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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『ヒンドゥー教』森本達雄 その2

*** インドの浄・不浄観には、日本をはじめとする他の文化と共通する点もある。 ヒンドゥー教は死、血、屍を特に忌み嫌う。女性に対する蔑視は、生理、月経、出産等の血を伴う現象にも由来するという。 インドにおいて清浄とされるのは水、火、クシャ草、牛…

『ヒンドゥー教』森本達雄 その1

ヒンドゥー教について説明する本であり、素人にもわかりやすかった。 ヒンドゥー教は一神教や仏教から見ても異質な面がある。しかし、ヒンドゥーの神々、儀礼、思想等は、日本にも受け継がれている。 七福神の半数はヒンドゥーの神々由来であり、輪廻(サン…

『茶道の歴史』桑田忠親

茶道が時代とともに変化してきた歴史を解説する。 著者は、村田珠光や武野紹鴎、千利休が打ち立てた茶の精神に価値を置く。すなわち、万人を救済する仏の精神に基づき、身分の分け隔てなく茶の道を説くこと、客をもてなす精神をもっとも重要であると考えるこ…

『健康帝国ナチス』ロバート・N・プロクター その2

5 ヒトラーはたばことアルコールを拒否し、菜食主義に努めた。ヒムラー、ルドルフ・ヘスも菜食主義者だった。ヒトラー個人の嗜好と党の方針によって、肉食の規制、自然食の推進、人工着色物の規制といった政策がとられた。 また、ドイツ国民がビールにあま…

『健康帝国ナチス』ロバート・N・プロクター その1

原題は「ナチの、ガンとの戦争」The Nazi War on Cancer ナチ党政権時代の医療、健康、福祉政策を検討し、さらに政治と科学の関わりについて考える本。 本書が題材にするのは、断種や人体実験、安楽死等のおぞましい医学ではなく、現代の価値観とも類似して…

『潜入工作員』アーロン・コーエン

イスラエル対テロ特殊部隊工作員の自叙伝。 IDF(Israel Defense force)とその特殊部隊だけでなく、イスラエル社会やユダヤ人、テロリズム等についても書かれており、対テロ政策や軍事政策について考えるきっかけになる。 *** 著者は純粋なイスラエル人…

『現代アラブの社会思想』池内恵

アラブ世界に共通するアラブ思想の袋小路について。 1967年、第3次中東戦争の敗北により、パレスチナがイスラエルに占領された。 以後、マルクス主義過激派とイスラーム主義が勃興し、双方ともテロと暴力の温床となった。 現代のイスラーム主義は、終末…

『Ordinary Men』Christopher R Browning その3

14 ポーランド・ルブリン地区のゲットーが解体され、ユダヤ人の大半がトレブリンカに移送されてからは、森や集落にひそむ「ユダヤ人狩り」が大隊の業務となった。かれらは再びユダヤ人個人と対面しての殺人行為をしなければならなかった。 15 1943年…

『Ordinary Men』Christopher R Browning その2

6 ◆ラインハルト作戦 1941年、ヒムラーはロシア・ユダヤ人と同様、ヨーロッパのユダヤ人も絶滅させるよう指示した。射殺は現場隊員の精神的負担が大きいため、新しい方法として絶滅収容所が考案された。 オディロ・グロボクニクはオーストリア出身の親…

『Ordinary Men』Christopher R Browning その1

ポーランドでユダヤ人殺害を実行した第101警察予備大隊について書かれた本。 当該大隊については、他の移動殺人部隊と異なり、所属隊員のリスト、証言、詳細な裁判記録が残されていた。 調査の過程で、「ホロコーストは多くの人間が多くの人間を殺害する…

『旧約聖書の謎』長谷川修一

旧約聖書の記載内容を考古学の方法によって追求する本。各エピソードを取り上げ、考証を行い、エピソードに含まれるメッセージを考える。 *** ノアの方舟……メソポタミア(アッシリア、バビロニア等)に普及していた洪水伝説の変形バージョンと考えられる。 …

『自壊する帝国』佐藤優

10年程前に『国家の罠』、『獄中記』等を読んで以来、久々にこの著者の本を読んだ。 著者は極端なロシア政府寄りというわけではないだろうが、暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤやリトビネンコに対しては冷めた見方をしている。 どちらの書いた本も読ん…

