18 うばわれた敵
たとひわれ死のかげの谷を農王系
あらすじ……
石英の星の下に生まれたわたし、ナーナーが農王系に拉致され、教育戦を指揮し、敵を亡ぼす物語
たとひわれ死のかげの谷をあゆむとも禍害(わざはひ)をおそれじ
コデックスとともにあり
18 うばわれた敵
たとひわれ死のかげの谷を農王系
あらすじ……
石英の星の下に生まれたわたし、ナーナーが農王系に拉致され、教育戦を指揮し、敵を亡ぼす物語
たとひわれ死のかげの谷をあゆむとも禍害(わざはひ)をおそれじ
コデックスとともにあり
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ブイナクスク、モスクワ、ヴォルゴドンスクでの爆弾テロについて。様々な状況証拠や、報道から、著者はFSBが自作自演によって引き起こしたと考える。
・事前に計画や動きが漏れており、また直後に亡命したFSB士官からの暴露があった。
・使用されたヘキソゲンは、軍または秘密機関の、高官による横領以外はあり得ない。また、ヘキソゲンがほぼ軍しか取り扱っていないとわかるとFSBは異なる爆薬が使われたと主張した。
・建物の地下に入り大規模な爆薬と時限発火装置を仕掛けることができるのは、KGBや軍の関係者のみである。
・ダゲスタン侵攻のときのチェチェン指揮官のバサエフとFSB幹部がパリで面会していると伝聞があった。
・チェチェン独立派のアミル・ハッターブは、連続テロの報せを受けたとき驚愕していたという。
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爆弾テロの直後、プーチンは大統領となり、チェチェン侵攻を継続させた。世論はチェチェン人排斥、チェチェン制圧に傾いた。
人びとは、腐敗する国家の問題を、KGBならすぐに解決してくれると期待した。こうしてプーチン政権が誕生した。
リャザン事件は隠ぺいされ、FSBを詰問したテレビ局NTVの主要幹部は国外追放された。
FSBのテロ訓練説は外国人ジャーナリストやテレビ局からは疑惑の目を向けられており、リャザンの住民もテロは秘密機関によるものだと確信した。
検察庁は、一般人を巻き込むFSBの「訓練」を適法と判断したが、連邦憲法、関係法規に照らせば「訓練」が違法であることは明らかである。
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・FSBはフリーの特殊部隊を雇っている。かれらは元軍人や元公安職員、または犯罪者である。
・また、FSBは殺し屋を利用する。殺し屋はマフィアであることが多い。
・実業家やジャーナリスト、外国人の誘拐、チェチェンでの誘拐には、FSBや政府高官が関与している。
・チェチェンはFSBやGRUの訓練場となっている。かれらはチェチェン人を対象に誘拐ビジネスを行い、利益を得るとともに殺人や暴力の技能を向上させている。
アンナ・ポリトコフスカヤの本にあったとおり、現場のロシア軍将校が、チェチェン独立派に対して、部下の兵隊を奴隷として売却し、脱走兵として処理するという事例が発生した。
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FSBを改革し粛正しようとする者もいたが失敗した。エリツィンに直訴の手紙を書いたFSB中佐はプーチンによって逮捕され、本書刊行時点でも牢獄にいた。
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2000年の大統領選……KGB出身のプーチン、「90000人の実業家を牢屋に送り込む」と公言するプリマコフ、化石のような共産党員ジュガーノフの争いについて。
プーチンはロシア国民の願望をかなえたのだろうか。ただし、チェチェン人は虐殺され、国家は秘密機関に掌握されている。
――かれ(プーチン)はソ連百科事典における「僭主Tyrant」の定義そのものである。すなわち、「恣意的な決定と暴力を権力の基盤とする支配者」である。
