のゲットーが解体され、ユダヤ人の大半がトレブリンカに移送されてからは、森や集落にひそむ「ユダヤ人狩り」が大隊の業務となった。かれらは再びユダヤ人個人と対面しての殺人行為をしなければならなかった。 15 1943年…

『Ordinary Men』Christopher R Browning その2

6 ◆ラインハルト作戦 1941年、ヒムラーはロシア・ユダヤ人と同様、ヨーロッパのユダヤ人も絶滅させるよう指示した。射殺は現場隊員の精神的負担が大きいため、新しい方法として絶滅収容所が考案された。 オディロ・グロボクニクはオーストリア出身の親…