うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-02-04から1日間の記事一覧

鉄塔の上でそんなふうに……(2011)

鉄塔の上でそんなふうに大声をあげても なにも 聴こえない 赤と白の縞をなんども塗りつづける男と それを下の荒地から 見上げる男 檻と格子でできた家に住んでいる その子はかわいいので 頭がおかしくなった ぼそぼそと だれも聞いていない話を 何度も繰り返…

人造衛星

鍾乳洞のなかに手をつっこんでさぐるとススで手のひらが 真っ黒になった 爪も黒くなってしまい、しばらく とれない 水の色はエメラルドで、長い年月が たってもだれも浄化しなかったので老いぼれて 円錐のかたちの水柱をたてて、信号を発する なにをいってい…

『日本の近代9 逆説の軍隊』戸部良一

8月15日終戦日、皇居周辺に位置する近衛師団においてクーデターをもくろむ将校が宮城事件をおこす。クーデターは失敗し、決起派は鎮圧される。この事件は陸軍の狂気と同時に、冷静さをも示している。 ファナティシズム(狂気)が常態化していた昭和陸軍の…

『中華民国』横田宏章

辛亥革命から共和国成立までの四〇年にわたる中華民国の歴史を、伝統的な中国の政治形態、「賢人支配の善政主義」という観点から描く。この政治形態とは、「選ばれた有能なエリートが統治能力のない無能な大衆にかわって高度な統治技術を必要とする政治を独…

『日本の近代6 戦争・占領・講和』五百旗頭真

B大生の間で評判の悪い、いおきべ・まことの研究。文章が情緒的すぎる。 *** 山本五十六は海軍航空本部の建設者であり、世界水準の戦闘機零戦を作り出した功労者である。対米戦争はもともと現実的とは考えられていなかったが、三国同盟によって米国は態度を…

『狼煙を見よ』松下竜一

――〝人民〟という概念があります。まだぼくがガチガチにイキがっていた頃、ぼくはこの〝人民〟や〝大衆〟という表現をまったく無頓着に使ってきました。それは十代後半から左翼運動に入って、そういった表現に麻痺していたんでしょうね。……ところで〝人民〟…

『ホモ・ルーデンス』ホイジンガ

「ホモ・サピエンス」、「ホモ・ファーベル」(作る人)と、人間の呼称は数多い。ホイジンガは「ホモ・ルーデンス」(遊ぶ人)という名前をつくり、遊びが人間の習性に占める大きさを強調する。遊びは文化より古く、動物もまた遊ぶ。遊びは「なんらかの意味…

『敵の顔』サム・キーン

副題「憎悪と戦争の心理学」とあり、敵をつくりだす心理や、プロパガンダについて論じた本。 *** ――われわれ人類は敵対人(ホモ・ホスティリス)、つまり、敵対する種、敵をつくる動物なのだ。 われわれは戦争をおこない敵を殺す。そのためにはまず敵をつく…

『パニックの心理』安倍北夫

防災心理学にフール・プルーフとフェイル・プルーフというものがある。バカでも大丈夫な設計、失敗しても大丈夫な設計のことをいう。人間は異常事態に直面すると虚脱状態、失神、無感動になる。そうでなくとも幼児に退行し、あたまの回転もにぶくなる。 地震…

『消費社会の神話と構造』ボードリヤール

おぞましいもののように描かれる大型ショッピング・センターの風景。未開民族が白人の援助物資を当然のもの、神からの贈り物として受け入れるのと同じく、消費社会の人間は豊かな日常生活を自明の、当然のものと考える。 この幸福で退屈な日常は犠牲者を欲す…

『やさしい唯識』横山紘一

唯識三年、倶舎六年、むずかしいと評判の唯識に触れてみる。 各所で、「いやな時代になった」というじいさんの文句が垂れ流されるが、唯識の理解に関係しないかぎりは無視する。 仏教の体系、用語などをまともに覚えようとすれば尋常でない努力が必要になる…

『ワイルド・スワン』ユン・チアン

文章は飾りのない報告調で淡々と進むが、繰り広げられる話はおもしろい。古い因習、無政府状態の国、身分の違いなど、現代からすると奇想天外な要素がたくさんある。衒いや専門的な話はほとんどなく、あくまで女たちの人生の転変を語ろうという純粋な動機が…

『日本の近代5 政党から軍部へ』北岡伸一

細かい事実が多すぎて、大筋を追うのに苦労する。流れをつかむのも重要だが、小さなエピソードにも魅力がある。 *** 本書は1924年(大正13年)の護憲三派内閣の成立から1941年(昭和16年)の日米開戦までを対象とする。比較的進歩的な1920年…