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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『1984』George Orwell

「ビッグ・ブラザー」率いる政府によってコントロールされた全体主義社会を描くディストピア文学。ザミャーチン『われら』等とともに、この種の物語のプロトタイプとなった本である。 (1)窓のない、塔のような建物の中に浮かび上がる「真理省」その他の省…

『アウステルリッツ』ゼーバルト

ジャック・アウステルリッツという建築研究者との交流について。 アウステルリッツは、ヨーロッパ各地の建築や風景についてコメントしつつ、やがて収容所に連れていかれた母親の思い出を語る。 本全体が人物の回想となっており、茫漠とした印象を受ける。 ベ…

『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア

タイムスリップ、宇宙人、架空の作家といった道具を使い、第二次大戦における経験を伝える物語。 主人公は自分の半生を次々に移動しながら、ヨーロッパで捕虜となり、ドレスデン空襲を目撃した思い出を語る。 戦時中、人びとはみじめに死んだり、こっけいに…

『エル・アレフ』ボルヘス

歴史、神話、アラビアの哲学や神学を題材にしたボルヘスの短編集。 古代ローマ、中世と舞台は様々である。「円環」と紹介されている通り、無限、時間の繰り返し、ループを適用された話が多い。 「不死の人」は、古代の旅人が不死の人びとを発見し、自らも不…

『ブロディーの報告書』ボルヘス

ボルヘスの晩年の短編集。 『伝奇集』のなかの「南部」を連想させる、ガウチョや無法者たちの物語が多い。 なぜ日本語がとても読みにくいのかがわからなかった。 「じゃま者」 仲の良い無法者兄弟の話。 「卑劣な男」 無法者と、かれに気に入られた少年との…

『事件の核心』グレアム・グリーン

ネタバレ注意 素直で信心深いカトリックの中年男が、不倫にやましさを感じて自殺する話。 警察副署長スコービーの配偶者ルイーズは、植民地の社交クラブで爪はじきにされている。この女は、植民地にやってきた素性の怪しい男ウィルソンと不倫をする。 一方、…

『物語の作り方』ガルシア=マルケス

リョサの「若き小説家に宛てた手紙」とは異なる方法で、物語の創作について考える。 お話をどう語るか 「わたしにとって何より大切なことは、創作のプロセスなんだ」、人に語って聞かせたいという情熱は大きな力をもつが、よくよく考えると何の役にも立たな…

『ホイットマン詩集―対訳』 その2

「ホイットマンは人間の自然な本性(Nature)を尊重する立場から肉体的・物質的なものも霊的なものもすべて等しく重要であると考えていた」 ――And nothing, not God, is greater to one than one's self is, 「また、商売であれ、雇われ仕事であれ、それにた…

『ホイットマン詩集―対訳』 その1

ヘンリー・ミラーの尊敬する作家であるホイットマンの対訳詩集。 岩波文庫版は翻訳と原文とが並んでいるため、理解の助けになる。わたしは10年以上前に読んだので、意味の把握に難があり、文字通り雑然としたメモしか残っていない。しかし、読んでいる最中…

『バラバ』ラーゲルクヴィスト

スウェーデンの作家によって書かれた本。 新約聖書のバラバを題材とする。バラバはキリストの代わりに恩赦によって釈放された悪党だという。 キリストに代わって磔刑を免れたひげ面の盗賊バラバは、神の子キリストが磔にされたとき不思議な現象を目撃する。…

『怪盗紳士ルパン』モーリス・ルブラン

過去を捨て、他人に成りすます泥棒の話。1つ1つの話は短く、語り手が話すような調子で書かれている。この語り手がルパンであることが多い。または、ルパンと対談して事件について思い返している。 ルパンの特技は他人になりすますことであり、登場人物のだ…

『オデュッセイア』ホメロス

トロイア戦争の英雄オデュッセウスが、知恵を使い災難をくぐり抜けて無事家に帰るための物語。 叙述よりも、オデュッセウスや神々たちの会話の方が分量が多い。また、物語も人物の報告や説話の形をとおして伝えられる。 1 オデュッセウスの息子テレマコスは…

『波の上を駆ける女』アレクサンドル・グリーン

ロシアの幻想文学作家アレクサンドル・グリーン(1880ー1932)の代表作。 資産をもつ男ハーヴェイは、発熱のために汽車の旅を中断し静かな港町に滞在する。海岸沿いの家を借り、医者のフィラートルらと交流する。ある日ハーヴェイは「波の上を駆ける…

