うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

「アメリカン・ギャングスター」

 制作:2007年

 監督:リドリー・スコット


 1960年代末から70年代にかけてニューヨークで活動した、黒人麻薬ディーラーについての映画。

 マフィアの立身出世と、汚職警察のなかで公正を貫く刑事の話とが交差する。

 フランク・ルーカスはベトナムから飛んでくる軍用機を利用し麻薬を密輸し、販売した。かれは親類を登用し、兵隊の棺に麻薬を隠し運ばせた。

 ラッセル・クロウは正義の刑事という役だが、暑苦しい理想を叫ぶわけではない。賄賂を受け取らない、拾った金を横領しないという最低限のモラルを遵守しているだけである。素朴な人間性が魅力である。

 マフィアのフランク・ルーカスは悪党だが、刑事の信念を理解し、汚職刑事に関する情報をすべて提供する。 

 

『生物兵器』ケン・アリベック

 ソ連による生物兵器開発の概要と、崩壊後、一連の技術が北朝鮮、イラン、過激派等に流出していった疑惑についての本。

 著者は元ソ連生物兵器製造組織最高責任者であり、アメリカに亡命後この本を出版した。

 生物兵器の危険は間近にせまっている。病原体は安価に手に入り、容易に兵器化できるという。

 

 1

 ソ連生物兵器開発機構は、1972年、生物兵器禁止条約締結の年、秘密裏に創設された。

 著者は国家薬事局に勤務する研究員だったが、ロシア陸軍にも所属していた。かれらは民間の研究者として身分を偽り、世界中から細菌・ウイルスの株を受け取ることができた。

 生物兵器開発の起原は1920年代にまでさかのぼることができる。

 カザフ人である著者は、トムスク軍事医科大学を卒業すると、バイオプレパラートでの勤務にスカウトされる。

 陸軍将校による勧誘が、生物兵器開発であることはすぐにわかったが、功績を残したい、名を上げたいという科学者としての自尊心に従い了承した。

 軍は、倫理的な問題について、「アメリカは生物兵器を進めているに違いない、だからわれわれも開発する」という理屈だけを述べた。

 

 2

 KGBに警備された秘密施設で、著者ら研究者は細菌やウイルスの兵器化研究に取り組んだ。

 スヴェルドロフスク事故は、不注意から炭疽菌が市街地に流出し数十人の死者を出した事件である。政府によって隠ぺいされ、汚染肉の密売によるものだとされた。このため、事故の教訓はまったく生かされなかった。真実が明らかになったのはエリツィンが大統領に就いてからである。

 天然痘ウイルスやエボラウイルスマールブルクウイルスの改良が進められ、ワクチンの効かない種、複合的な症状を起こす種がつくられた。

 同僚のウスチノフは不注意事故でフィロ・ウイルスに感染し死亡した。屍体からはより抵抗力と毒性の増したウイルスが摘出され、「U株」として培養された。

 

 3

 秘密に包まれた兵器開発はその他の機関でも並行して進められていた。KGB第一総局の管轄する研究所では、暗殺に使われる生物兵器が研究された。

 遺伝子工学も発達し、DNA組み換えによるキメラウイルスの作成にも成功していた。

 ゴルバチョフの代になり、兵器開発は岐路に立たされる。

 アメリカの査察受け入れに伴い、著者らは必至で施設の隠ぺいを行う。その様子は、どこの役所でも見られる滑稽な光景である。

 問題のある設備は解体し、かぎをかけ、偽装をほどこす。査察団をアルコールとごちそうでもてなし、時間を稼ぎ、質問には嘘で答える。

 兵器開発を中止しようというトップの意向に著者も賛同したが、軍や高級官僚は路線を継続させようとしていた。

 ヤナーエフらによるクーデタ時の様子についても書かれている。皆、エリツィン・議会につくか、守旧派につくかで様子をうかがっていた。

 

 4

 アメリカの生物兵器研究施設を査察した結果、既に攻撃兵器開発が数十年前に停止していたことを発見した。

 

 ――結局われわれは、同胞にだまされたのだ。わたしはいまでは、ほとんどのソ連の上級職員はアメリカが1969年以後、これといった生物兵器研究をしていないことを知っていたのだと思っている。……それでも、われわれに危機感を植え付けるには作り話を吹き込む必要があった。ソ連生物兵器研究は、まず恐怖と不安感から生まれ、ながらくクレムリンの駆け引きにゆだねられてきた。

 

 ロシア崩壊後、差別される外国人になってしまった著者はカザフスタンに帰国する。ところが、ここでも引き続き兵器開発に携わるように脅迫されたため、アメリカに亡命した。

  ***

 著者の分析によれば、ロシアは現在でも生物兵器開発を継続している。

 しかし、国内の困窮により大量の科学者が流出し、また培養された細菌やウイルスが横流しされている。イラク、イラン等に対しては培養設備の売却が行われ、小国やテロ組織であっても容易に兵器化が可能である。

