うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

◆歴史の本

『KGB帝国』エレーヌ・ブラン その2

第2次チェチェン紛争は政府側によって意図的に引き起こされたのではないかと考えるジャーナリストがいる。 ――テロ対策はすべての人を結束させる最高の口実だ。 ――彼(プーチン)はアンドロポフとブレジネフ双方の血を引いた雑種的人物だ。 ――プーチンにとっ…

『KGB帝国』エレーヌ・ブラン その1

本書の目的:1982年から2004年にかけての、ペレストロイカ、ソ連崩壊、プーチン政権誕生までを説明し、情報機関KGB=FSBが国家権力を掌握していった過程を明らかにする。 ◆所見 フランスから見たプーチン・ロシアのイメージの1つ。 KGBが…

『五・一五事件』保阪正康

五・一五事件は1932年に発生した。 五・一五事件をきっかけに台頭した、国民のなかのファシズムと、事件の関与者である愛郷塾の創設者橘孝三郎とを検証する。 厳密には歴史の本ではなく、著者が調査結果をもとに再構成した劇である点に注意する。 *** 橘…

『細川日記』細川護貞 その2

近衛文麿が東久邇宮に言ったという言葉。 ――自分としてはこのまま東条にやらせる方がよいと思うと申し上げた。それはもし替えて戦争がうまく行く様ならば当然替えるがよいが、もし万一替えても悪いということならば、せっかく東条がヒットラーと共に世界の憎…

『細川日記』細川護貞 その1

近衛文麿の東条内閣倒閣運動に携わった役人の日記。 第2次近衛内閣の首相秘書官、その後、天皇の弟高松宮の御用掛を務めた。 息子には陶芸家の細川護熙がいる。 高松宮殿下の令旨を受けた細川は、東条内閣下の様子や世界の情勢について情報収集するため、軍…

『暗殺国家ロシア』福田ますみ

報道統制の進むロシアで調査報道を続ける「ノーバヤ・ガゼータ」を追う本。 この新聞は元々、ソ連機関紙の1つだった「コムソモーリスカヤ・プラウダ」の記者たちが独立して設立したものだった。 業績不振や権力からの圧力で危機に見舞われたが、現在もゴル…

『チャーチル』河合秀和 その2

5 海相チャーチルは4人の海事卿(現役提督)とともに、海軍の組織改革に取り組んだ。参謀本部と海軍大学の設立、航空部隊の整備はこのときの成果である。 かれは、今度は社会改革費を削り海軍増強費にあてろと主張した。 仮想敵であるドイツ海軍は海外に植…

『チャーチル』河合秀和 その1

チャーチルは、最後の反革命・帝国主義の政治家だった。かれは第2次世界大戦においてイギリスを勝利に導いたが、一方、かれが理想とした帝国は勝利の過程で解体していった。 ◆メモ ・チャーチルは社会改革にも関心を持っており、貧困者の救済や失業対策等、…

『アメリカ黒人の歴史』本田創造

合衆国に現在約4000万人いるアフリカ系アメリカ人の歴史について。 「黒人」は、人種・血統的であるとともに、政治的なカテゴリーでもある。血統に1人でも黒人が混じっている場合、その人物は白人ではなく黒人として扱われる。 ◆メモ アメリカ人たちの…

『The killing of Osama Bin Laden』Seymour Hersh その2

軍と軍 オバマはシリア情勢について現実を無視した方策をとり続けている。彼の方針は以下の4つである。 ・アサドは退陣させなければならない。 ・ロシアとの共闘はありえない。 ・トルコはテロとの戦いにおける同盟国である。 ・シリアには米国の支援に値す…

『The killing of Osama Bin Laden』Seymour Hersh その1

オバマ政権の欺瞞を指摘する本。 著者は調査報道ジャーナリストで、ベトナム戦争におけるミライ村虐殺、イラク戦争のアブグレイブ収容所捕虜虐待などのスクープで有名な人物である。 オバマは国内において景気対策・福祉政策を講じる一方、軍事政策では国民…

『コーカサス 国際関係の十字路』廣瀬陽子

国際関係を中心にコーカサスの概要を説明する本。 コーカサスは西を黒海・トルコ、東をカスピ海、南をイランに囲まれた地域を指す。 南コーカサスはアゼルバイジャン、グルジア、アルメニアからなり、北コーカサスはロシア連邦の共和国……チェチェン、イング…

『ネイティブ・アメリカン』鎌田遵 その2

4 ルーズベルト政権下、インディアン局ジョン・コリア―による「再組織法」→部族の自治権確立へ トゥルーマン政権下の「終結法」→自立を名目とした居留地切り捨て、アメリカ社会への同化政策 先住民のうち居留地や信託地に住むのは4割で、5割弱は都市部に…

『ネイティブ・アメリカン』鎌田遵 その1

先住民の現状について解説する本。 合衆国には約247万人の先住民が住んでいるが、かれらの経済的地位は一般に黒人よりも低いという。 1 だれが先住民であるかという定義を定めるのは難しい。 先住民としてのアイデンティティは、血筋、部族員であること…

『Putin's Russia』Anna Politkovskaya その2

官僚組織の一員である判事たちは、ソ連崩壊によって服従する対象を失った。 かれらが次に選んだ主人はマフィアや新興財閥だった。 買収された判事が、給料20年分に相当するアメリカ車を手に入れる一方、賄賂や口利きを拒否した判事は免職され、または悪党…

