うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

ユートピア計画、就職活動

◆スターリンとヒトラーの夢の土地 今読んでいる『Bloodlands』では、2人の独裁者のユートピア実現の場に供された国々の犠牲が淡々と書かれている。 ドイツ・ソ連によって最大の被害を被ったのは、緩衝地帯の国……ポーランド、ウクライナ、ベラルーシ、バルト…

『ロシアン・ダイアリー』アンナ・ポリトコフスカヤ その2 ――権威主義体制の国/服従したい・子供扱いされたい人びと

2 2004.4~12 大統領選が終わった後も、野党や反対派の動きは見られなかった。かれらはすべてをあきらめているように見えた。 イングーシ、チェチェンでは、それぞれ国家元首がクレムリンの傀儡に置き換えられた(イングーシ共和国のジャジコフ、チ…

『ロシアン・ダイアリー』アンナ・ポリトコフスカヤ その1 ――権威主義体制の国/服従したい・子供扱いされたい人びと

著者は2006年10月に何者かに射殺された。 ◆所見 プーチンの2004年大統領選から2005年8月までのロシア情勢を記録した本。生まれかけた民主主義が消え、不正と暴力、無気力に社会が包まれる様子を描く。 人びとの一部は不満を感じているが、自…

スナイダー『Bloodlands』を読み始めた

◆Bloodlands 日本語訳もあるティモシー・スナイダー『Bloodlands』を読み始めた。 ヒトラーとスターリンに挟まれた緩衝地帯……ポーランド、ウクライナ、ベラルーシにおいて、約1400万人が戦争ではなく、政治政策によって殺害された。 ウクライナの人為的…

『徳政令』笠松宏至

歴史上、もっとも有名な法の1つである徳政令を中心に、中世の法と慣習を考える本。 現代とはかけ離れた法の概念や、運用方法を知ることができる。 ◆所感 ・中世から、不動産トラブル、債権債務のトラブルは社会のなかで大きなウェイトを占めていた。 ・中央…

『Inside the Gas Chambers』Shlomo Venezia その2 ――ガス室運営に従事したアウシュヴィッツ体験者の回想録

4 叛乱はカポ、ゾンダーコマンドの一部、そして外部のレジスタンスによって計画された。これはすぐ失敗し、首謀者や逃亡者は処刑された。 あるときポーランド人のレジスタンス女性が送り込まれてきたが、この人物はユダヤ人にあまり良い感情を持っていない…

『Inside the Gas Chambers』Shlomo Venezia その1 ――ガス室運営に従事したアウシュヴィッツ体験者の回想録

アウシュヴィッツ=ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)に連行され、収容所内でゾンダーコマンド(Sonderkommando)として勤務し、生き延びた人物の貴重な証言。 ギリシア・サロニカのユダヤ人市街で生まれ、イタリア、次いでドイツに占領されるまで、貧しいが…

『苦海浄土』石牟礼道子 ――水俣病を題材に書かれたフィクション

水俣病を題材に、作者が想像力を駆使して書いた文芸作品。作者自身が水俣市近傍の出身であり、水俣病に係る社会運動に参加している。 このため、ノンフィクションであるかのように考えてしまうが、そうではなくあくまでフィクションだとのことである。 患者…

『戦争広告代理店』高木徹 ――インフォメーション・ウォーという戦争行為

◆所感 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争における情報戦を検討する本。 戦争における情報戦(Information Warfare)とは、国際社会の世論への働きかけ、メディアに自分たちの正当性を理解させることを通じて、戦況を有利にするものである(実際には定義はもっと…

Kindleがスマホで読めるという

◆省スペース 読み終わった本を片っ端から売ったり捨てたりしているので、遅ればせながらKindleを使うようになった。 いまはKindle Appというスマホアプリで読むこともできるという。 しばらくはこれを使いつつ、もっと大きい画面で読みたくなったらKindle Pa…

