うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

◆歴史の本

『日中アヘン戦争』江口圭一 その1

日中戦争期、日本は利益獲得を目的として、蒙彊政権、満州国、朝鮮等で麻薬の生産と供給を行った。 *** 蒙古聯合自治政府は、蒙彊政権とも呼ばれ、1937年に日本によって内蒙古に作られた傀儡政府である。この政府は興亜院の政策に従ってアヘンの生産と販…

『仏教百話』増谷文雄

――およそ百篇の物語をつらねて、仏教のアウトラインを描き出そうとするのが、この本の企画である。 100話は仏陀の生涯を分割したもので、5つに区分けされる。 1 生涯の前半……出家~ 2 教説:実践的なもの 3 教説:思想的原理 4 生涯の後半から死まで…

『大江戸死体考』氏家幹人

江戸時代、人びとと屍体とが近い距離にあった。本書は、特に試し斬りの専門芸者である山田家を中心に、屍体にまつわる制度や風習を紹介する。 1 ・江戸では身投げが多く水死体がひんぱんに浮かんだ。数が多いので、汐入で発見された屍体は海に突き流せと通…

『ハッカーズ』スティーブン・レビー

コンピュータ黎明期の歴史と、「ハッカーズ」、プログラマーたちに焦点を当てた本。 コンピュータやインターネット、ゲームの歴史を網羅しているのではなく、当時活躍したハッカーたちの倫理と、その倫理が組織化、商業化によって失われていく過程を描いてい…

『日中十五年戦争史』大杉一雄

著者は旭川の陸軍で終戦を迎え、日本開発銀行で勤務した民間人の歴史家であり、学者ではない。 日中戦争当事者の回顧録や、中国側の記録、戦史叢書や記録を参考に、特に日中戦争本格化までの経緯を分析する。 *** 日中戦争を段階的に区分し、それぞれのフェ…

『プーチンと甦るロシア』シュテュルマー その2

6 軍 ・ロシア軍は予算不足と練度不足、装備の老朽化に苦しんでいる。 ・2000年の潜水艦クルスク沈没は、ロシア軍の機能不全、政府の危機管理意識の欠如を明らかにした。 ・2000年代から、ロシア軍はハイテク化、精鋭化を目指し改革を進めた。いず…

『プーチンと甦るロシア』シュテュルマー その1

ロシアはいまも国際社会の鍵となる主体である。ロシアがアメリカ、EUと対立するのか、それとも共存していくのか、また中国とどのように関わっていくのかは、(特に本書刊行時点では)まだ明らかではない。 ロシアは問題を多く抱えた国である。外交姿勢はア…

『アメリカの秘密戦争』セイモア・ハーシュ その2

4 イラク戦争を主導した「対イラク・タカ派」について。 ネオコンの代表的な論者リチャード・パールは、大統領直属のシンクタンクに所属しイラク戦争を進言したが、自分の経営する投資会社と、軍需産業との関係をメディアに指摘され、公職を辞任した。 その…

『アメリカの秘密戦争』セイモア・ハーシュ その1

副題:9.11からアブグレイブへの道 *** 著者は、まえがきによればボブ・ウッドワードと並ぶ調査報道の第一人者である。 ――わたしは昔ながらの左翼、過激派、人種差別主義者などを取材してまわろうとは思わない……昔気質の善良な民主主義者を取材する。政…

『特攻』森本忠夫 その2

3 1944年6月、マリアナ沖海戦(「あ」号作戦)失敗によって、特攻兵器……回天、震洋、海龍、震海を使う方針が固まっていった。 海軍においては、零戦等の航空特攻、回天、震洋、桜花など、いずれも、現場の下級指揮官からの熱望という、ボトム・アップ…

『特攻』森本忠夫 その1

本書の冒頭から: 特攻作戦は、西欧的な価値観からすると異様な自殺攻撃である。 わたしたちは、当時の価値観がどのように特攻を正当化したかについて、また軍がどのような意思決定を経て、この異様な作戦を実行したかについて、知らなければならない。 ◆感…

『捏造された聖書』バート・アーマン その2

3 聖書の写本が作られていく歴史を説明する。 素人書記の時代から、ローマ帝国の国教化により、専門的な書記の利用と施設の整備が進められた。4世紀から15世紀、活版印刷が発明されるまでの時代の写本を「ビザンティン写本」と呼ぶ。 比較的正確だが、か…

『捏造された聖書』バート・アーマン その1

◆感想 著者は専門教育を受けた神学者だが、視点はわたしのような非信徒に近く、違和感なく受け入れられるものである。 著者は、聖書を無謬の「神の言葉」と考える主義から、本文研究を経て、人間的な書物とみなす思想にいたった。 神の言葉の改変については…

『アメリカ精神の源』ハロラン芙美子

カトリックである著者が、アメリカ人の宗教と精神について考える本。 著者は長崎出身で、米国で長く勤務し、現在はハワイ在住という。 合衆国は歴史の若い国ともいわれるが、移民たちの信仰はユダヤ、ローマまでたどることができ、またほぼすべてのアメリカ…

『The Occupation』Patrick Cockburn その2

◆反政府勢力、シーア派 フセインを支持する者はほとんどおらず、政権はすぐに崩壊した。しかし、連合軍による占領が始まるとすぐに、反政府勢力が勃興した。 フセイン政権下で抑圧されていたシーア派もまた占領軍に対し攻撃を開始し、またシーア派同士でも紛…

