うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『特攻』森本忠夫 その1

本書の冒頭から: 特攻作戦は、西欧的な価値観からすると異様な自殺攻撃である。 わたしたちは、当時の価値観がどのように特攻を正当化したかについて、また軍がどのような意思決定を経て、この異様な作戦を実行したかについて、知らなければならない。 ◆感…

『捏造された聖書』バート・アーマン その2

3 聖書の写本が作られていく歴史を説明する。 素人書記の時代から、ローマ帝国の国教化により、専門的な書記の利用と施設の整備が進められた。4世紀から15世紀、活版印刷が発明されるまでの時代の写本を「ビザンティン写本」と呼ぶ。 比較的正確だが、か…

『捏造された聖書』バート・アーマン その1

◆感想 著者は専門教育を受けた神学者だが、視点はわたしのような非信徒に近く、違和感なく受け入れられるものである。 著者は、聖書を無謬の「神の言葉」と考える主義から、本文研究を経て、人間的な書物とみなす思想にいたった。 神の言葉の改変については…

ハカ・ガーデン・ハカ

◆溥儀 最近、愛新覚羅溥儀の『わが半生』を読み始めて、当時の宮廷の様子におどろいています。また、かれを光緒帝の後継者として指名した西太后の行動についても記載があります。 ――慈禧太后(西太后)は政権を握ったその日から外国人にたいしてははれものに…

『アメリカ精神の源』ハロラン芙美子

カトリックである著者が、アメリカ人の宗教と精神について考える本。 著者は長崎出身で、米国で長く勤務し、現在はハワイ在住という。 合衆国は歴史の若い国ともいわれるが、移民たちの信仰はユダヤ、ローマまでたどることができ、またほぼすべてのアメリカ…

おとずれ、墓

山の中に 列になり、銀で塗り固められた 声がする 音は環となって かれら、名主の 耕す、べトンの畑に まかれたということ。 それはもう ほこらと、ほこらの間を ふくろうたちの航路を越えた やわらかい国。 役人は、べトンを耕す 役人の、その下の人夫はく…

『The Occupation』Patrick Cockburn その2

◆反政府勢力、シーア派 フセインを支持する者はほとんどおらず、政権はすぐに崩壊した。しかし、連合軍による占領が始まるとすぐに、反政府勢力が勃興した。 フセイン政権下で抑圧されていたシーア派もまた占領軍に対し攻撃を開始し、またシーア派同士でも紛…

『The Occupation』Patrick Cockburn その1

副題は"War and resistance in Iraq". 数十年にわたってイラクの取材を続けてきた報道記者コバーンが、イラク戦争後の米軍占領の実態を伝える。 現地からの報告により米国、米軍のお粗末な政策と悲惨なイラクの様子を明らかにする。 イラクの民主化と政権移…

『休戦』プリーモ・レーヴィ

『アウシュヴィッツは終わらない』(未読)の続編。 主人公であるイタリア系ユダヤ人の生き残りは、アウシュヴィッツから解放され、赤軍の占領地域を通って故郷に帰る。 本書に登場するのは、第2次世界大戦を生き延びた、無名の人びとである。 かれらの特徴…

『公安警察の手口』鈴木邦男

趣旨: 公安警察は極めて政治的な存在であり、政府や体制に批判的な人間、危害を及ぼしそうな人間を監視する。公安は市民の自由をおびやかしており、またそれに対する批判の声も聞こえない。 著者は新右翼の活動家で公安の監視対象となっている。 本書では実…

低温の神

わたしは、1羽のふくろうとして、 メンフクロウの姿を手に入れて 黒い眼をうごかした。 朝の霧が 土のすきまからのぼり、 森の中に 日が差すころ、 一団の兵隊が、歩いてくるのを わたしは見た。

『ザ・マーセナリー』フランク・キャンパー

著者は元米軍人で、傭兵学校を開設したが、本書出版時は自動車爆弾による殺人未遂で服役中だったという。 淡々とした文体で、著者の心情やコメントは時折挿入される程度である。 ベトナム派遣後、FBIの工作員、サウジアラビア軍の支援、傭兵学校、中南米…

『ナチスの知識人部隊』クリスティアン・アングラオ その2

3 ナチズムと暴力 戦争がはじまると、東方をゲルマン化する計画が始動した。 国家保安本部、ドイツ民族性強化全国委員部、東部省、人種・移住本部、ドイツ民族対策本部が、それぞれ協力しゲルマン化政策に参加した。 ・東方において、帝国の外に居住する「…

『ナチスの知識人部隊』クリスティアン・アングラオ その1

本書において、著者は、ナチス親衛隊の情報部(SD, Sicherheitsdienst)に所属したアカデミカー(大卒)の親衛隊員たちの心理や背景を理解しようとする。 かれらは情報部においてドグマ形成、政治的監視、国内外の情報収集を行った。また、東部出動に派遣…

『身分差別社会の真実』斎藤洋一 大石慎三郎

本書は中世から江戸にかけての「えた・ひにん」等の被差別身分について説明する。 ◆感想 江戸時代は身分制の下に成り立っていたが、特に被差別民については、発祥は中世までたどることができるという。 被差別民をつくりだす社会を維持してきたのは、政治権…