『アフガン侵攻1979-89』ブレースウェート その2

戦闘…… ムジャヒディンは地元と密着しており、各監視所や部隊は、地元民と協力しなければやっていけなかった。 マスードは大学を出て働いた後、イスラーム主義運動に参加し、ムジャヒディンの一角となった。共産主義政権と同じく、ムジャヒディンも一枚岩で…

『アフガン侵攻1979-89』ブレースウェート その1

著者はロシア経験の長いイギリスの外交官で、独ソ戦についても本を書いている。 1978年、アフガニスタンにおいて、クーデタにより共産主義政権が成立すると、タラキはスターリンと同じ手段で政権を安定させようと試みた。このため、翌年、ヘラートにて大…

『憲兵』大谷敬二郎

満州事変前夜から終戦までの間、憲兵として勤務した人物の本。 憲兵としての初度配置が関東軍であり、石原莞爾らが謀略によって事変を起こす場面に立ち会うことになった。 軍を含む国家全体が、感情的、短絡的な傾向を強めていく様子を冷静に記述していく。 …

『憲兵物語』森本賢吉 その2

*** 「注意すべき中国人の慣習」……面子を重んじ、言動に注意し、敵意を持たれないようにすること。大家族主義を認識すること。中国人は収入に応じた生活をする。 *** 北支軍の憲兵の悪評について、小磯国昭陸軍大将に尋ねられた著者は回答する。 ――……憲兵令…

『憲兵物語』森本賢吉 その1

徴集兵出身の憲兵による話。 著者は成績優秀によって憲兵となり朝鮮、中国を中心に活動した。 憲兵の仕事だけでなく、当時の中国戦線の様子も詳しく書かれている。特に、占領地域や、後方地域でのスパイやゲリラとの関わりについて参考になる。 *** かれは広…

『靖国参拝の何が問題か』内田雅敏

なぜ靖国神社参拝に対して諸外国が内政干渉を行うのかを、神社の起源等から明らかにする本。 自民党、特に安倍晋三への非難の調子が強烈であるため、同じ意見の読者が安心することはできても、違う考えの読者を説得させることはできないのではないか。 わた…

『スターリンの対日情報工作』三宅正樹

クリヴィツキー、ゾルゲ、日本人スパイ「エコノミスト」等の事例を参考に、昭和前半期における日本政府の内部情報のほぼすべてが、スターリンに伝達されていた事実を明らかにする本。 1 クリヴィツキー クリヴィツキーはスターリンの工作員だったが亡命し、…

『日本軍と日本兵』一ノ瀬俊也

合衆国陸軍省情報部の出版していた部内刊行物「Intelligence Bulletin」(IB)を参考に、日本軍と日本兵の実像を考える。 精神主義、白兵戦一辺倒だったという定説は正確でないことを本書は示す。 狭いレベルにおいては、日本軍は合理性を追求していた。し…

『ロシア宇宙開発史』冨田信之 その2

2 ロケット開発 ソ連はペーネミュンデとミッテルヴェルク、その他のロケット関連施設を捜索し、A4ロケットと技術資料、設計図等を持ち帰った。また、スターリンの政令によりロケット開発体制が作られ、ドイツの技術者もソ連に移送された。 コロリョフを開…

『ロシア宇宙開発史』冨田信之 その1

気球の発明から有人宇宙船ヴォストーク(及びヴォスホート)までの、ロシアにおける宇宙開発の歴史を書く。 1 気球からロケットへ 気球は18世紀後半にフランスで発明された。これを受けて、ロシア科学アカデミーも有人気球の研究を推進し、限界高度や、上…

『昭和天皇の終戦史』吉田裕 その2

5 『独白録』の趣旨について…… ・天皇は立憲君主であり、決定権を行使しない。よって、対米開戦の責任はない。 ・対米開戦の責任は軍部、松岡洋右、近衛文麿、大島浩らにある。 ・東条英機は軍をよく統制できるから、天皇はかれを支持した。東条はがんばっ…

『昭和天皇の終戦史』吉田裕 その1

1990年に公開された『昭和天皇独白録』を史料として、「力を持たない天皇」像に対して疑問を投げかける。 古川隆久『昭和天皇』とはまったく違った像が描かれている。 1990年に発見された『昭和天皇独白録』は、終戦直後の46年における天皇の回顧…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その3

7 ヒトラーは武力による威嚇と小規模紛争によって野望を達成できると考えていた。 かれは一般的な侵略者のイメージとは異なり、自分からは動かずに、機会を待つことに長けていた。 英仏は、ヴェルサイユ条約におけるドイツの不満を理解しており、その要求に…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その2