『The Occupation』Patrick Cockburn その1

副題は"War and resistance in Iraq". 数十年にわたってイラクの取材を続けてきた報道記者コバーンが、イラク戦争後の米軍占領の実態を伝える。 現地からの報告により米国、米軍のお粗末な政策と悲惨なイラクの様子を明らかにする。 イラクの民主化と政権移…

『公安警察の手口』鈴木邦男

趣旨: 公安警察は極めて政治的な存在であり、政府や体制に批判的な人間、危害を及ぼしそうな人間を監視する。公安は市民の自由をおびやかしており、またそれに対する批判の声も聞こえない。 著者は新右翼の活動家で公安の監視対象となっている。 本書では実…

『ザ・マーセナリー』フランク・キャンパー

著者は元米軍人で、傭兵学校を開設したが、本書出版時は自動車爆弾による殺人未遂で服役中だったという。 淡々とした文体で、著者の心情やコメントは時折挿入される程度である。 ベトナム派遣後、FBIの工作員、サウジアラビア軍の支援、傭兵学校、中南米…

『ナチスの知識人部隊』クリスティアン・アングラオ その2

3 ナチズムと暴力 戦争がはじまると、東方をゲルマン化する計画が始動した。 国家保安本部、ドイツ民族性強化全国委員部、東部省、人種・移住本部、ドイツ民族対策本部が、それぞれ協力しゲルマン化政策に参加した。 ・東方において、帝国の外に居住する「…

『ナチスの知識人部隊』クリスティアン・アングラオ その1

本書において、著者は、ナチス親衛隊の情報部(SD, Sicherheitsdienst)に所属したアカデミカー(大卒)の親衛隊員たちの心理や背景を理解しようとする。 かれらは情報部においてドグマ形成、政治的監視、国内外の情報収集を行った。また、東部出動に派遣…

『身分差別社会の真実』斎藤洋一 大石慎三郎

本書は中世から江戸にかけての「えた・ひにん」等の被差別身分について説明する。 ◆感想 江戸時代は身分制の下に成り立っていたが、特に被差別民については、発祥は中世までたどることができるという。 被差別民をつくりだす社会を維持してきたのは、政治権…

『ガンジー自伝』

ガンジーが、自分の半生を淡々と記述する本。 ◆メモ ガンジーはインド人の権利のために活動した。非殺生(アヒンサー)の教えは、実現は困難だが尊いものであると理解できる。 一方で、菜食主義、禁欲、牛乳の禁止を実践することは、誰でもできるわけではな…

『日本海軍の終戦工作』纐纈厚 その2

4 東条内閣打倒工作 東条首班指名の理由は以下のとおり。 ・木戸幸一が、開戦首相を非皇族にすることで、皇族に責任が及ぶことを回避しようとした。 ・東条が軍の強硬派を抑えることを期待した。 ・天皇が東条を信頼していた。 ――……近衛は開戦後において一…

『日本海軍の終戦工作』纐纈厚 その1

海軍の政治的役割を再検討し、特に海軍への過大評価、善玉評価を見直す。 ◆感想 本書の要点は、日米開戦後から終結までの、責任回避の応酬である。 「海軍善玉論」、「天皇に実権はなかった」、「海軍は初めから戦争に反対していた」といった説は、こうした…

『アフリカ大陸探検史』アンヌ・ユゴン

◆メモ 主に19世紀のアフリカ探検をたどる。 探検家たちの多くは偏見や白人至上主義の持ち主だったが、リヴィングストンやメアリ・キングズリー等、当時の基準からすれば公平な視点を持つ者もいた。 アフリカ探検は文明化の象徴として本国でもてはやされ、…

『詳解武装SS興亡史』ジョージ・スティン その2

4 西部戦線が終結し、ヒトラーは密かにソ連侵攻を計画していた。 1940年から41年にかけて、再び新兵募集をめぐって陸軍と武装SSが対立した。 SS募集担当のベルガ―、SS参謀総長ユットナーらは、陸軍の眼を欺いて新兵募集を行った。併せて、占領…

『詳解武装SS興亡史』ジョージ・スティン その1

目的 ――本書は、これらSSの組織の1つであるナチ・エリート護衛部隊の軍事部門で、ヒムラーの戦時帝国の最大の構成組織であった武装SS(Waffen SS)の実像の解明を目指すものである。中でも特に、武装SSの発展の過程、すなわち、組織の目的、…

『特高警察』荻野富士夫 その2

4 総力戦体制が整備されていくにつれて、特高の業務も強化された。国体の擁護と、聖戦への一致団結がかれらの目的となった。 国家主義者については、これまで重視されてこなかった。しかし血盟団事件や五・一五事件をきっかけに、右翼担当が増員された。国…

『特高警察』荻野富士夫 その1

特高警察の概要について説明する本。特高警察の制度、運用については、現在の公安警察にも残されているという。 回想録に書かれている憲兵と同様、かれらも逃げ足が非常に早く、敗戦間近になると幹部たちの職場放棄が散見され、また書類の焼却がさかんに行わ…

『治安維持法』中澤俊輔 その2

5 1930年代には、治安維持法の適用が拡大した。 33年……司法官複数名が検挙された。また築地警察署において、小林多喜二が特高課の拷問により死亡した。 「赤化華族事件」では、華族が複数起訴された。 30年代には、共産党に並んで、国家主義運動も…