『プルースト文芸評論』

『失われた時をもとめて』の作者による文芸評論。たまたま古本屋で買ったがおもしろかった。 フローベールの文体は特殊である。線過去、点過去の用法に独自性があり、また「そして」を意外な場所で使う。多様な動詞をもちいる一方、「持つ」で済ませたりしよ…

『大地』パール・バック

中国人家族の数世代について書かれた本。 歴史と世の中の動きに対して、個人が抵抗するのは大変困難である。 具体的な年代や、場所は曖昧にされており、社会情勢の叙述や歴史的説明もない。あくまで王龍たちの生活に視点を定めて物語を進める。文が表現する…

『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ

少年バスチアンは本屋で万引きした本『はてしない物語』の中に入りこんでしまう。 本の中にはファンタージェンという国があり、少年は能力を持った少年に変身して活躍する。 彼はファンタージェンを統べる女王幼心の君に名前をつけることで、ファンタージェ…

『誘拐』ガルシア=マルケス

コロンビアの麻薬商人パブロ・エスコバルによる誘拐取引と、かれが政府に投降するまでの話。 ほとんど事実を列挙することにより作品が成り立っているが、一部、修辞的な文章がある。 エスコバルはコカイン取引によって財をなし、かれの率いる麻薬組織は大き…

『審判』カフカ

中学校のときに読んだが再び読んだ。『城』は退屈で投げたがこちらは読みきった記憶がある。 ヨーゼフ・Kが突然訴訟を起こされてから、2人の男に連行されて処刑されるまでの話。何か理不尽な理由で逮捕され、最後まで理解できずに処刑されるという話にはイ…

『神を見た犬』ブッツァーティ

ブッツァーティはイタリアの小説家で、他に『タタール人の砂漠』というおもしろい本を書いている。 短い話を寄せ集めたもの。文はわかりやすく、昔話に似た印象を受ける。キリスト教を題材にしたものや、日常の出来事を拡大させたものが含まれる。いくつか、…

『小海永二翻訳選集2 アンリ・ミショー集』

みじめな奇蹟 メスカリン(ペヨトルサボテンに含まれる幻覚剤)服用時の記録。 幻覚作用が発生したときのメモ、印象などが書かれている。 漠然とした気分が連なっておりすべて読み通すのは難しい。 荒れ騒ぐ無限 前作と同じ、麻薬服用報告が8つ含まれる。麻…

『小海永二翻訳選集1 アンリ・ミショー集』

小海永二によるミショーの翻訳を集めたもの。 *** 「わが領土」 題目ごとに、架空の風土、架空の動物についての思い出が書かれる。 ――重さが、ペストが、腐敗が、 壊疽が、殺戮が、併呑が、 ねばねばしたものが、消滅したものが、悪臭を発するものが、 その…

『死の家の記録』ドストエフスキー

帝政ロシアの監獄に入れられた人物の回想という形式をとる本。収容所を書いたフィクションはソルジェニーツィンも制作しているが、ロシアにおいてはこのような施設が連綿と受け継がれてきたということがわかる。 囚人たちの性質や、日日の生活を説明する。以…

『対極』クービン

架空の人工都市を題材にした物語。 似たような幻想的な作品ではマルセル・ブリヨンやジュリアン・グラック、ユンガー『ヘリオーポリス』が思い浮かぶが、本書の結末は特に強烈である。 翻訳は『対極』、『裏面』と2種類あり、わたしが読んだのは『対極』だっ…

『幻滅』バルザック

パリの出版業界を舞台にした小説。 詩人を目指すリュシアンは片田舎アングレームからパリに上京する。 著者によれば、田舎の社会は閉鎖的で、人のうわさしか話題がなく、人びとの心性は卑しくてくだらない。しかし、リュシアンが目指したパリはこれに輪をか…

『悪童日記』アゴタ・クリストフ

――感情を定義する言葉は非常に漠然としている。その種の言葉の使用は避け、物象や人間や自分自身の描写、つまり事実の忠実な描写だけにとどめたほうがよい。 大きな町から疎開してきた双子の兄弟の話。戦時下の暮らしを、感傷を排して書いてはいるが、所々に…

