うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-01-16から1日間の記事一覧

27.1.16

香港の思い出

鐘(2011)

木陰がすこしづつ小さくなって、木が数秒間のあいだに のびたので、そのかわりに建造物が、どす黒い けむりのなかにうもれてしまった おそろしい幹と、枯れ枝の、昼の時間にくらべて 延長された部分が、太陽の楕円を追いかける ように、空の表面につきささり…

『In Cold Blood』Truman Capote

カンザス州の田舎町でおこった強盗殺人事件について書かれた本。 殺されたクラッター一家は、豊かな農家を営んでおり、父ハーバートは地元の名士だった。娘は美人で成績がよく、ボーイフレンドがいた。弟は父と同じくらい体つきがよい。ハーバートの妻だけは…

『江戸開府』辻達也

秀吉の死から家康の江戸開府、三代家光までの幕政建設を説明する本。 天下を統一するには、実力だけでなく正統性も必要だったということが詳しく書かれている。統一者は源氏と平氏が交互につくという信仰のようなものがあり、家康はこれに沿うように系図をつ…

『ブーベ氏の埋葬』ジョルジュ・シムノン

ネタバレあり パリの住宅街で老人が死ぬと、かれの妻を名乗る女があらわれる。死んだブーベ氏の経歴はなぞにつつまれており、アパートでひとりで暮らすかれの行方を、妻や、別の妻、娘たち、ほか、いろいろな人物が追っていた。 刑事たちはブーベ氏の正体を…

『宇宙のダークエネルギー』土居守 松原隆彦

ダークエネルギーの概要と、ダークエネルギー観測方法について説明する本。宇宙論では、理論と同じくらい、観測も重要であり、この両者が揃ってはじめて実証科学として成立する。 ダークエネルギーは「宇宙を加速膨張させる原因となるもの」であり、宇宙のエ…

『神の裁きと訣別するため』アントナン・アルトー

作者がラジオ放送のためにつくった詩「神の裁きと訣別するため」と、ゴッホについての考えを書いた「ヴァン・ゴッホ」が入っている。 アルトーは外国の演劇などを参考に作品をつくった人で、精神病院に入れられて死んだらしい。 翻訳文を読んですぐ、すこし…

『赤毛のアン』モンゴメリ

「そう。これもいつかおぼえることの一つだわ。いろいろおぼえることがたくさんあるって考えているのは、すばらしいと思わない? あたし、生きてることがうれしくなっちゃうの、――こんなにおもしろい世の中ですもの。なんでもみんなわかっちゃったら、きっと…

『見えない都市』イタロ・カルヴィーノ

マルコ・ポーロはフビライ=ハンにさまざまな都市の見聞をきかせる。2人の会話は禅問答じみており、ことばで遊んでいる印象をうける。マルコ・ポーロの都市も、なぜか重機やバスターミナルがあり、抽象的な図像でしかあらわれず、非現実的な風景が広がって…

『危機管理の理論と実践』加藤直樹・太田文雄

「国家あるいは地方自治体等で危機管理に携わる人たちの参考となるために」つくられた、危機管理についての本。 前半は危機管理の定義について、社会科学の方法論を並べながら考える。後半は防衛白書から引き写ししたような、国際情勢と、戦争の形態変化の説…

『トリスチア』マンデリシュターム

ロシア詩人の詩集と、文章を翻訳した本。 森や水などの自然物とあわせて、古典古代の風景があらわれる。色鮮やかな景色がおもいうかぶようにできている。 ――柔らかい草地を踏んで踊る影たちの輪舞へ わたしは旋律美しい名とともに紛れ込んだが、 なにもかも…

『シチリア・マフィアの世界』藤澤房俊

マフィアとはシチリア島で生まれた現象である。マフィアの発祥は、シチリア島の政治経済に由来する。古来よりシチリアは多くの侵略者によって平定され、不在地主による大土地所有制(ラティフンディア)が敷かれた。 地主貴族にかわって農民を監視したのが、…

『ドゥイノの悲歌』リルケ

――ああ、いかにわたしが叫んだとて、いかなる天使が はるかの高みからそれを聞こうぞ? 冒頭のなげきからはじまり、抽象的なところから、風景まで、場面がうつりかわる。世界空間と、自分たちにたいするなげきがつづく。ことばには古い語句もあるが、読みに…

『The Cosmological eye』Henry Miller

本や美術、映画についての文章と、人物伝、シュルレアリスム的な文章を寄せ集めた本。1939年に刊行された。 かかれていることはいつも同じで、文明に服従しないで、人間として生きることを主張する。人は労働のために生きているのではない、とミラーはい…