Blowing up Russia: The Secret Plot to Bring Back KGB Power
ソ連崩壊以降、KGB(ソ連国家保安委員会)がいかに権力を掌握してきたかを論じる。
本書はロシアでは発禁とのことである。
著者のリトビネンコは元FSB職員であり、暗殺指令を拒否しイギリスに亡命した。2006年に同僚に放射性物質ポロニウム210を盛られ暗殺された。
一連の経緯は、プーチンの政敵ベレゾフスキーに近い人物が書いた『リトビネンコ暗殺』に詳しい。
実行犯とされるルゴボイは国会議員に選出され、また複数の国営企業のオーナー権を与えられた。
本書はKGB‐FSBの犯罪、特に、モスクワテロの自作自演等を明らかにする。
***
KGB‐FSB(ロシア連邦保安庁)と比較できる組織は、ナチスドイツのゲシュタポくらいだろう。KGBはソ連崩壊と同時に共産党の統制を抜けた。複雑な組織改編と名称変更により組織の温存が試みられ、やがて国家中枢、経済を支配するようになった。
***
1
FSBは第1次チェチェン紛争を扇動した。チェチェン共和国大統領ドゥダーエフは軍、内務省等への賄賂を使い、共和国内の武器を保有していた。
独立宣言後、大統領警護局(FSO)長コルジャコフ、副首相ソスコヴェッツ、FSB長官バルスコフらがドゥダーエフに賄賂を要求するが、金額が折り合わず、和解の道が閉ざされた。
FSBはチェチェン侵攻を開始した。さらに国民の支持を得るためには、チェチェン人テロリストによる大規模テロが必要だった。
やがてFSBは元職員やマフィアを雇い、モスクワ市内での爆弾テロを起こした。
2
モスクワとモスクワ近郊のFSBは、元KGBのマフィアであるラゾフスキーやその他のマフィアと一体化し犯罪行為、経済活動に従事した。
チェチェン紛争において、チェチェン大統領ドゥダーエフとモスクワは和解の調整を行っていた。FSBはこれを阻止するため、マフィアと元職員を使いドゥダーエフをロケット弾で殺害した。
3
◆FSBとモスクワ・マフィアの癒着
モスクワ犯罪捜査課(MUR)に配属されたツハイが、FSBとラゾフスキー・マフィアとの癒着を暴こうとする。
1996年から97年にかけて、ラゾフスキーとFSBの幹部たちは、10件あまりの契約殺人や薬物、銃取引等を追及されたが、FSBは犯罪者と職員の解放に尽力した。
――かれ(FSB長官コバリョフ)は、秘密工作員とラゾフスキーの殺し屋との間に違いを見出すことができなかった。だからなぜシェコチキンらが怒っているかが理解できなかったのだ。
1996年、チェチェン紛争にロシアが敗北すると、FSBは再び爆弾テロをおこし、多くの死者を出した。かれらは、テロはチェチェン人テロリストの仕業であると世論誘導に努めた。
FSBの妨害により、ラゾフスキーは短期間服役したのみで釈放され、現役職員の犯罪案件は封印された。
97年にツハイ捜査官は不審死した。
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FSB長官パトルシェフについて。パトルシェフとプーチンの登場はほぼ同時期である。エリツィンは、民主的手続きで選ばれたのでない男を首相かつ後継者に任命した。併せて、プーチンの後任としてFSB長官に上番したのがパトルシェフである。
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◆リャザン事件
1999年のリャザン事件は、ロシアの異様な姿を明らかにする。
モスクワやヴォルゴドンスクでの爆弾テロに続いて、リャザンの集合住宅で何者かが爆弾をしかけている姿を通報された。
警察の検証の結果、仕掛けられたリュックは爆薬ヘキソゲンと時限発火装置であることが判明した。
リャザンの市民や警察、リャザン地区FSBは、官民一体の協力によりテロを未然に防止した、と全国ニュースで称えられた。
ところが、警察の捜査と包囲網によって、実行犯の連絡相手がモスクワのFSBだったことがわかった(実行犯は、FSB本部に対して「警察がいたるところに張っていて逃げられない」と電話していた)。