『パースの城』ブラウリオ・アレナス

夢の世界を題材にしたフィクション。作者はチリ生まれで、シュルレアリスムの作品を制作したという。 チリのある町に住む男ダゴベルトは、子供の時に好きだった女の子が死んだことを新聞記事で知る。ダゴベルトは悲しくなり、長椅子に座ると夢うつつの状態に…

『プラトーノフ作品集』

『土台穴』を書いたロシアの小説家プラトーノフの短篇を集めた本。荒涼とした土地で生きる人びとに注目する。 「粘土砂漠(タクィル)」 ――そしてこれから向こう百年間この場所は無人の地となることだろう。なぜなら、砂漠の民は噂と長期にわたる記憶とで生…

『ファンタジーの文法―物語創作法入門』ジャンニ・ロダーリ

作者はイタリアの詩人・童話作家であり、『2度生きたランベルト』等の作品がある。 彼は「創造力(イマジネーション)」が大切であると言う。ノヴァーリスの言葉……「論理学があるようにファンタジー学があるならば、創作の方法が見出せるだろう」。 この本…

『ジョウゼフ・コンラッド書簡選集』

ジョウゼフ・コンラッドはポーランド生まれのイギリス人作家で、『闇の奥』、『ノストローモ』、『ロード・ジム』『西欧人の眼に』等の海洋小説、スパイ小説を製作した。日本では古くから取り上げられ、ほとんどの本は翻訳されている。 コンラッドの小説の印…

『白鯨』ハーマン・メルヴィル

ピークォド号で唯一生き残った乗組員イシュメイルの視点を通して、白鯨との対決と、狂人エイハブに巻き込まれる舟の様子を書く。不気味な存在である白鯨に挑む偏執的な老人の物語である。 読んでからだいぶ経ち、散漫なメモしか残っていないが、エイハブ船長…

『わが読書』ヘンリー・ミラー

ヘンリー・ミラーの書物についての見解、読書遍歴。著者にとっては本を読むことが大きな意味を持っていた。また、当時の現代社会(1920~30年代?)に対して強い批判を行っている。人間は成長するにつれて委縮していく。 少年の選択――軍隊へ入るか、浮…

『土台穴』プラトーノフ

この本は住居群の建設と、コルホーズの建設という2つの場面に分かれる。住居群の建設では、人びとは昆虫のように働かされ、夢の住宅建設のために酷使される。コルホーズでは、かれらは富農を見つけては家から追いたて、筏に乗せてどこかに流してしまう。 コ…

『ダブリンの市民』ジョイス

――自分の魂は大勢の死者たちの群がるあの領域に近づいている。その気まぐれに揺らめいている存在を意識したが、それを理解することはできない。自分の正体も灰色の得体の知れない世界に消えうせていこうとしている。これらの死者たちがかつて築きあげ、暮ら…

『アルトー後期集成1』アントナン・アルトー

アントナン・アルトーはフランスの演劇・映画関係者、作家で、「残酷劇」を提唱するなどの業績を残している。この翻訳と『神の裁きと決別するため』しか読んだことはないが、奇妙な文章を書くのでよく記憶に残る。 「タラウマラ」、「アルトー・ル・モモ」、…

『ヘリオガバルスまたは戴冠せるアナーキスト』アントナン・アルトー

特殊皇帝ヘリオガバルスの家系から、かれの生涯までをえがく本。ヘリオガバルスの母たちの異様な生態、当時の祭典、習俗、また、皇帝が即位してから、乱行をはたらき、叛乱によって殺害されるまでを題材にする。 文体は、奇怪な事物や、皇帝のうごきを書いて…

『狼の太陽』マンディアルグ

非現実的で、具体的な言葉の本。問題ある人間がつぶやく形式が多い。物語は伝聞や、時間の転々とするつくりなので、内容を把握しにくいものもある。 「小さな戦士」は、小人の女戦士をつかまえるが逃げられてしまうというみじかい物語。 「赤いパン」では、…

『The Wonderful Adventures of Nils』Selma Lagerlof

『ニルスのふしぎな旅』の原作の翻訳版。 未熟でひねくれた少年ニルスが、家の小人にいたずらしたために、自分も小人にすがたを変えられてしまう。ニルスは家畜に助けを乞うが、逆に襲われる。動物たちは、ニルスによっていじめられ、いたずらされたことを覚…

『虎よ、虎よ!』ベスター

主人公に勢いのあるSF小説。ジョウントという瞬間移動を身につけた人類たちの未来世界が舞台である。 ガリヴァー・フォイルは宇宙船で遭難し、救難信号を射出する。しかし、通りかかった宇宙船ヴォーガは信号を無視し、フォイルを見捨てる。ここで、フォイル…