『日本の軍隊―兵士たちの近代史』吉田裕 ――なぜ日本軍は国民から離れていったのか

◆所感 「天皇の軍隊」である日本軍と、社会・民衆との関わりに焦点を当てた本。 明治維新後に創設された軍は、当初、近代化の歯車として機能した。軍隊が近代社会の要素を確立させ、また近代文化を地方に普及させた。 軍隊は、社会のなかの要素として組み込…

年末になり、さらにリラックスする自宅戦闘員

◆今年、面白かった本 読んだ冊数は例年より少ないが、大部の本をよく読むことができた。ひとえに、わたしの膨大な自由時間のおかげである。 以下、順不同で本を紹介したい。 1 『King Leopold's Ghost』Adam Hochschild King Leopold's Ghost: A Story of G…

吐き気を催す/鶴の一声 ――サイコ特殊部隊員

◆軍にやさしい大統領? 戦争犯罪と規律違反(捕虜の殺害、殺害した屍体とともに写真撮影し友人に送信、民間人を無差別に狙撃)の容疑で、訴追されていた海軍SEALSの上等兵曹(Chief Petty Officer)ギャラガーがトランプ大統領の介入で懲戒処分を免れた。 ww…

ヨーロッパの敗軍 ーーフランス系ドイツ人による独ソ戦回想録『The Forgotten Soldier』

今読んでいるGuy Sajerの「The Forgotten Soldier」は、アルザス出身のフランス系ドイツ人による東部戦線の回想録である。 著者はドイツに占領されたアルザス地方のフランス人で、未成年で国防軍に徴兵され、はじめは兵站部隊に、その後志願して戦闘職種であ…

『アウシュヴィッツと<アウシュヴィッツの嘘>』ティル・バスティアン

アウシュヴィッツ否定論に対抗するための本。 事実の説明や、否定論や修正主義的言説の経緯が紹介される。 1 アウシュヴィッツ概要 ・1920年に制定されたナチ党綱領には、「ドイツ国民にユダヤ人は含めてはならない」とする規定が既に存在した。 ・19…

『Hegemony or Survival』Noam Chomsky その3 ――テロ国家、合衆国

6 ディレンマと覇権 イラク戦争を支持したヨーロッパ8ヶ国は、ただ「イエス・サー」と叫んだわけではなく、EUに加盟したいという思惑もあった。 合衆国は地球規模の覇権を保持すべきとの方針を継続してきたが、戦後、欧州やアジア地域の復興によりその影…

『Hegemony or Survival』Noam Chomsky その2 ――テロ国家、合衆国

4 危険な時代 国際テロリズムの本家たる合衆国の活動を検討する。 1962年10月キューバ危機の見直し……キューバがソ連に支援を求め、ソ連がミサイルを運搬したのは、キューバを合衆国の侵略から防衛するためだった。 合衆国はソ連のふところであるトル…

『Hegemony or Survival』Noam Chomsky その1 ――テロ国家、合衆国

◆所感 副題は、地球規模覇権へのアメリカの探求。 合衆国の歴史が暴力と独善に彩られている様を、細かい事実や報道を元に浮き彫りにしていく。 要点は、合衆国の掲げる理念――民主主義や自由、人権――といったものがまやかしにすぎず、さらに、その非道行為が…

『蚤と爆弾』吉村昭 ――731部隊と石井四郎

軍医中将石井四郎と731部隊をもとにつくられたフィクション。 京都帝大出身の曽根次郎は、陸軍で勤務する。しかし、軍医の世界は東京帝大派閥が幅を利かせており、出世は望めなかった。かれは「人を救う」という医者としての信条よりも、自分の能力を発揮…

パールハーバーの銃撃事件

日本でもニュースになったため無職の親類や知り合い等から安否確認の連絡が来た。 現場は観光地のパールハーバーに近いが南寄りの軍港内のドックである。 銃撃が発生すると全基地の軍人・職員に対してアラートメッセージが送信され近くの建物・部屋の中に入…

