うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

◆歴史の本

『CIAと戦後日本』有馬哲夫

アメリカの国立公文書館史料を基に、アメリカが日本の戦後体制にいかに影響を与えてきたかを検討する。 ◆メモ 占領から一貫してアメリカが日本政治に影響を与えてきたことを検討する本。 日本の有力者たちは、金や自己利益のためにCIAのスパイ、工作員に…

『ふしぎな部落問題』角岡伸彦

『はじめての部落問題』の著者による続編。 部落問題の矛盾点や、メディアによる偏見や誤情報の拡散、近年の新しい事象(ネットでの情報氾濫など)にも触れている。 同時に部落解放運動の新しい形も紹介しており、現状を知る助けとなる。 *** 近年の部落問題…

『元禄時代』児玉幸多 その2

6 殉死の禁 家綱の代は、江戸時代には珍しい集団指導体制が敷かれた。保科正之、松平信綱らの死後は、酒井忠清が権勢を誇った。 政治的には安定していたが、火事や災害が絶えなかった。 ・家綱はあまりものをいわず、老中らの言いなりだったため「さようせ…

『元禄時代』児玉幸多 その1

中公「日本の歴史」シリーズの1つ。 江戸成立直後の、野蛮と暴力が残る時代、また江戸の発展や文化について知ることができる。 ◆メモ 綱吉の評価、柳沢吉保、荻原重秀らの評価は学者によって幅があるようだ。 度々火災に見舞われる江戸、人の命の軽さ、綱吉…

『極秘特殊部隊シール・チーム・シックス』ワーズディン

◆メモ 「ビンラディン暗殺!」と表題に書かれているが、冒頭の数ページのみであり、出版の際に急きょ付け足された感が強い。セイモア・ハーシュの報道で八百長と噂になった、疑惑の作戦を解説する。 本の大部分は著者の自叙伝である。SEALでの勤務内容や…

『トルコのもう一つの顔』小島剛一

トルコの少数民族とその言語を調査する日本人の紀行報告。 トルコ共和国は成立以来一貫して少数民族や少数言語を抑圧し、同化政策を進めてきた。 例えばクルド人は「山岳トルコ人」とされ、またクルド語はトルコ語の方言であると定められ、公の場でクルド人…

『従軍慰安婦』吉見義明

◆所見 吉見義明は『毒ガス戦と日本軍』の著者でもある。 長年問題となっていた朝日新聞の従軍慰安婦捏造記事は、本書では資料として使われていない。 政府と軍が支えた強制システムの証拠は豊富に残されており、業者の汚れ仕事に見て見ぬ振りをしつつ、慰安…

『The Looming Tower』Lawrence Wright その3

11 暗黒の王子 本書は元FBI職員のジョン・オニールを、合衆国側の主要人物(狂言回し)として設定している。 FBI本部に着任したジョン・オニールは、ラムジ・ユセフ目撃の報を受けて、パキスタンにおいてただちに「rendition(国外での逮捕連行)」…

『The Looming tower』Lawrence Wright その2

5 奇跡 ビンラディンは未熟なムジャヒディン……アラブ・アフガン達を率いて、パキスタン国境の山に秘密基地を作った。それは、「オサマ(ライオン)」の名をとって「ライオンの洞窟(the Lion's den)」と呼ばれた。 かれらはソ連軍に攻撃を加えようとしたが…

『The Looming Tower』Lawrence Wright その1

エジプトにおけるイスラーム主義運動の勃興から、2001年同時多発テロ事件までをたどる本。アメリカではベストセラーになった。 FBIがアルカイダの名に注目したのは1996年頃である。当時、アメリカに敵対する主だった勢力は、もはや存在しないと思…

『日中アヘン戦争』江口圭一 その2

(2 つづき) 1938年、対中国中央機関である興亜院が設立された。首相を総裁、外相・蔵相・陸相・海相を副総裁とし、政務部、経済部、文化部、技術部が置かれた。 新政策とは、蒙彊においてアヘンを増産し、占領地全域でのアヘン自給により財源を確保す…

『日中アヘン戦争』江口圭一 その1

日中戦争期、日本は利益獲得を目的として、蒙彊政権、満州国、朝鮮等で麻薬の生産と供給を行った。 *** 蒙古聯合自治政府は、蒙彊政権とも呼ばれ、1937年に日本によって内蒙古に作られた傀儡政府である。この政府は興亜院の政策に従ってアヘンの生産と販…

『仏教百話』増谷文雄

――およそ百篇の物語をつらねて、仏教のアウトラインを描き出そうとするのが、この本の企画である。 100話は仏陀の生涯を分割したもので、5つに区分けされる。 1 生涯の前半……出家~ 2 教説:実践的なもの 3 教説:思想的原理 4 生涯の後半から死まで…

『大江戸死体考』氏家幹人

江戸時代、人びとと屍体とが近い距離にあった。本書は、特に試し斬りの専門芸者である山田家を中心に、屍体にまつわる制度や風習を紹介する。 1 ・江戸では身投げが多く水死体がひんぱんに浮かんだ。数が多いので、汐入で発見された屍体は海に突き流せと通…

『ハッカーズ』スティーブン・レビー

コンピュータ黎明期の歴史と、「ハッカーズ」、プログラマーたちに焦点を当てた本。 コンピュータやインターネット、ゲームの歴史を網羅しているのではなく、当時活躍したハッカーたちの倫理と、その倫理が組織化、商業化によって失われていく過程を描いてい…