粘土人形制作 ウンゲルン1号 その3(終)

人形第1号の完成までを報告します。 4 手の接続、塗装 アルミホイルでつくった腕の芯が不均衡のため、左右で手の大きさが違います。 また、肉付けしたためうまく接続できず脱臼したようになっています。 この時点で当該人形に対する執着を失い、塗装も投げ…

城壁は声をひそめる

粘土が積み上げられ、 草の 黄色と茶色の きびしい壁に わたしたちは 行く手をはばまれた。 壁にはりつき、 列の奥から、奥からは 教徒たち、山の、小柄な 戦闘員たち、また 山と森の、スカーフを 巻いた人たち そういった、雇われた外国の人びとが ライフル…

『ガンジー自伝』

ガンジーが、自分の半生を淡々と記述する本。 ◆メモ ガンジーはインド人の権利のために活動した。非殺生(アヒンサー)の教えは、実現は困難だが尊いものであると理解できる。 一方で、菜食主義、禁欲、牛乳の禁止を実践することは、誰でもできるわけではな…

『日本海軍の終戦工作』纐纈厚 その2

4 東条内閣打倒工作 東条首班指名の理由は以下のとおり。 ・木戸幸一が、開戦首相を非皇族にすることで、皇族に責任が及ぶことを回避しようとした。 ・東条が軍の強硬派を抑えることを期待した。 ・天皇が東条を信頼していた。 ――……近衛は開戦後において一…

『日本海軍の終戦工作』纐纈厚 その1

海軍の政治的役割を再検討し、特に海軍への過大評価、善玉評価を見直す。 ◆感想 本書の要点は、日米開戦後から終結までの、責任回避の応酬である。 「海軍善玉論」、「天皇に実権はなかった」、「海軍は初めから戦争に反対していた」といった説は、こうした…

『アフリカ大陸探検史』アンヌ・ユゴン

◆メモ 主に19世紀のアフリカ探検をたどる。 探検家たちの多くは偏見や白人至上主義の持ち主だったが、リヴィングストンやメアリ・キングズリー等、当時の基準からすれば公平な視点を持つ者もいた。 アフリカ探検は文明化の象徴として本国でもてはやされ、…

図書案内:日本と歴史

日本史に関する本のメモをリストにしました。 基本的な文献を読んでおくことの重要性を実感します。 なぜなら歴史は人間の世界観をつくるもので、物の見方・方針に大きく影響するからです。虚偽に基づいた世界観は、人を誤った選択・判断に導きます。 自分の…

『詳解武装SS興亡史』ジョージ・スティン その2

4 西部戦線が終結し、ヒトラーは密かにソ連侵攻を計画していた。 1940年から41年にかけて、再び新兵募集をめぐって陸軍と武装SSが対立した。 SS募集担当のベルガ―、SS参謀総長ユットナーらは、陸軍の眼を欺いて新兵募集を行った。併せて、占領…

『詳解武装SS興亡史』ジョージ・スティン その1

目的 ――本書は、これらSSの組織の1つであるナチ・エリート護衛部隊の軍事部門で、ヒムラーの戦時帝国の最大の構成組織であった武装SS(Waffen SS)の実像の解明を目指すものである。中でも特に、武装SSの発展の過程、すなわち、組織の目的、…

Vaporwave, Synthewave,などの日本像

最近Amazonで買った音楽を紹介します。 元々音楽にかんしては、とくにこだわりもなく聴いていましたが、国外に引っ越してからは現地のヒットチャートやアメリカ音楽を中心に聴いています。 職場はどういうわけか南部出身(ジョージア、アラバマ等)ばかりで…

『特高警察』荻野富士夫 その2

4 総力戦体制が整備されていくにつれて、特高の業務も強化された。国体の擁護と、聖戦への一致団結がかれらの目的となった。 国家主義者については、これまで重視されてこなかった。しかし血盟団事件や五・一五事件をきっかけに、右翼担当が増員された。国…

『特高警察』荻野富士夫 その1

特高警察の概要について説明する本。特高警察の制度、運用については、現在の公安警察にも残されているという。 回想録に書かれている憲兵と同様、かれらも逃げ足が非常に早く、敗戦間近になると幹部たちの職場放棄が散見され、また書類の焼却がさかんに行わ…

最近買った本……エノク書、レニングラード戦、レベッカ・ウェストほか

最近買って、これから読もうと思っている本です。 読む予定の本は溜まっていますが、クラウゼヴィッツが長引いて後がつかえている状態です。 『The Books of Enoch』 紀元前1~2世紀に成立した黙示の1つとのことです。聖書の成立に関する本や、原始キリス…

ぶどう作業

頭上から 緑の釣り下がる ぶどうの領域で 水をやる 晴れて おだやかな気温の日に ぶどうはふくらんでいく つると葉の陰から 蝶が出現した 人の頭からぶどうの 実がなるのは いつだろうかと考える

『治安維持法』中澤俊輔 その2

5 1930年代には、治安維持法の適用が拡大した。 33年……司法官複数名が検挙された。また築地警察署において、小林多喜二が特高課の拷問により死亡した。 「赤化華族事件」では、華族が複数起訴された。 30年代には、共産党に並んで、国家主義運動も…