3 ヴェルサイユ条約における最大の不備が賠償金であることを説明する。 ・賠償金は戦後数年たっても確定しなかった。研究の結果、ドイツは賠償金の支払いを怠慢していたことが判明している。 ・ドイツのインフレと困窮は戦費が主因だが、ドイツ国民の大半は…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その1

第1次大戦や、列強の覇権争いについての著作がある、イギリスの歴史家テイラーによる本。 第2次大戦の原因を、歴史学者の視点から検討する。 テイラーの本は『ビスマルク』、『第1次世界大戦』、『The Struggle for Mastery in Europe』を読んだが、どれ…

『神道入門』井上順孝

神道は日本独自の宗教だが、他宗教と混交し、また日本文化そのものと一体化しているため、定義が難しい。 本書は、組織制度や神社等の「見える神道」と、民間の習俗や思想の「見えない神道」という区分けを利用して、神道について説明する。 特に、現代にお…

『The roots of Blitzkrieg』James S. Corum その2

武器の開発について。 兵器局、各軍種の調査官が核心となって、火砲、小銃、機関銃、通信機器、戦車、毒ガス兵器の改良が行われた。ヴェルサイユ条約で兵器は厳しく制限されていたが、共和国軍は規制をかいくぐり、高水準の兵器の開発に努めた。 ・兵務局T…

『The roots of Blitzkrieg』James S. Corum その1

『電撃戦の起源:ハンス・フォン・ゼークトとドイツの軍事改革』 第2次大戦におけるドイツ軍戦術の起源をたどる本。 ドイツにおける戦略および戦術の発展は、戦間期、主にハンス・フォン・ゼークト将軍によって担われた。 本書はゼークトや無名の将校たちが…

『クルド人 もうひとつの中東問題』川上洋一

クルド人は主にトルコ、イラク、イランの3か国にまたがって居住しており、面積ではフランスに匹敵する。人口は2500万人前後であり、古来から独立闘争をくりかえしてきた。 宗派は7割強がスンニ派で、残りがシーア派、一部だがキリスト教徒やユダヤ教徒…

『Inside the Third Reich』Albert Speer その3

22 下り坂 ヒトラーは現実を受け入れられず、支離滅裂な命令を連発する。前線を観に行こうとせず、空襲被害を視察しようともしなかった。 かれは、いまに勝利するだろう、という妄想にとりつかれていた。 ゲーリングや軍高官、軍需関係の幹部たちは、この…

『Inside the Third Reich』Albert Speer その2

9 総統官邸での日々 ヒトラーの生活は、やはりスターリンを連想させる。かれの生活は芸術家に近く、毎日、側近とイエスマンを呼びつけて会食を行い、とりとめのない話をした。深夜はシュペーアやボルマンら一部の人間と映画鑑賞を行った。 ゲーリング、ゲッ…

『Inside the Third Reich』Albert Speer その1

ヒトラー政権のもとで軍需相を努め、戦後懲役刑を受けた建築家の自伝。かれは芸術家として異例の待遇を受け、その恩恵を受けつつ間近でヒトラーを観察する機会を得た。 子供時代からの半生が書かれているが、調子は落ち着いており、随所に建築や装飾への言及…

『It Doesn't Take a Hero』Schwarzkopf その2

ノーマン・シュワルツコフは、その後、ウェストポイントでの教官、ペンタゴンでのデスクワーク(とても時間のかかる業務)についた後、大佐となり、アラスカの旅団指揮官となる。 評判の悪かった指揮官は、毎週金曜朝に、全員にマラソンをさせ、砂場で格闘技…

『It Doesn't Take a Hero』Schwarzkopf その1

CENTCOM司令官として湾岸戦争を指揮した人物が、子供時代から陸軍に入り退役するまでを書く自伝。 *** 著者の父は警察署長、軍人で、母は看護師である。 両親の教え……男は女を守らなければならない、嘘をつかない、白人のプロテスタントとして生まれ…

『廃墟のなかのロシア』ソルジェニーツィン

ソ連崩壊後、混乱から立ち直らないロシアについて、『収容所群島』の作者が、どうすればいいかを考える本。 ロシア側が考えるロシア救済策・ナショナリズムは、あまり耳に入ってこないので新鮮に感じた。 明らかに、欧州や合衆国とは異質の思考であり、冷戦…

『南京事件』笠原十九司

本書の目的……東京裁判や南京軍事法廷の判決とは異なる「歴史」として、南京事件の全体像を解明しようと試みる。 1 1937年7月に盧溝橋事件、8月に第2次上海事変が発生し、日中戦争がはじまった。この月、木更津から発進した海軍機により南京渡洋爆撃…