間もなく、リャザン市内で勾留された容疑者が中央の指示により釈放された。また、FSB長官パトルシェフは、「リャザンでの爆弾設置はFSBによる訓練であり、爆弾は砂糖の粉であり、また警察の使用した爆弾探知機は壊れていた」と公式発表を行った。
それからロシア全土で贋爆弾のいたずらが繰り返され、ほとんどは無視された。
いくつかの贋爆弾については、FSBが「現場の警察部隊を練度点検したのだ」、という声明を出した。
しかし、発端であるリャザン事件は、訓練であるにもかかわらず統裁部やシナリオが存在せず、また盗難車を使用しており、後付の説明は支離滅裂である。
リャザンの爆弾テロ未遂の翌日、プーチン首相はチェチェン首都グロズヌイへの空爆を実施している。チェチェン侵攻の口実作りのために、FSBが「チェチェン人によるテロ」を演出した可能性が高いという。
[つづく]
Blowing up Russia: The Secret Plot to Bring Back KGB Power
憲法の役割を改めて説明し、特に9条、二院制、人権条項について部分的な改正の必要性を主張する本。
憲法に対する評価や改正方針は論者によって様々である。著者は憲法調査会で集団的自衛権解釈を否定した学者の一人であり、テレビ等への出演が多い。
近年、話題となっている自民党憲法改正案については問題ありとして否定する。
◆感想
憲法に対する考え方には、国家と政府に対する根本的な認識が影響する。わたしは、これら組織は放っておけば必ず権限を乱用し、ごまかし、嘘をついて私腹を肥やすと思う。
昔からそのような性悪説に立っていたわけではなかったが、その後、実際に末端での仕事を経験して、考えを改めた。
・平気で嘘をつくので、国民は嘘に基づいて情勢判断を行う。
・人の金だから、無駄遣いだろうと気にしない。
・税金の使い方が、一部企業向けの補助金となっている。それらの企業は公共事業……税金に寄生して生き延びている。企業にはたくさんの公務員OBがいて、天の声が働いて入札を歪める。
犠牲になるのは何かというと、意味のないシステムなり道具なりをあてがわれ、そのために金を上納する国民である。
こういう輩たちから、あるべき正しい国民の姿などについて指導されるというのは不幸である。
◆感想その2
本書だけでなく、いくつかの憲法関連本を読んでいて、自分の考えを抽出した。
・改正する行為そのものは、正しい手続きに則っていれば問題ではない。
・曖昧な箇所を解釈で左右できること、法と現実のギャップがなし崩しになっていること(わたしは、自〇隊や統治行為論がそれにあたると思う)は、法そのものに対する意識を低下させるという点で、もっとも有害ではないか。
・平和主義を掲げているが、イラク戦争を今なお全力肯定している数少ない国である(英米は政府・軍ともに失敗例として研究・検討を行っている)。
・いらないもの……国民を教化する文言、人権を国が保障する概念
・武力の現実……武装はしているが、その運用は親会社に隷属する。武装そのものも非効率的で無駄が多く癒着まみれである。
1
憲法は国家をコントロールするためにある。現実は、政治家と官僚は権力を利用し資産を蓄える。国民は憲法によって政府の動きを監視しなければならない。
現在の憲法改正の論点は次のとおり。
・戦争の放棄
・天皇
・新しい人権
環境権やプライバシー等。
・権利と義務の関係
現行憲法のせいで日本人が利己的になったという論調について、著者は否定する。
権利と義務は、別のものである。例えば、お金の貸し借りは、債務者と債権者とで別人である。
――したがって、「権利を得るためには、義務の代償を払え」という主張は本質的に筋違いである。
国民は権利の代価として義務が伴っているわけではない。
・二院制
時間の無駄ではないか。
・首相公選制
・憲法裁判所
日本の裁判所は官僚制であり、法制局や検察庁と一体化しているため、「基本的に、現状肯定的であって守りの姿勢である」。
憲法は最高法規であるが強制力がないため、権力者が開き直ったら対処できない。そうした権力者を倒すには、選挙か武力かしかない。