『法における常識』ヴィノグラドフ その2 ――法とは何かを概説する20世紀の古典

*** 5 立法 法の源(Sources):立法、裁判官のつくる法(慣習法、判決、衡平(Equity)) または自然法を源とする学者もいる。 法律の文理解釈は、裁判所に永久に課せられた仕事である。 裁判所は専門的な事柄に対しても技術的解釈を行わなければならない…

『法における常識』ヴィノグラドフ その1 ――法とは何かを概説する20世紀の古典

オックスフォード大教授、1919年初版の、法律入門書。 著者のヴィノグラドフはロシア人だが、帝政ロシアにおいて当局と衝突を繰り返したため、主にイギリスで活動した(最終的に帰化した)。 法律とは何かが簡潔にまとめられている。 調べたところAmazon…

『寺院消滅』鵜飼秀徳 ――衰退していく寺院、世俗化された坊主

全国には7万7000の寺院があり、うち無住寺院は2万、不活動寺院は2000以上である。寺院消滅の問題は、地方の消滅(高齢化、過疎化、人口流出)とつながっている。 本書は、社会構造の変化と寺院との関係に焦点をあてる。 1 ・長崎県五島列島宇久島…

『フランス革命 歴史における劇薬』遅塚忠躬 ――革命の光と闇

フランス革命が、フランスの歴史、フランス国民にとって劇薬であったことを伝えるという趣旨の本。 著者は、革命が人間の偉大(理想)と悲惨(現実の殺戮、恐怖政治、戦争)を体現していると考える。 岩波ジュニア新書ということで、子供向けにわかりやすく…

最近の買い物 ――日本史、マリオネット、

◆関東大震災 九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響 作者: 加藤直樹 出版社/メーカー: ころから 発売日: 2014/03/11 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (48件) を見る 『証言集 関東大震災の直後』が良い本だったので…

『英雄なき島』久山忍 ――硫黄島の戦いと名将の実態

海軍航空隊の要員として硫黄島の戦いに参加した大曲覚(おおまがり・さとる)海軍中尉の回想録。 ◆所感 所在航空部隊である海軍の、さらに下級士官からの視点ということで、末端の雰囲気や状況がよく伝わってくる。 防空壕での日本兵たちの生活は、完全に別…

『チェチェン やめられない戦争』アンナ・ポリトコフスカヤ その2 ――無法者と劣悪軍隊の違い

2 ロシアの現実 ・イングーシ共和国のアウシェフ大統領は、チェチェン難民の受け入れを表明した唯一の隣国だが、連邦政府からにらまれ、強制的に辞任させられた。 後任者は、FSB(連邦保安庁、KGBの後継機関)将官ジャジコフだった。イングーシはただ…

『チェチェン やめられない戦争』アンナ・ポリトコフスカヤ その1 ――無法者と劣悪軍隊の違い

◆メモ 1999年から始まった第2次チェチェン紛争により市民は無政府状態の下に晒された。 本書では「対テロ作戦」、「掃討作戦」によって日々迫害される人びとに注目する。戦争を概説するのではなく、末端の市民と末端の悪党たちの様子を細かく伝えようと…

国家・政治・行政の腐敗とどう戦うか

◆はじめに どうすれば腐敗と戦うことができるのかをGoogleで調べた。 わたしの読んできた歴史の本は、ほとんどが外国政府や権威主義体制・独裁体制に対するテロ活動で、腐敗との戦いにおいて直接参考にはならなかったからである。 The Revolt: Story o…

『By Trust Betrayed』Gallagher その3 ――ナチス・ドイツの安楽死作戦

8 T4作戦と弁護士(The Lawyers) ドイツ人には、社会が安定していた、治安がよかったとしてナチス時代をなつかしむ者もいる。 合衆国の法には権利章典(Bill of Rights)があるが、ドイツの法に個人の自由という概念はなかった。 ナチ政権の代表的な非人…