『はじめての部落問題』角岡伸彦

自らも部落民出身であるライターが部落問題についてわかりやすく説明する。 *** 部落の起源はかつては江戸時代の政治制度とされていたが現在では否定され、中世から賤民階級の形成が始まっていたという。穢多、非人以外にも無数の被差別身分があり、由来や職…

『Embracing Defeat』John Dower その2

5 犯罪 東京裁判と、各地で行われたB・C級戦犯裁判について。 アジアにおける軍事裁判は特にオランダ、イギリス、フランスが多く実施し、日本兵や朝鮮・台湾出身の兵を処刑した。 東京裁判の特徴…… ・GHQとキーナン判事は天皇免責工作を行った。 ・A…

『Embracing Defeat』John Dower その1

邦訳は『敗北を抱きしめて』。 当時の出版物や新聞記事、証言、またはデータを基に、日本人がどのように終戦と占領を受け入れたかを検討する。 日本人の占領に対する意識は驚くほど多様だった。また、米軍による政治指導者たちの処罰や施政方針は、戦争責任…

『日中戦争 殲滅戦から消耗戦へ』小林英夫

日中戦争を日本の殲滅戦略(ハードパワー)と中国の消耗戦略(ソフトパワー)との衝突としてとらえ、検討する。その際、2003年公開された憲兵隊の検閲記録を参考とする。 前半は、著者の提唱する枠組みから日中戦争を検討する。 後半は、検閲された通信…

『Eichmann in Jerusalem』Hannah Arendt その2

8 良民の義務 アイヒマンはカントの定言命法を引用し、自らの規律にのっとって行動した、と弁明した。しかし、最終的解決の決定以降はカントに限界を感じ、命令者ヒトラーの原則を自分の原則と考え行動した。 ハンガリーはドイツの干渉を嫌うため、ユダヤ人…

『Eichmann in Jerusalem』Hannah Arendt その1

副題「悪の凡庸性について」 アイヒマン裁判についての記録。 1963年に出版されたこの本は、欧米やイスラエルのユダヤ人から非難を浴びた。 アイヒマンを悪の権化ではなく、凡庸な、思考停止した愚か者と解釈したこと、そのような凡庸な人物が悪をなすこ…

『昭和天皇』古川隆久

目的……昭和天皇について実証的な研究を行い、実像の把握につとめる。 *** 1 思想形成 裕仁は大正天皇の子供として生まれた。学習院で初等教育を終えてからは、東宮御学問所で様々な教科を学んだ。このときにダーウィンの進化論や実証史学に触れており、天皇…

『『コーラン』を読む』井筒俊彦

イスラームの神髄はコーランにあるため、この原典をまず正しく読む姿勢が重要であるという。講演を収録したものらしく、文は平明で読みやすい。 1 コーランはムハンマドの口を借りた神の言葉として成立した。 コーランの語源は「口に出して読む」という言葉…

『金正日の料理人』藤本建二

つい最近も訪朝しメディアに登場した著者の本。 著者は寿司職人として北朝鮮に呼ばれ、金正日に気に入られて専属料理人として働いた。 金正日と幹部らの生活はアラビアの君主を思わせる。かれらは毎日ぜいたくな料理を食べ、スポーツカー、バイクを乗り回し…

『聖書考古学』長谷川修一

◆独り言 自分はキリスト教徒ではないが、聖書に書かれている世界や、キリスト教文化には関心がある。 旧約聖書の、奇怪なエピソード、荒涼とした世界に一方的に憧れを持っている。また、キリスト教の文化と思考方式が人間の歴史に及ぼした影響は大きいと感じ…

『赤軍大粛清』シュトレビンガー

ソ連における大粛清と、ドイツ情報部門の謀略とをつなぎ合わせて検討する。 1 謀略 1936年からスターリンは古参党員の抹殺を開始した。この本のテーマは1937年6月に行われたトハチェフスキーら将官の粛清である。 ボリシェヴィキの政権掌握後、亡…

『黒檀』カプシチンスキ

アフリカについての文章を集めたもの。作者はポーランド人のジャーナリストで、世界各国からの現地報告が多い。 *** ガーナ編 ガーナは戦後のアフリカ諸国独立の旗手として、先頭に立っていた。 タンガニカ編 アフリカの黒人らは独立したが、白人による統治…