 生物兵器防衛に真剣に取り組む必要があると著者は主張する。

 ロシアから亡命し、秘密の生物兵器開発帝国を暴露したことについては、ロシアが国民に対しおこなっている欺瞞に比べれば軽いものであるという。

 

 ――ロシア国家が禁止兵器を造る人間を英雄視するかぎり、国民を殺し内戦をしかける外国の独裁者に資金等の援助をするかぎり、ロシアの医者や教師に殺人の訓練をほどこすかぎり、そしてこれらのことに抗議の声をあげ、不道徳なことを不道徳と呼び、倒錯した社会を少しでも変革しようとする人間を犯罪者とみなすかぎり――つまりはこれまでのような状態が続くかぎり、ロシアによりよい未来は訪れない。……ロシアで真に求められているのは道徳改革である。道徳が変わらないかぎり、ロシアは変わらない。

 

  ***

 大規模な兵器開発プロジェクトが、全て秘密で行われていたという点が強烈である。

 国家は、安全保障のために、あるいは政治的目的のために、国民に対しても、国外に対しても平気でうそをつくということを認識しなければならない。

 本書では、ソ連における軍、KGB、行政組織の細部だけでなく、一般市民の生活、カザフ人ら少数民族への差別や扱い等についても、その実態を知ることができる。

 

  ***

 用語

 バイオプレパラート:ソ連国家薬事局。保健省の傘下にあるが、実際は軍、KGB共産党の統制を受けた生物兵器開発組織の統制を受ける。

 局長は姑息な官僚として描かれるカリーニンである。

 第15委員会:国防省隷下の生物兵器開発部門。 

生物兵器―なぜ造ってしまったのか? (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

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たとひわれ死のかげの谷を農王系 12 保安局のアカデミー

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2017年のNO JOB COMBATANT(2017.4)

 新しい年度が始まりましたが、無職戦闘員は、引き続き、永遠にやって来ない戦闘にそなえて、訓練を実施しています。

 

 ◆旅行

 2016年はジョージア共和国、今年の1月にはボスニア・ヘルツェゴビナスロヴェニアクロアチアに行ってきました。

 次に行ってみたい国がいくつかあります。

 ・バルカン半島の続き……セルビアコソヴォアルバニア

             ボスニアのヴィシェグラード(『The Bridge on the Drina』を読んでいるので)

 ・インド最北部……ラダック、ザンスカール

          『The Great Game』を読んで、イギリス軍が進出した僻地に興味を持った。

 ・ポーランド……ワルシャワクラクフグダニスク

         アウシュヴィッツとその他の絶滅収容所、古い都市の見学

 ・スリランカ……『ディーパンの闘い』を観て

 

 国内で行こうとおもっているのは、広島の大久野島です。ここには野ウサギのほかに、日本陸軍の毒ガス工場施設を利用した資料館があります。

 

 ◆制作

 本来、無職戦闘員としてこの活動を中心に据えているはずなのですが、みじめな成果しか出せていません。致命的な状況です。

 ・ポエム……短時間ですぐできるが、果たして成果と言えるのか。

 ・フィクション……自分の趣味嗜好上、架空の話、あるいは架空に近い身辺雑記以外を書く気にならない。しかし、書いたものは無価値で自分でも読まない代物である。

 もののかたちはひとつではない。

 (略)

 クービン『対極』の真似ごと

 官僚的なもの、官僚と色川武大

 架空のゲームに関する通信

 偉大なる将軍を待ち望む手紙

 

 ◆戦闘員の所在地

 国外での無職戦闘員生活、とりで建設を目標にしていましたが、現在不透明な状況です。

 北米もしくは太平洋地域での無職生活が維持できるかどうかがカギです。

 

 ◆運動の習慣と外国語勉強

 いまは自分の部屋にあるバーベルでウェイトトレーニングをやっていますが、また格闘技を再開したいです。やらないとどんどん弱くなるからです。

 外国語については、英語での会話を毎週練習しています。ちょうど、英語圏出身の無職戦闘員同志がいるので、レッスンを受けています。

 英語を読むのと話すのとでは脳の使用場所が違うのか、スムーズに話すのはなかなか難しいです。

 スペイン語は完全に停止しており、これではいけないと思い、とりあえず英語対訳付きの本でも読もうかと考えています。

 

 ◆なぜ本のメモを投稿するのか

 中学生の頃、よく古典文学の本を探すためにインターネットで書評を探していました。当時から、海外文学紹介サイトがたくさんあり、読書の参考にしていました。

 わたしの本メモも、何かの参考になればいいなとおもいます。

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Mostar, Bosnia Herzegovina