『生誕の災厄』シオラン

ルーマニア人の随筆家。暗い雰囲気の断章が続く。 作者は、生まれてきたことが不幸なことだとくりかえし書く。かれの脳みそでは、不幸と呪いはわけられている。 ――不幸は受け身の、忍従の状態だが、呪いは逆方向ながらある選抜がおこなわれたことをしめし、…

『パリ日記』エルンスト・ユンガー

1941年から1944年まで、ユンガーはパリ占領軍司令部において勤務した。日記はその間書かれたもので、演習時や、コーカサス展開時をのぞいて、ほぼ毎日書き続けられた。 日記の話題……パリの、育ちのよさそうな人びととの交流、ドイツ将校との話、爆撃…

『世界終末戦争』リョサ

ブラジルで発生した農民の反乱を題材にした話。 ブラジル北部にバイア州があり、かつては帝国の中心だったが、経済産業の変化によってさびれてしまった。バイアの奥地セルタンウで飢饉がおこり、これにともなって、信仰と、打倒共和国を主張する聖人、コンセ…

『ネルヴァル全集5』

1800年代のはじめに生まれたフランス詩人・劇作家で、デュマと仲がよかった。社会的にもまっとうな地位をもち、不遇だったわけではないらしいが、発狂して首をつって死んだと書いてある。 「ローレライ」はドイツ旅行の記録、「十月の夜」はフランスの地…

『闇の子午線パウル・ツェラン』生野幸吉

パウル・ツェランの詩についての評論だが、読むまでツェランの詩集だとおもっていた。この作者の詩は1つ1つ強く印象に残るが、著者の難しい解説は理解しきれなかった。 この作者はドイツ生まれで、強制収容所に入れられ、戦後、創作活動を行ったという。ホ…

『スワン家のほうへ』プルースト

有名な作品だがまだ続きが読めずに停止している。 ――……将来書くべき主題を探し求めようとすると才能がないと感じられ、頭の中に真っ暗な穴が穿たれるようになるのも、もしかしたら実体のない幻影にすぎず……。 ――すると、このような文学的関心から離れ、それ…

『Mystery and Manners』Flannery O'Connor

オコナーの評論、講演等をまとめた本で、おもに制作、フィクションについて書いている。『秘儀と習俗』という翻訳が出ている。 アメリカ人女性の作家で、主に短篇を書いた。その他奇妙なキリストの姿をモチーフにした『賢い血』等の著作がある。 オコナーは…

『不穏の書、断章』フェルナンド・ペソア

ポルトガルの詩人の本。 前半がペソアのさまざまな原稿や書簡からの断章、後半が不穏の書である。これはベルナルド・ソアレスというペソアの別人格によって書かれた。 「詩人とはふりをすることだ」という聞き覚えのある言葉。感情を感じたふりをする、そう…

『砂漠の惑星』スタニスワフ・レム

ソラリスと並ぶ三部作だとのこと。 惑星レギスで消息不明になったコンドル号探索のため、ホルパフ隊長とロハンらの乗り込む無敵号は砂漠の大地に着陸する。 『ソラリス』では知性をもつ海が相手だったが、本書は自在に動く鉄の雲と遭遇する。この雲は円盤飛…

『キャッチ=22』ジョーゼフ・ヘラー

奇妙な登場人物と不条理な軍隊を題材にした戦争小説。戦争を題材にしたフィクションの中でも記憶に残る作の1つである。 兵隊たちは責任出撃回数を終えても帰国できないため必死で任務をさぼろうと奮闘する。一方、異常な指揮官たちはかれらに非人間的な爆撃…

『山椒魚戦争』カレル・チャペック

山椒魚が人類に代わって地上の支配者になるという話。 作家は自分が生きている時代が気にかかってしょうがない。よって山椒魚を主人公にしたこのファンタジーは、現実を映す鏡として書かれたものである。両生類ではなくサルが生物の覇者でなくてはいけない、…

『アシェンデン』サマセット・モーム

大戦中、情報員としても働いたモームが体験をもとにつくった短編集。 英国の作家アシェンデンはR大佐の依頼に応じ、スイスで諜報活動を行う。 連作形式になっており、それぞれアシェンデンが出会う人物に焦点をあてる。挿話群に通ずるのは英国人としてのア…