うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-01-31から1日間の記事一覧

あとずさりの旅(2011)

緑色の髪と、指のふちをなぞると 太陽の裏側から 水兵の声が聴こえるので 発光する 森のように密集した 無人のとりでについて わたしの 妹は 手をかざしながら話をしてくれた とりでのむこうに 静かな回廊が浮いて、空中線がいくつも伸びていた 兄と妹は 怒…

『イスラーム世界の創造』羽田正

「イスラーム世界」という概念そのものを問う本。イスラーム研究の歴史、受容の過程などが問題になっている。 イスラーム世界の定義は錯綜しており、大別すると次の4つになる……理念的な意味でのムスリム共同体、イスラーム諸国会議機構、住民の多数がムスリ…

『ロボット』チャペック

薄い本で、書かれたのも前世紀はじめと古いが、密度は高い。 R.U.Rなる企業がロボットを発明し、人間に代わる労働力として大量生産され、人間の仕事をすべて奪い、やがて反旗をひるがえす、という地球規模の出来事でありながら、描かれるのはドミンら企業の…

『イスラム社会』アーネスト・ゲルナー

この著者の『ナショナリズム』の本はたいへんおもしろかった。 イスラム社会、というくくりは、仏教社会、ということばと同じくらい茫漠とした印象しか与えないが、本書は、いくつもの国家、民族を含む「イスラム社会」の共通項や型を見つけようとする。 と…

『アメリカ外交50年』ケナン

20世紀の前半に外交を指揮した人間はみな優秀だった。しかし、冷戦の時代にまで下ると、アメリカの安全はおびやかされるようになった。アメリカ外交にはある欠陥、国民性的欠陥がみられる。 ――……他国との関係において、現実的でそして切実な必要となってい…

『The Boer War』Thomas Pakenham

ボーア戦争はイギリスに深い傷を残した。この戦争を理解するための四つのポイントは、南アフリカの富豪と英国政府の隠された関係、Sir Redvers Bullerブラーという軍人の果たした役割、南アフリカの黒人たち、それにボーア市民の受けた被害である。 *** 1 …

『セルビアの白鷲』ロレンス・ダレル

フライ・フィッシングと『ウォールデン』の好きな情報部員メシュインは、不穏な動きのあるセルビア山岳地帯に派遣される。外国語の能力に秀でた彼は、セルビア人に扮し、王党派のレジスタンスにうまく溶け込み、金を反チトー、反共産勢力に受け渡す行軍に参…