『日中十五年戦争史』大杉一雄

著者は旭川の陸軍で終戦を迎え、日本開発銀行で勤務した民間人の歴史家であり、学者ではない。 日中戦争当事者の回顧録や、中国側の記録、戦史叢書や記録を参考に、特に日中戦争本格化までの経緯を分析する。 *** 日中戦争を段階的に区分し、それぞれのフェ…

『プーチンと甦るロシア』シュテュルマー その2

6 軍 ・ロシア軍は予算不足と練度不足、装備の老朽化に苦しんでいる。 ・2000年の潜水艦クルスク沈没は、ロシア軍の機能不全、政府の危機管理意識の欠如を明らかにした。 ・2000年代から、ロシア軍はハイテク化、精鋭化を目指し改革を進めた。いず…

『プーチンと甦るロシア』シュテュルマー その1

ロシアはいまも国際社会の鍵となる主体である。ロシアがアメリカ、EUと対立するのか、それとも共存していくのか、また中国とどのように関わっていくのかは、(特に本書刊行時点では)まだ明らかではない。 ロシアは問題を多く抱えた国である。外交姿勢はア…

『アメリカの秘密戦争』セイモア・ハーシュ その2

4 イラク戦争を主導した「対イラク・タカ派」について。 ネオコンの代表的な論者リチャード・パールは、大統領直属のシンクタンクに所属しイラク戦争を進言したが、自分の経営する投資会社と、軍需産業との関係をメディアに指摘され、公職を辞任した。 その…

『アメリカの秘密戦争』セイモア・ハーシュ その1

副題:9.11からアブグレイブへの道 *** 著者は、まえがきによればボブ・ウッドワードと並ぶ調査報道の第一人者である。 ――わたしは昔ながらの左翼、過激派、人種差別主義者などを取材してまわろうとは思わない……昔気質の善良な民主主義者を取材する。政…

『特攻』森本忠夫 その2

3 1944年6月、マリアナ沖海戦(「あ」号作戦)失敗によって、特攻兵器……回天、震洋、海龍、震海を使う方針が固まっていった。 海軍においては、零戦等の航空特攻、回天、震洋、桜花など、いずれも、現場の下級指揮官からの熱望という、ボトム・アップ…

『特攻』森本忠夫 その1

本書の冒頭から: 特攻作戦は、西欧的な価値観からすると異様な自殺攻撃である。 わたしたちは、当時の価値観がどのように特攻を正当化したかについて、また軍がどのような意思決定を経て、この異様な作戦を実行したかについて、知らなければならない。 ◆感…

『捏造された聖書』バート・アーマン その2

3 聖書の写本が作られていく歴史を説明する。 素人書記の時代から、ローマ帝国の国教化により、専門的な書記の利用と施設の整備が進められた。4世紀から15世紀、活版印刷が発明されるまでの時代の写本を「ビザンティン写本」と呼ぶ。 比較的正確だが、か…

『捏造された聖書』バート・アーマン その1

◆感想 著者は専門教育を受けた神学者だが、視点はわたしのような非信徒に近く、違和感なく受け入れられるものである。 著者は、聖書を無謬の「神の言葉」と考える主義から、本文研究を経て、人間的な書物とみなす思想にいたった。 神の言葉の改変については…

『アメリカ精神の源』ハロラン芙美子

カトリックである著者が、アメリカ人の宗教と精神について考える本。 著者は長崎出身で、米国で長く勤務し、現在はハワイ在住という。 合衆国は歴史の若い国ともいわれるが、移民たちの信仰はユダヤ、ローマまでたどることができ、またほぼすべてのアメリカ…

『The Occupation』Patrick Cockburn その2

◆反政府勢力、シーア派 フセインを支持する者はほとんどおらず、政権はすぐに崩壊した。しかし、連合軍による占領が始まるとすぐに、反政府勢力が勃興した。 フセイン政権下で抑圧されていたシーア派もまた占領軍に対し攻撃を開始し、またシーア派同士でも紛…

『The Occupation』Patrick Cockburn その1

副題は"War and resistance in Iraq". 数十年にわたってイラクの取材を続けてきた報道記者コバーンが、イラク戦争後の米軍占領の実態を伝える。 現地からの報告により米国、米軍のお粗末な政策と悲惨なイラクの様子を明らかにする。 イラクの民主化と政権移…

『公安警察の手口』鈴木邦男

趣旨: 公安警察は極めて政治的な存在であり、政府や体制に批判的な人間、危害を及ぼしそうな人間を監視する。公安は市民の自由をおびやかしており、またそれに対する批判の声も聞こえない。 著者は新右翼の活動家で公安の監視対象となっている。 本書では実…

『ザ・マーセナリー』フランク・キャンパー

著者は元米軍人で、傭兵学校を開設したが、本書出版時は自動車爆弾による殺人未遂で服役中だったという。 淡々とした文体で、著者の心情やコメントは時折挿入される程度である。 ベトナム派遣後、FBIの工作員、サウジアラビア軍の支援、傭兵学校、中南米…

『ナチスの知識人部隊』クリスティアン・アングラオ その2

3 ナチズムと暴力 戦争がはじまると、東方をゲルマン化する計画が始動した。 国家保安本部、ドイツ民族性強化全国委員部、東部省、人種・移住本部、ドイツ民族対策本部が、それぞれ協力しゲルマン化政策に参加した。 ・東方において、帝国の外に居住する「…