『Putin's Russia』Anna Politkovskaya その1

著者は反プーチンで知られた『ノヴァヤ・ガジェタ』紙の記者で、2006年に路上で射殺された。 国民から自由を奪い専制を強めるプーチンを批判する。 本書では、国家の末端で残酷な取り扱いを受ける人びとに注目する。 プーチン自身の行動ではなく、かれの…

『アデナウアー』板橋拓己 その2

3 アデナウアーは外交を最優先させた。その目標は、ドイツの主権確立と、西側諸国の統合である。 アメリカを欧州に引き留めるため、再軍備を決定した。 かれはソ連に対しては融和を拒否した。スターリン・ノート(ドイツを中立国として統一させるスターリン…

『アデナウアー』板橋拓己 その1

アデナウアーは現在でもドイツの復興、繁栄、建国イメージに結び付けられているが、その実像は複雑である。 また、日本ではヒトラーに比べて無名である。 本書は、自由民主主義体制の定着と西側路線への決断を軸にして、西欧化していくドイツの歴史を、アデ…

『Blowing up Russia』Alexander Litvinenko その2

6 ブイナクスク、モスクワ、ヴォルゴドンスクでの爆弾テロについて。様々な状況証拠や、報道から、著者はFSBが自作自演によって引き起こしたと考える。 ・事前に計画や動きが漏れており、また直後に亡命したFSB士官からの暴露があった。 ・使用された…

『Blowing up Russia』Alexander Litvinenko その1

ソ連崩壊以降、KGB(ソ連国家保安委員会)がいかに権力を掌握してきたかを論じる。 本書はロシアでは発禁とのことである。 著者のリトビネンコは元FSB職員であり、暗殺指令を拒否しイギリスに亡命した。2006年に同僚に放射性物質ポロニウム210…

『The Great Game』Peter Hopkirk その3

3 終盤 クリミア戦争の結果、ロシアでは反英論(Anglophobe)が高まっていた。 1858年、アレクサンドル2世は、若い軍人イグナティエフ(Ignatiev)をヒヴァ、ブハラに派遣した。かれはその後北京に向かい、アロー戦争中の清国と英国との仲介になり、1…

『The Great Game』Peter Hopkirk その2

2 中盤 中央アジア、特にアフガニスタンを傘下に入れようと、英露の対立が強まり、紛争が各地で勃発した。 1831年頃、ベンガルインド軍のアーサー・コノリー(Arthur Conolly)は、モスクワからインドにかけて探検し、コーカサス地方~カイバル峠間、カ…

『The Great Game』Peter Hopkirk その1

グレートゲームThe Great Gameとは、中央アジアを南下するロシア帝国と、インドを拠点とする大英帝国との紛争を示す言葉である。 なお、この言葉の生みの親とされるイギリス東インド会社のコノリー(Conolly)大佐は、1842年、ブハラ・ハン国(現在のウ…

『サウジアラビア』保坂修司

矛盾を多く抱えた国家について解説する。 アメリカの同盟国であると同時に、9.11実行者の大多数を輩出し、また冷戦期にビンラディンやアフガン・アラブを支援した国でもある。 日本人の視点からは非常に不思議な社会であり、抱える問題もわたしたちとは…

『Hitler』Joachim C. Fest その3

6 準備期間 大統領の死に伴いヒトラーは総統及び首相の兼任となった。 国民投票では、社会民主党支持者とカトリック(中央党)がまだヒトラーを拒絶していた。 ・恫喝外交と宥和政策……1935年の英独海軍協定、ヴェルサイユ条約破棄と徴兵制復活、ベルリ…

『Hitler』Joachim C. Fest その2

3 長い待機 ランツベルク刑務所に収監された期間を、ヒトラーは「国費による大学」と形容した。かれは『わが闘争』を執筆し、ヘスらの編集を経た後出版された。この本にはゴビノーの人種理論を曲解したドイツ民族主義、反セム主義が強く反映されている。 1…

『Hitler』Joachim C. Fest その1

ヒトラーの伝記。 フェストは「ヒトラー最期の12日間」の原作者でもあり、本書もヒトラー研究の古典とのこと。 歴史観について……もしヒトラーがポーランド侵攻前に死んでいれば、かれはナポレオンやアレキサンダーに連なる古代的な偉人として称えられ、反…

『在日朝鮮人 歴史と現在』水野直樹、文京洙

19世紀末から現代までの、在日朝鮮人の歴史を解説する本。 在日朝鮮人は特殊な歴史的経緯をもって日本に定住しており、そうした事情を理解することができる。 1 朝鮮人が日本にやってくるのは、1899年頃からである。九州の炭鉱会社や、朝鮮で軍事施設…

『The Ghost of Freedom』Charles King その5

◆ソ連時代から現代、おわり 第2次世界大戦では、グルジア人のソ連邦英雄も現れた。 一方、北コーカサス部族(チェチェン、イングーシ、カラチャイ、メスへティア・トルコ、クルド)は、ドイツに協力したとして、カザフスタンやシベリアに強制移住させられた…

『The Ghost of Freedom』Charles King その4

◆近代化からロシア革命を経て、ソ連の時代へ 19世紀後半から始まったグルジア人のナショナリズムは、地方エリート、ブルジョワ・リベラルに分かれ、いずれも西洋からの影響が強かった。 20世紀初頭、より過激な若者たちがマルクス主義から影響を受け、第…