『わが生涯』トロツキー

――私にはまだ自分の意見というものはなかったが、虫のついた食物を食べることができないのと同じように、受け入れることのできない意見というものがあるのを感じた。 ――世の中には、その全生涯にわたって単調で希望のない毎日を送っている人はいくらでもいる…

『毛利元就のすべて』

毛利元就の出自や、領国統治、配下の武将などについて細かくかかれている。後半は古文書の一覧や関係人物事典など、退屈な章だったのでとばした。 毛利家は、鎌倉幕府の重役である大江家を祖先に持つ。毛利元就は一代のうちに、群小の国人領主から、中国地方…

『孤島の鬼』江戸川乱歩

なんの変哲もない生活から、異常な人間たちの世界にまきこまれていく話。 主人公の賃金労働者は、恋人を殺される。これを調査していた友人の探偵も殺される。主人公のことを好いている同性愛者の友人がいて、2人は協力して犯人をつきとめようとした。 雑記…

『インフレーション宇宙論』佐藤勝彦

現在、標準理論となっている宇宙論についてわかりやすく説明する本。 まず、宇宙論の発展をたどる。アインシュタインは、時間と空間が不変でないことを提示し、またハッブルは宇宙が膨張していることを発見した。宇宙が火の玉から生まれ、ふくらみつづけてい…

『インディアスの破壊についての簡潔な報告』ラス・カサス

新大陸にやってきたスペイン人、征服者(Conquistadores)の悪行を記録して、スペイン国王に訴えるための本。 この本はおなじことを何度も反復してとなえている。インディオたちは無力で、からだがよわく、従順であり、また平和をあいする。ここに無法者で残…

『デルスウ・ウザーラ』アルセーニエフ

著者とロシア兵と、現地人のデルスウは、ロシアの沿海州、ウラジオストクの北方を探検する。針葉樹林の山が未開拓のままのこされており、つねに雨と霧にみまわれ、虎や猪、ノロといわれるけものが棲息している。 「カピタン」アルセーニエフたちは、けわしい…

『インパール』高木俊郎

報道記者としてインパール作戦に随行した人間が書いたらしい。 牟田口将軍と、その取り巻きが非合理的な作戦をごり押ししていくようすがえがかれる。当時の状況や、アッサム地方の風土が説明されていて、イメージをうかべやすい。 牟田口将軍は、ほとんどバ…

『無関係な死・時の崖』安部公房

短編ごとに種類はまったくちがう。ことばは平坦でわかりやすく、「ぼく」という人称が鼻につく以外は、とくに不快なところがない。古臭い、堅苦しい小説調子のことばでないところが重要だとおもった。 「夢の兵士」……脱走兵を追い詰めてみたら自分の息子だっ…

『メキシコ現代史』

時系列に政治的な出来事を羅列するだけで退屈だった。 メキシコ革命後の混乱は、ポルフィリオ・ディアスの長期政権によって抑えられていた。彼の引退後、ふたたび国内の軍人が反乱を繰り返す。カマチョ大統領の時代から政治的安定の追求がはじまる。サリーナ…

『言語と認識のダイナミズム』丹治信春

以前『クワイン』を読んだときに、心理主義について不明な点があったので買った本。 ことばは、心の中の観念や事物にたいしてラベルをつけたものである、という考えは自然に感じるがそうではないらしい。このようなことばのとらえかたのどこにおかしいところ…

『アナーキズム』アンリ・アルヴォン

アナーキズムは国家と社会を二元化し、国家を否定する。個人の自由を神聖なものとし、これを基盤にした社会の構築をはかる。社会主義は国家と社会の和解を可能だとする一方、アナーキズムは国家を否定する。著者によればアナーキズムは自由主義と社会主義の…

『遺跡の声』堀晃

下級の遺跡調査員と、かれが育てている知的生命結晶体「トリニティ」は、銀河の辺境にのこされた生命体の遺跡をまわる。惑星の様子や、地球のものとはかけはなれた生命の図像が鮮明でおもしろい。どこかでみたような宇宙人もいるが。 文と人物はつねに冷静で…

『ヨブ記』

「何故悪人が生きながらえ 年をとってその富も増し加わるのか。その子孫はともにいて安穏であり その裔もその眼前に安らかである」、「悪人の燈火の消されることが幾度あるだろう」、「ある者は全く平和に安楽に 全き幸福の中に死んでゆく。その体は脂に満ち…

『香港発・娘への手紙』邱永漢

――いままでパパの周辺で殺された人たちをみると、そのほとんどが「俯仰して天地に愧じず」と考えている人たちです。悪い人が罪に問われたり、ひどい目に遭わされるわけではないのです。そんなことよりも、現在自分がやろうとしていることが、どんな反応をひ…