・非常事態
戦争及び天災時の独裁体制について。
・改正手続き
実際は、ハードルはアメリカよりも緩い。
2
憲法の機能について。
六法が国家の権威により国民自らを縛るものであるのに対し、憲法は主権者・国民が、権力者すなわち政府と公務員を管理するためのものである。
立憲主義とは、憲法に基づいて国民が権力に国を統治させることをいう。
憲法は本来、国民自らが定めるものであって、天や米軍から授けられた「不磨の大典」ではない。
国民が憲法を理解していなければ、役人や政治家はやりたい放題ができてしまう。
3
憲法9条において戦力を放棄しているため、自衛隊は「自衛のための最小限度の力」と解釈されており、また「専守防衛」「海外派兵の禁止」の制約を課している。
もし、同盟国と集団的自衛権を発動させたいなら憲法改正が必要だろう。
著者は、自衛戦力としての自衛隊の位置付けを憲法に明記すべきだと主張する。また、海外派兵についても、国連決議と国会の事前承認を要すると書くべきだと考える。
――何度も繰り返すが、憲法は国家権力の行動を縛る規範である。「できる」「できない」の解釈が明快でなければ、権力者はそこをごまかしてすり抜けてしまう。
4
憲法の中で国民に愛国心の義務を課すのは、憲法の役割を勘違いしている証拠である。
――結果、世襲議員は苦労を知らずに権力の座に就くことができるのだ。子供のころから立派な家に住み、平然と黒塗りの車で送り迎えしてもらい、周囲も当然のようにちやほやする。そんな世襲議員にいい政治ができるはずはない。
――彼らの思考はこうだ。
――「親殺し、子殺しといった悲惨な事件が続く世の中になった。社会全体のタガが緩んでいるのが原因だ。社会の最小単位である家庭を大事にする、最大単位の国に対して愛国心を持つ、といったことを国民に強要すればこれらは解決できるはずだ。それが自分たちの仕事だ!」
憲法に書かれている国民の義務は勤労、納税、教育だけである。また、権利全般を濫用しない義務、公共の福祉を害さない義務も前提として存在する。
5
天皇は既に国家元首であり、憲法に元首と明記することに問題はないと著者は書く。
道州制は具体策が見えてこないため非現実的である。
6
13条は人間の尊厳と平等を尊重する義務を課す。
官僚の天下りや不正、北朝鮮の工作員も、全て憲法に違反しているはずである。
――国防問題をなんでもかんでも9条のせいにしてはいけない。ただ、日本の政治家に、国民の生命と財産を守る強い意志がないだけである。
7
立憲主義の理解に欠けた、つまり憲法が何かについての理解に欠けた自民憲法案について、問題個所を抽出する:
・「和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」
・「国旗及び国歌」
合意が成立しておらず、国民が権力者に課すという本来の意義に反する。
・国防軍の国際協力活動発動条件が不明確である。
・「思想及び良心の自由は、保障する」
これらは保障されるものではなく不可侵のものである。
・「表現の自由」
公益及び公共の秩序を害することを目的とした活動とは、どのような活動か?
・「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される云々」
道徳的表現を憲法に入れるのは不適切。
・「財産権は、保障する」
「侵してはならない」が、国が保障してあげるものになったのはなぜか?
・職務上必要ならば、議院への出席及び答弁をすっぽかせる。
議会制民主主義の空洞化につながるのではないか。
・緊急事態規定は、著者は各国と足並みを揃えるもので問題なしとしているが、わたしにはどうしても抵抗がある。この点について別途調べなければならない。
・改正条件の緩和は、改悪である。やましいから変えたいと思われても仕方がない。
・「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」
「公務員の倫理規定」である憲法の趣旨からはずれている。
***